2022年は、特に「原油先物価格」に注目してほしい。異例のスピードで価格が上がっており、原油から精製されるガソリン価格がさらに上がることが懸念される。この記事では、現在原油価格が高騰している理由について解説する。

そもそも「原油先物」とはどういうもの?

まず、「原油先物」について説明しよう。簡単にいえば、原油先物は将来の原油価格を予想して取引を行い、株式などと同様に「売買益」を得ることを狙う金融商品だ。

原油先物価格はさまざまな要素によって変動するが、価格の上昇につながりやすいのが「原油の原産国における減産」「世界の原油在庫の減少」「産油国の政情不安の高まり」「景気の拡大による需要の増加見通し」などだ。

一方、価格の下落につながりやすいのは「原油の産油国における増産」「世界の原油在庫の増加」「産油国の政情不安の後退」「景気の減退による需要の低下見通し」などだ。

現在の原油先物価格の上昇をこれらの要素に絡めて説明するが、その前に原油先物価格のチャートを見てみよう。

「WTI原油先物」の長期チャート・短期チャートを確認

ここで紹介するのは、代表的な原油先物である「WTI原油先物」 のチャートだ。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で売買が行われている。WTIは「West Texas Intermediate」の略称だ。まず、長期チャートから見ていこう。

1.「原油価格」急騰の3つの理由。石油関連株への投資が吉?
(画像=出典:Trading View(WTI原油CFD) )

原油先物価格は2008年に高騰し、その後大幅に下落した。2009年から2014年にかけて上昇相場が続くが、その後は低い水準で推移し、新型コロナウイルスの感染拡大で一気に値下がりした。

しかし、その後原油先物価格は再び上昇し、今や2011年の高値の届きそうな水準まで急騰している。新型コロナウイルスの感染拡大で原油先物価格が下落したのは、景気後退によって需要が縮小するとの見通しが広がったからだ 。

続いて、2021年3月頃からの値動きを示す短期チャートを見てみよう。2022年2月下旬から、原油先物価格が急騰していることがわかる。

2.「原油価格」急騰の3つの理由。石油関連株への投資が吉?
(画像=出典:Trading View(WTI原油CFD) )

現在急騰している理由は?

原油先物価格が変動する理由とチャートを確認したところで、現在原油先物価格が急騰している理由を分解して説明しよう。

世界的に石油の在庫が少ない

1つ目は、世界的に石油の在庫が少ないことだ。コロナ禍以降、世界では原油の減産が続いた。コロナ禍によって人々の移動が抑制され、原油の需要が縮小することが予想されたからだ。

需要拡大が予想されている

原油の減産によって在庫が少なくなっているにも関わらず、米国などでオミクロン株が終息に向かう兆しが見えており、今後は原油の需要が一気に拡大することが予想される。需要が供給を上回ると、原油価格の上昇につながる。

ロシア情勢で供給が懸念されている

このような状況の中でロシアがウクライナに侵攻し、停戦の糸口が見えず泥沼化の様相を呈している。これも、原油先物価格の上昇に拍車をかけている。

ロシアは主要産油国の一つだが、各国からの経済制裁によってロシアの原油が市場に出回らなくなることが懸念される。「ただでさえ需要が供給を上回りそうなのに、さらなる供給不足が起きそうだ」といったムードが、原油先物価格のさらなる上昇を招くかもしれない。

原油先物の上昇時に利益を得る方法とは?

今後、原油先物価格はどのように推移するのだろうか。専門家からさまざまな意見が出ているが、誰も正確に予想することはできない。ロシア・ウクライナ情勢が平和的な解決の方向に動けば、原油価格のさらなる上昇に対する懸念は弱まるだろう。

原油先物価格が高騰しているタイミングで、株式投資で利益を得る方法がある。それは、石油関連株への投資だ。

原油価格が上昇すると、石油会社は備蓄している石油を高い価格で販売できるため、利益を出しやすくなる。原油先物価格が上昇している局面では、石油関連株に注目する投資家が増え、「買い」が先行することで株価が上昇しやすい。

このような波にうまく乗ることができれば、石油関連株で大きな利益を得ることができる。しかし、原油先物価格が何らかの要因で暴落すれば、石油関連株の大幅な下落につながるため、慎重に判断した上で投資してほしい。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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