アルパ奏者で食べていくことを決心した、被災地での言葉
少年B:
大学を卒業されてからはアルパ奏者として活躍をされていますが、就活はされなかったんですか?
ネルソン:
はい、ちょっと長くなるんですが、聞いてもらえますか。
大学のゼミで、岩手県の大槌町というところに行ってアルパを弾かせてもらったことがあるんです。2011年3月、街のほとんどが津波で流されちゃって、唯一残った『マスト』というショッピングセンターで演奏をしたんです。

ネルソン:
演奏が終わったあと、聴いてくれた人のほうをみたら、1人のおばちゃんが涙を流していたんですよ。どうしたんだろうと思って話しかけたら、「アルパの音色で感極まってしまった」「来てくれてありがとう」って……。
そこで、初めて「自分のアルパで人に感動を届けられる」と知ったんです。その当時、就活をするかアルパ奏者として活動するか、すごく迷っていたんですけど、「アルパを続けよう」と腹を括ったきっかけになりました。

少年B:
そのおばちゃんがいたから決心がついたんですね……!
ネルソン:
はい。だから、僕がそのおばちゃんに「ありがとう」って言わなきゃいけないですね。
▲アルパの魅力は美しくキラキラした音色。ネルソンさんはアルパの音や演奏を届けるためYouTubeなどでも発信している
日本なら、失敗しても死なない
少年B:
ネルソンさんのアルパのように、一つのことを極めようとしたり、そもそも極めたい分野を見つけられなかったりすることに不安を感じる人も多いと思うんです。
「自分の強みってなんだろう」「どうやって専門性を身につければいいのか分からない」って。ネルソンさんがそんなふうに悩んでいる人に声をかけるとしたら、何と言いますか?
ネルソン:
「とにかく、失敗を繰り返そう」ですかね……。アルパだって、失敗を繰り返さないと上手くなりません。僕なんか、いまでも失敗だらけです。有名になりたいけど、まだまだ知られていないのが現状です。
昔は勝手に演奏しに行って、それが結果的によかったこともあったけど、もちろん怒られたこともたくさんあります。でも、そういう経験って大事だと思うんです。
少年B:
と、言いますと?

ネルソン:
勢いも大事なんです。日本って、ほんとにまずくてやばいところまでいったら、誰かが止めて、ちゃんとしっかり怒ってくれるんですよ。だから、失敗しても大丈夫だし、失敗を恐れないこと。日本にはそういうよさがあるんです。
少年B:
パラグアイで学んできたからこそ、そういう日本のよさにも気付いたという感じですか。
ネルソン:
そうですね。トライ&エラーじゃないけど、いろいろ試して失敗し続けてたら、そこから光が見えてくる。
失敗に対して「怖いな」って思うこともあるかもしれないけど、失敗しても死ぬことはないじゃないですか。パラグアイなら、そのまま死ぬこともあるかもしれないけど……(笑)。だから、当たって砕けての繰り返しで、とにかく試していけばいいんじゃないかな、と僕は思います。

【記事のまとめ】
・珍しい楽器を演奏していたので人目につきやすかった
・長期間の練習は必要だけど、集中力も大事
・ひとりでイライラしてもどうにもならなければ、周りの流れに合わせる
・本当にやばいことをしてしまったら、「誰かが怒ってくれる」
・失敗しても死なない。たくさん挑戦しよう
(執筆:少年B 編集:泉 撮影:じきるう)
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