目次
不動産投資の法人化に関する気になる疑問
 ・Q.不動産投資で法人化すると融資は有利になるの?
 ・Q.不動産投資で法人化する時は、何に注意したらよいの?
個人と法人で不動産投資する時の違い
 ・所得税と法人税の税率の違い
 ・住民税と法人住民税の税率の違い
 ・法人事業税とは

不動産投資の法人化に関する気になる疑問

Q.不動産投資で法人化すると融資は有利になるの?

個人で金融機関から融資を受ける場合と、法人化して金融機関から融資を受ける場合では、何が異なるでしょうか。個人と法人でローンを組む場合では、主に次の2点が異なってきます。

  • ローン金利
  • 借入期間

具体的な数字は金融機関によって異なりますが、金利は個人で組む場合より高くなります。また、借入期間も個人で組む場合よりも短くなります。

審査について、法人の場合はまずその法人の業績を見られます。これから法人化を狙うという場合は実績がないため、金利が高くなる可能性もあります。

  • 不動産投資事業としての評価

個人で借入をする場合は、個人の信用力(サラリーマンならば信用力が高い)をみられますが、基本的に法人が不動産投資ローンを借りるときにも基本的に法人の信用力をみられます。資金が十分にあるか、不動産投資業務の業績などが審査の対象になります。法人化したときの方が「不動産投資という事業そのもの」を審査されます。

法人化立ち上げの際は、過去の実績がないため、より厳しく審査されることが多く、金利が高くなるようです。

Q.不動産投資で法人化する時は、何に注意したらよいの?

法人化のタイミングに迷ったら、税理士など専門家に相談するのもおすすめです。スムーズな話し合いのためには、以下のポイントをクリアにしておきましょう。

  • 不動産投資はメインなのか副業なのか
  • 将来の物件の規模や数はどのくらいか
  • 現在のキャッシュフロー、将来目標とするキャッシュフロー

具体的に考えたことがないという人は、これを機に将来のビジョンをよく考えてみてください。目的や計画がはっきりすれば、専門家のアドバイスも受けやすく、法人化の適したタイミングもわかりやすくなります。目的や計画を決め、専門家に相談しましょう。

個人と法人で不動産投資する時の違い

改めて、不動産投資をする上で、個人で行うのと法人として行うのは、何が違うのでしょうか。

一般に不動産投資での法人化とは、節税を主たる目的として個人事業として、個人事業として行なっていた不動産投資を「株式会社」もしくは「合同会社」を設立して、設立した会社にその不動産投資事業を関与させることを言います。

関与の方法には法人で不動産を購入する方法の他、既に個人で取得した不動産を法人に移管(譲渡)する方法や不動産そのものは移管せず、個人所有の不動産を管理する形態などが一般的です。

まず個人と法人では、かかる税金の種類が異なります。個人に対しては不動産投資が小規模の場合には所得税・住民税のみがかかるのに対し、法人には規模を問わず法人税・法人住民税・法人事業税がかかります。

 かかる税金(納め先)
個人の場合所得税・復興特別所得税 (国)住民税 (地方)
法人の場合法人税・地方法人税 (国)法人住民税 (地方)法人事業税・地方法人特別税 (地方)

所得税と法人税の税率の違い

所得税に関して、個人の場合は、不動産所得は「総合課税」対象となります。サラリーマンの給与などと不動産所得とを合算して、その金額に応じて5%から45%の税率がかかります。

日本は累進課税制度をとっているので、不動産以外の所得がある人は、それら所得と不動産所得を合わせた所得金額に応じて45%まで所得税がかかります。住民税とあわせると最大55%の税率となり、所得が増えるほど納める税金も増えていくため、不動産投資における法人化は、規模が増すほど重要な問題となってきます。

法人の場合は、所得税と異なり2段階の税率構造となっており、平成30年4月1日以後開始事業年度は年800万円までが19%(しばらくの間は特例により15%)、年800万円超が23.2%となっております。地方法人税は法人税額の4.4%となっています。

法人税と法人事業税は所得があれば課税されるため、不動産所得が0円ならば支払う必要はありません。ところが法人住民税は、たとえ不動産所得が0円であっても課税されます。

法人住民税均等割は、利益が出なくても原則として7万円の納税が必要になります。なお資本金の規模等によって支払額は決まっているので、事前に確認しておきましょう。

住民税と法人住民税の税率の違い

個人の場合、自分の居住する地方自治体に納めるのが住民税で、住民税は所得割と均等割からなり、所得割は東京都の場合には一律10%、均等割は一律5,000円です。

法人住民税も地方税となり、ここでは東京23区内に事務所がある場合で解説します。

東京23区の場合、法人住民税は法人都民税と呼ばれ、「法人税割」と「均等割」からなります。この2つについては、他の自治体も同じです。

法人税割は、資本金の額(又は出資金の額)が1億円以下でかつ法人税額が年1,000万円以下、そして事業開始年度が平成26年から令和1年9月30日までの場合、12.9%となります。

均等割は、所得に関わらず資本金や従業員数によって税額が変わり、資本金等の額が1,000万円以下で、かつ社員数が50人以下の場合、70,000円となります。

法人事業税とは

法人事業税も都道府県に納めます。事業を行う場合、道路などの公共施設を利用します。この経費の一部を負担するための税金です。

東京都の場合、所得に応じて3段階、年400万円以下の所得の場合は3.4%、年400万円を超え年800万円以下の所得の場合は5.1%、年800万円を超える所得の場合は6.7%の税率がかかります。

なお平成31年度税制改正により、令和1年10月1日以後に開始する事業年度の税率改正が予定されています。改正後の税率は、東京都都税条例が改正され発表される予定です。また現在法人事業税の他に地方法人特別税が課されていますが、令和1年10月1日以後に開始する事業年度以降、廃止され、国税である特別法人事業税が課されることになります。