長引くコロナ禍のテレワークや巣ごもり需要で、一部家電量販店は過去最高益を更新した。コロナ禍が影響を及ぼした直近決算を振り返り、東証に上場する家電量販店を中心に、売上高や経常利益、時価総額などに分けてランキングを見てみよう。

目次

  1. 1,「売上高」ランキングTOP10……売上規模の大きな家電量販店はヤマダHD
  2. 2,「経常利益」ランキングTOP10……経常利益でもヤマダホールディングスは圧倒的
  3. 3,「総資産額」ランキングTOP9……会社規模No.1は収益・利益規模No.1のヤマダHD
  4. 4,「時価総額」ランキングTOP10……市場における企業価値の高い家電量販店は?
  5. 5,「店舗数」ランキングTOP10……小売業の売上げに直結する販売窓口
  6. 6,「従業員数」ランキングTOP11……従業員数でもヤマダデンキはNo.1
  7. 7,「年収」ランキングTOP10……従業員の満足度にも影響、上新電機がNo.1
  8. 8,生活に密着した家電量販店、自分のライフスタイルに合った店を選びたい

1,「売上高」ランキングTOP10……売上規模の大きな家電量販店はヤマダHD

家電量販店のような小売業の事業規模を比較するなら、売上高を見るともっともイメージを掴みやすい。

東京証券取引所に上場している家電量販店と、未上場ながら事業規模の大きなヨドバシカメラを対象に、各社の直近の決算情報から売上高を抽出して、家電量販店の売上高と市場シェアのランキング表を作成した。

「売上高」ランキングTOP10

順位 会社名
<証券コード>
売上高
(2021年3月期 ※4)
市場シェア
1 ヤマダホールディングス
<9831> ※1
1兆7,525億600万円 30.5%
2 ビックカメラ
<3048> ※2
8,479億500万円 14.8%
3 ケーズホールディングス
<8282>
7,925億4,200万円 13.8%
4 エディオン
<2730>
7,681億1,300万円 13.4%
5 ヨドバシカメラ 7,046億円 12.3%
6 上新電機
<8173>
4,491億2,100万円 7.8%
7 ノジマ(ノジマ単体)
<7419> ※3
2,618億8,200万円 4.6%
8 ラオックス
<8202>
829億8,800万円 1.4%
9 アプライド
<3020>
396億7,000万円 0.7%
10 ピーシーデポ
コーポレーション
<7618>
383億1,200万円 0.7%
合計 5兆7,376億3,900万円 100.0%
※1,ヤマダホールディングスには、ヤマダデンキ、ベスト電器、マツヤデンキなどが含まれる
※2,ビックカメラには、ビックカメラ、コジマ、ソフマップなどが含まれる
※3,ノジマの連結子会社は、インターネット事業会社やキャリアショップ運営事業会社なので、売上高ランキングではデジタル家電専門店事業のノジマ単体に絞って、売上高を他社と比較した
※4,決算期が2021年3月期以外の会社の直近決算期(通期)は、ビックカメラが2020年8月期、ヨドバシカメラが2020年3月期、ラオックスが2020年12月期である
家電量販店ランキングTOP10!

第1位,ヤマダホールディングス:“暮らしまるごと”を提案する新ビジネスモデルを推進

2020年10月1日に、ヤマダ電機はヤマダホールディングス<9831>を中心とした持株会社体制に移行した。

連結子会社には、ヤマダデンキ(旧ヤマダ電機)に加えて、ベスト電器やマツヤデンキといった準大手家電量販店も含まれているため、グループとしての売上高(2021年3月期実績)を基準とした市場シェアは3割を超えた。

2010年代からは「日本最大のネットワーク・サービスのIoT企業」という長期ビジョンを掲げている。

近年では、新業態「家電すまいる館」の展開や、「YAMADA web.com店」の始動、住宅分野の強化を目的とする「ヤマダホームズ」の設立、「大塚家具」の子会社化など、“暮らしまるごと”を提案する新たなビジネスモデルを推進している。

第2位,ビックカメラ:志向性の異なるビックカメラとコジマがグループの両輪

ビックカメラグループ<3048>は、専門性と先進性を特徴とするビックカメラと、生活応援をモットーに掲げるコジマの2社が中核企業となっている。

2020年8月期の連結売上高8,479億円のうち、ビックカメラ単体の売上高は54%(4,605億円)、コジマの売上高は34%(2,882億円)を占めている。

2020年8月期のビックカメラ単体の売上高は前期比89.2%まで落ち込んだ。これは、コロナ禍で外国人旅行客によるインバウンド(免税)需要が前期比42.0%となり大幅に減少したことが理由となっている。

これに対して、国内需要が大半のコジマは、2020年8月期も前期の売上高を200億円上回った。

両社ともに、インターネット通販の売上高を堅調に伸ばしているのが特徴。2020年8月期下期はコロナ禍による巣ごもり需要の影響が大きく、ビックカメラ単体の下期のインターネット通販による売上高は前年比151.6%の大幅増となった。

プライベート商品の開発と販売も順調に伸びており、2020年8月期の売上比率(連結)の10.8%を占めるまでに成長した。

第3位,ケーズホールディングス:ちびまるこちゃんでお馴染みの茨城発祥家電量販店

ケーズホールディングス<8282>は、茨城県に本社を置く家電量販店である。関東の147店舗を中心に、一部の県を除いて全国に店舗を展開している。

中核のケーズデンキの店舗運営では、他社には見られないような独自路線を貫いている。

事業コンセプトは、次の二つ。
・がんばらない経営=正しいことを無理せず、確実に実行していく
・「お客様第一」の実現のための従業員第一

家電量販店業界では一般的なポイント制度を導入せず、利用客の利便性を追求して、現金値引にこだわっているのもケーズデンキの特徴だ。メーカーの1年保証に加えて、ケーズデンキ独自の長期無料保証(3年間、5年間、10年間)や、追加の現金値引、購入手続きを簡素化できる「ケーズデンキあんしんパスポート」の提供も、ケーズデンキ特有のサービスだ。

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2,「経常利益」ランキングTOP10……経常利益でもヤマダホールディングスは圧倒的

経常利益は次の式で算出される。

「経常利益」=「売上高」-「売上原価」-「販売費および一般管理費」-「営業外費用」

経常利益は、本業で獲得した利益である「営業利益」から、「営業外利益」と「営業外費用」、つまり定期的に得られるテナント料などを加えて、借入金の返済や利息の支払いなどを行った後の、事業全体から得られる利益を指す。

したがって、売上高ランキングから大きく順位を落としている企業は、売上原価や販管費といった経費だけでなく、借入金の返済などの営業外費用が大きい可能性が高い。逆に、売上高ランキングから大幅に順位を上げている場合は、経費や営業外費用が少ない、あるいは営業外利益が大きいと考えられる。

家電量販店各社の直近決算による経常利益ランキングTOP10と、上述の売上高ランキングTOP10の違いを以下で確認してほしい。

「経常利益」ランキングTOP10

順位 会社名
<証券コード>
経常利益 売上高経常利益率
1 ヤマダホールディングス
<9831>
988億7,500万円 5.64%
2 ヨドバシカメラ 601億円 8.53%
3 ケーズホールディングス
<8282>
517億3,700万円 6.53%
4 ノジマ(ノジマ単体)
<7419> 
284億4,800万円 10.86%
5 エディオン
<2730>
278億1,100万円 3.62%
6 上新電機
<8173>
165億5,500万円 3.69%
7 ビックカメラ
<3048> 
146億9,000万円 1.73%
8 ピーシーデポ
コーポレーション
<7618>
29億3,500万円 7.66%
9 アプライド
<3020>
23億9,700万円 6.04%
10 ラオックス
<8202>
-34億4,400万円 -4.15%
平均売上高経常利益率 5.02%
※各社の決算期と連結子会社については、売上高ランキングTOP10と同じ

経常利益ランキング上位は、売上高の規模が業界でダントツに大きいヤマダホールディングスが同じく第1位となっている。第2位は売上高ランキング第5位のヨドバシカメラが入り、第3位は売上高ランキングと同様にケーズホールディングスがランクインした。

経常利益ランキングの上位会社について、利益率の高さを表す「売上高経常利益率」についても確認しながら、簡単に紹介しよう。

第1位,ヤマダホールディングス:経常利益でも業界他社を圧倒

経常利益ランキング第1位は、売上高ランキングでも圧倒的第1位だったヤマダホールディングスである。経常利益でも第2位に380億円以上もの差をつけており、他社を大きく引き離している。

一方、2021年3月期の売上高経常利益率(=経常利益÷売上高×100)は5.64%であった。2020年3月期の売上高経常利益率が2.86%(=経常利益460億7,400万円÷売上高1兆6,115億3,800万円×100)であったことを考慮すると、大幅に改善していることがわかる。

ヤマダホールディングスの2021年3月期(通期)決算説明資料から、グループとしての2021年3月期の好業績は、巣ごもり需要だけでなく、2021年3月期末までに実施されたグループ再編と経営体質強化によるコスト削減効果や、SPA商品の開発・販売の拡充を背景とした粗利率向上が大きく貢献したことがわかる。

ヤマダホールディングスでは、「暮らしまるごと」のコンセプトのもと、2021年3月期下期より成長戦略を加速させており、既存店舗を多様な業態へ改装または変更しつつ、年間30店舗の出店を推進している。進行中の成長戦略の効果を、2022年3月期の業績でも注目したい。

第2位,ヨドバシカメラ:非上場ながら家電量販店業界の優良企業

経常利益第2位はヨドバシカメラである(ホームページで公表されている会社概要の2020年3月期実績による)。売上高経常利益率を見ても、8.53%で対象10社のうちの第2位だ。利益の大きさと利益率、ともに家電量販店業界トップクラスの優良企業である。

1970年代に写真館として創業し、新宿西口(かつての淀橋地区)に本店を構えて小売販売を開始し、「ヨドバシカメラ」に社名変更した。有名なCMソングの放送開始で、ヨドバシカメラの社名が認知されるようになった経緯がある。

利用客からの要望や意見を原動力にして、分析、改善、開発を進め、より良いサービスにつなげていくことを理念に掲げている。

ヨドバシカメラでは、同業他社に先駆けて、インターネット販売サイトを充実させており、「ヨドバシ・ドット・コム」では現在、家電、カメラ、パソコン、時計、食品、書籍、DIYなど、あらゆる商品を販売している。

第3位,ケーズホールディングス:経常利益、総利益率ともに堅調

売上高ランキング第3位のケーズホールディングスが、経常利益ランキングでも第3位となった。売上高経常利益率も業界平均(5.02%)より高い6.53%、10社中4番目である。

人口減少により、家電需要自体は縮小し、消費者の根強い節約傾向が続く中で、ケーズホールディングスが好調な業績を維持しているのは、以下をはじめとする経営方針に負うところが大きい。

・家庭用電化製品に特化 → ローコスト経営と従業員の高い専門性を維持
・付加価値商品の販売 → 客単価アップ
・「ケーズデンキあんしんパスポート」アプリ会員の獲得促進 → 効果的な販売促進策に
・小物商品や消耗品に焦点を絞ったEC強化 → 訴求力のある価格と利益の確保など

家電量販店業界を取り巻く課題克服に向けて、同業他社との差別化を図り、高い顧客満足度評価を獲得していることが、現在の好業績に結び付いている。

3,「総資産額」ランキングTOP9……会社規模No.1は収益・利益規模No.1のヤマダHD

会社の総資産とは「純資産(自己資本)+負債」のことであり、事業運営に利用することができる資産の総額のことである。総資産額が大きい企業は、それに見合った大きな事業を行うことができるため、総資産額は事業規模と同様にとらえることができる。

それに対して、総資産回転率とは「売上高÷総資産」、つまり総資産を使ってどれほど効率的に売上高を出しているかを知るための財務指標である。

直近決算期末現在の家電量販店各社の総資産ランキングを見ながら、あわせて総資産回転率も確認してほしい。

「総資産額」ランキングTOP9

順位 会社名
<証券コード>
総資産額 総資産回転率
(回転)
1 ヤマダホールディングス
<9831>
1兆2,525億
9,900万円
1.40
2 ビックカメラ
<3048> 
4,720億
7,400万円
1.80
2 ケーズホールディングス
<8282>
4,279億
6,200万円
1.85
4 エディオン
<2730>
3,862億
1,000万円
1.99
5 上新電機
<8173>
2,103億
2,100万円
2.14
6 ノジマ(ノジマ単体)
<7419> 
1,770億
6,400万円
1.48
7 ラオックス
<8202>
635億
2,300万円
1.31
8 ピーシーデポ
コーポレーション
<7618>
372億
400万円
1.03
9 アプライド
<3020>
167億
7,400万円
2.36
平均売上高経常利益率 5.02%
※ヨドバシカメラの総資産はホームページ上で公表されていないため、ランキングから除外した

総資産ランキングTOP3は、第1位ヤマダホールディングス、第2位ビックカメラ、第3位ケーズホールディングスであり、売上高ランキングTOP3と同じ会社が並んだ。

上位3社の中でも、ビックカメラとケーズホールディングスは総資産回転率も対象9社の平均を上回る回転率を示しており、資産を効率的に使って利益を上げていることがわかる。

ここでは、まだ取り上げられていない第4位エディオン、第5位上新電機、第6位ノジマの会社概要を紹介する。

第4位,エディオン:全国各地の家電量販店が結集し全国統一ストアブランドを構築

エディオン<2730>は、2002年のデオデオ(中国、四国、九州地方地盤)とエイデン(中部地方地盤)の経営統合にともなって、2社の純粋持株会社として誕生した。

その後、近畿地方地盤のミドリ電化、関東地方の石丸電気、北海道・北陸地方のサンキューがグループに加わった。それ以降も、グループ再編と子会社同士の合併を繰り返して、現在のような、エディオンを全国統一ブランドに掲げる企業グループに成長した。

経営理念は「効用の提供」と「完全販売」によるお客様第一主義の実現。商品を販売してからも、優れたサービスを永続的に提供することで、購入者が長く満足を得られることをモットーとしている。

全国の商圏規模に合わせた地域密着型の店舗展開を行っており、2020年3月末現在の直営店433店舗に加えて、フランチャイズ店舗数は751にものぼっている。

2021年3月期末現在の総資産回転率は9社平均の1.71回転を上回る1.99回転で高い水準を維持している。これは、基幹システムのクラウド化やテレワークまたはペーパーレス化、ポータブル端末での業務改善・電子棚札の活用、意思決定の高速化などによる効率的な経営基盤の構築が奏功していると考えられる。

第5位,上新電機:大阪発祥のサービス部門に強みをもつ家電量販店

上新電機は1948年大阪で「上新電機商会」として創業し、パーツ販売店から家電専門店に業態を転換した後、他社に先行してサービス部門を開設した。

その後も、業界で初めて無利息クレジットやテレビショッピングを開始、エアコン売上日本一を達成、5年間修理保証制度「5ロングラン」のスタート、阪神タイガース初のオフィシャルスポンサー、日経ビジネス「2013年版アフターサービス満足度ランキング」ネット部門2年連続第1位獲得など、多くの実績を残している。

Joshinグループのショップブランドには、あらゆる年代向けの生活家電を提供する「Joshin」、ネットワーク機器とデジタル商品の専門ブランドである「J&P」、ファミリー志向のおもちゃ、模型、TVゲーム専門店の「キッズランド」などがある。

ECサイト運営にも積極的で、「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2020」総合グランプリを受賞している。

ターゲット層を明確に分けた効率的な店舗運営や時勢に合った販売チャネルの拡充が、2.14%という好水準の総資産回転率を達成している理由の一つに挙げられるだろう。

Joshinグループは家電量販店の枠にとどまらない独自の事業やサービスを多く手掛けているのも特徴だ。

関西の「eスポーツ界の拠点」を目指した「eSPORTSアリーナ三宮」の運営や、プロeスポーツチームとのスポンサー契約締結は典型的な例だ。

コロナ禍に対応したDXの一環として、「バーチャルリフォーム店舗」(ARで選んだ商品の設置イメージを自宅で確認できるサービス、およびVRでチャットボット店員による説明を受けられるサービス)の開設など、先進的なサービスの開発と提供も同社の特徴である。

第6位,ノジマ:総合家電専門店にとどまらない、ESGへの積極的な取り組みに高評価

ノジマグループの中で、デジタル家電専門店を運営するのはノジマ単体のみ(家電のインターネット販売含む)。この点が、傘下に複数の家電量販店ブランドや子会社が存在する同業他社ともっとも大きく異なっている。

ノジマ単体以外は、キャリアショップ運営事業、ニフティを中心とするインターネット事業、アジア圏における海外の家電・家具販売事業、女子サッカーチームの運営、総合通信販売「セシール」の運営など、家電量販店事業と相関する異業種の会社である。

ESGへの積極的な取り組みに対する社会的評価も高い。

人事考課における360度評価システムや国内初の80歳までの延長雇用、航空業界などからの他業種出向受け入れ、電子棚札システムの導入による環境に配慮した店舗運営、脱炭素社会の実現に向けてのノジマメガソーラーパークの運営、女性が活躍する会社など、社会・環境・企業統治に配慮したさまざまな取り組みでも知られている。

4,「時価総額」ランキングTOP10……市場における企業価値の高い家電量販店は?

上場企業の株式市場における市場価値を測ることができる指標が「株価×発行済株式数」で算出される時価総額だ。

日本の家電量販店の場合、親会社である持株会社の大半は株式を上場させている。グループは家電量販店を中核としてグループ全体で事業を展開しているため、上場する持株会社の時価総額は、単体の家電量販店の企業価値と同等であると考えてよいだろう。

時価総額ランキングでは、上場する家電量販店(主に持株会社)の2021年6月16日終値基準の時価総額でランキング表を作成した。

なお、ヨドバシカメラは未上場であるため、時価総額ランキングの対象外になっている。

コジマ<7513>については、上場会社であるがビックカメラの連結子会社なので、売上高、経常利益、総資産ランキングではランキングから除外したが、時価総額ランキングでは上場会社としてランキング対象とした。

「時価総額」ランキングTOP10(2021/6/16終値基準)

順位 会社名
<証券コード>
時価総額 株価
1 ヤマダホールディングス
<9831>
5,006億
7,800万円
518円
2 ケーズホールディングス
<8282>
2,907億円 1,292円
3 ビックカメラ
<3048> 
2,163億
6,800万円
1,150円
4 ノジマ
<7419>
1,538億
6,900万円
3,000円
5 エディオン
<2730>
1,182億
7,800万円
1,056円
6 上新電機
<8173>
783億
4,400万円
2,798円
7 コジマ
<7513>
571億
8,800万円
734円
8 ピーシーデポ
コーポレーション
<7618>
241億
100万円
458円
9 ラオックス
<8202>
172億
6,700万円
185円
10 アプライド
<3020>
29億
200万円
2,902円

時価総額ランキングでも、会社の規模を示す売上高と総資産額ランキング同様に、ヤマダホールディングス、ビックカメラ、ケーズホールディングスの3社が第1位から第3位にランクインしている。

3社は事業規模と市場価値のどちらの視点から見ても、家電量販店大手TOP3であるのは明らかだ。

時価総額ランキングと、売上高ランキングおよび総資産ランキングの違いは、第2位と第3位の会社だ。

時価総額ランキングの第2位はケーズホールディングスであり、第3位はビックカメラだ。それに対して、売上高と総資産ランキングの第2位はビックカメラ、第3位はケーズホールディングスとなっている。

直近の業績による順位ではビックカメラのほうが上位であるが、投資家心理が反映される時価総額ではケーズホールディングスのほうが上位である。これは、今後の成長性や株価上昇への投資家の期待感は、ケーズホールディングスのほうが若干高いことを示している。

時価総額ランキングの第1位から第6位の家電量販店については、すでに会社の概要や特徴を紹介しているので、以下では第7位のコジマ、第8位のピーシーデポコーポレーション、第9位のラオックス、第10位のアプライドについて触れておきたい。

第7位,コジマ:生活応援を理念に掲げるビックカメラの連結子会社

コジマ<7513>はビックカメラグループの一角であり、ビックカメラ(単体)とともに、グループの中核企業として機能している。親会社のビックカメラによる非所有割合は50.25%(2020年8月期末現在)であるため、コジマは連結決算対象の子会社となっている。

現在も本店を栃木県に置きながら、ビックカメラとともに池袋に本部を設置している。

コジマの前身である「小島電機」は、1963年に栃木県宇都宮市に設立された。北関東を中心に、北海道から沖縄まで全国に多店舗を展開している。

2012年にビックカメラと資本業務提携契約を締結し、それ以降は「コジマ×ビックカメラ」の2社連名看板の店舗展開や、商品の共同仕入れ、POSシステムの一本化など、店舗運営の合理化を進めてきた。

コジマの企業理念は「くらし応援コジマ」。顧客の生活を「より快適に」「より便利に」「より楽しく」するための商品やサービスを提供することをスローガンとしている。コジマ単体店舗のコンセプトは「生活応援」であり、「専門性、先進性」を追求しているビックカメラ単体とは明確に住み分けられている。

2020年8月期は、コロナ禍によるインバウント需要大幅減により、ビックカメラ単体は減収減益となった。生活密着型の事業展開をするコジマは、インバウンド需要減による直接的な影響を受けておらず、ビックカメラの減益分を吸収して、グループの業績を下支えする結果となった。

第8位,ピーシーデポコーポレーション:専任デジタル担当によるサブスクサービスに商機

ピーシーデポコーポレーション<7618>は、他の家電量販店とは異なり、炊飯器や液晶テレビ、掃除機、洗濯機、冷蔵庫といった家庭用電化製品や大型白物家電を販売していない。

提供しているのはパソコン本体、周辺機器、組立パソコン、店頭BTOパーソナルコンピューター(受注生産パソコン)、インターネットデバイスおよびネットワーク関連機器、そしてインターネットソリューションサービスである。

1994年の創業時から続くパソコン機器専門店舗「PC DEPOT」とインショップ型の「PC DEPOTパソコンクリニック」に加えて、2013年以降はスマートライフをサポートするためのソリューション提供型店舗、「ピーシーデポスマートライフ店」を展開している。

ピーシーデポコーポレーションではKPIを再定義しており、2022年3月期はサブスクリプションの売上構成比率の拡大(2021年3月期の実績50%→80%)を見込んでいる。

プレミアムメンバーシップサービスと呼ばれるサブスクリプションサービスでは、月額定額制で個人または各家庭に専任デジタル担当(デジタルライフプランナー)が付き、IT・スマートデジタルライフの継続的なサポートサービスを提供している。

デジタルサービスのサブスクリプションは、高い技術や専門知識をもつ担当者が不可欠であるため、量販店などとの競合がなく、参入障壁も高い。ノウハウのあるピーシーデポに優位性があるため、新規会員増による企業価値増大に期待がもてる。

第9位,ラオックス:売上構成比率が高いインバウントがコロナ禍で苦戦

ラオックス<8202>の前身は1930年創業の谷口商店である。その後、家電製品に特化した営業部門として、1976年にラオックスが設立された。

2009年には中国資本の蘇寧電器股份有限公司(現 蘇寧易購)と業務資本提携契約を締結し、その後、総合免税店を店舗展開し、国内最大規模の総合免税店ネットワークを構築した。

2011年に蘇寧易購の連結子会社になった後は(2021年6月16日現在では、親子関係は解消され、関係会社となっている)中国進出を加速し、現在では中国越境ECサイトの3大プラットフォームに出店している。

2020年12月期は、コロナ禍により訪日外国人の大幅な減少に加えて、緊急事態宣言発令による一時休業により、総合免税店の運営を中心とするインバウンド事業は打撃を受け、ラオックスは赤字決算となった。

新型コロナウイルス感染拡大によるビジネス環境の変化に対応するため、大規模な構造改革に着手しており、国内で世界各地の多彩な商品を購入できる新たな業態の店舗の展開を開始する一方で、中国、タイ、ベトナム向けのライブコマース配信も開始した。

第10位,アプライド:最先端コンピューターソリューションやオンラインサポートに強み

アプライド<3020>は福岡市に本社のある会社であり、パソコンや周辺機器の販売、AIソリューション開発、システム開発などを手掛けている。

アプライドグループは大学向けの各種サービスに力を入れているのが特徴である。大学広報誌やプロモーション動画の作成といった広報PR、ブランディング戦略の支援、オンライン学術会議システムの提供、大学あるいは研究室のアウトリーチ活動を動画作成でサポートするサービスなど、さまざまな大学関連サービスを提供している。

1977年の創業以来、社会や経済を取り巻く環境の変化に柔軟に適応しながら持続的に事業拡大をしており、2020年のコロナ禍においても、事業改革を推進し、増収増益を達成した。

2020年3月期以降も環境変化に即したさまざまなオンラインまたはリモートサービスを開発し、提供を開始している。

新サービスには、月額定額制でパソコン、スマホ、タブレットの困りごとを相談できる「APオンラインサポート」、スマホ専用の困りごとオンライン解決サービス「APオンラインスマホレクチャーサービス」、法人向けの「PCサポートオンライン代行サービス」などがある。

5,「店舗数」ランキングTOP10……小売業の売上げに直結する販売窓口

従来型の小売業では、一般的には、店舗数が多ければ多いほど、売上高が高くなる傾向がある。厳密には、従業員の接客マナー、立地、品揃え、効率的な店舗運営など、売上高に影響を及ぼす要因はさまざまであるが、店舗数も売上高を左右する指標の一つとして参考にすることができる。

2021年3月19日付の会社四季報の情報から、上場する家電量販店各社の店舗数を引用して、ランキング表を作成した結果は以下のとおりである。なお、ヨドバシカメラは非上場のため、ホームページ掲載の店舗数を引用した。

「店舗数」ランキングTOP10

順位 会社名
<証券コード>
店舗数
(主要子会社店舗数)
1 ヤマダホールディングス
<9831> 
678店舗
2 ケーズホールディングス
<8282>
520店舗
3 エディオン
<2730>
437店舗
4 上新電機
<8173>
220店舗
5 ノジマ単体
<7419>
189店舗
6 ビックカメラ
<3048> ※
187店舗
7 ピーシーデポ
コーポレーション
<7618>
114店舗
8 アプライド
<3020>
26店舗
9 ヨドバシカメラ 23店舗
10 ラオックス
<8202>
16店舗
※ビックカメラグループの148店舗には、ビックカメラ単体の45店舗とコジマの142店舗が含まれる

店舗数ランキングで第1位のヤマダホールディングス、第2位のケーズホールディングス、第3位のエディオン、第4位の上新電機、第5位のノジマ単体は、売上高ランキングではヤマダホールディングスが第1位、ケーズホールディングスが第3位、エディオンが第4位、上新電機が第6位である。

注目したいのは、売上高第2位のビックカメラは店舗数ランキングでは第6位である点だ。

ビックカメラグループの2本柱であるビックカメラ単体の店舗数は45、コジマは142店舗であるが、ビックカメラ単体の売上高はコジマの売上高のおよそ2倍にものぼる。

ビックカメラ単体の店舗数に対して売上高が高い理由は、店舗出店戦略にある。ビックカメラ単体はターミナル駅や大都市駅前に集中的に大型店舗を出店しており、店舗数は少なくとも集客力が高く、インバウンド需要も吸収しやすいのが特徴である。

このような事情から、ビックカメラグループは店舗数が比較的少ないものの、売上高が高いというビックカメラ特有の現象が見られる。

未上場のヨドバシカメラは23店舗。店舗数ランキング第9位でありながら、売上高ランキングでは第5位に付けていることにも触れておきたい。

ヨドバシカメラもビックカメラ単体と同じく、集客力が高く利益率も高い大都市駅前に大型店舗を集中的に出店している。家電に限らず、幅広い品揃えと配送料無料で人気の家電ECサイト「ヨドバシ・ドット・コム」も好調であり、グループの売上げに大きく貢献している。

このような理由から、ヨドバシカメラは店舗数にかかわらず、高い売上高を実現できるのだ。

6,「従業員数」ランキングTOP11……従業員数でもヤマダデンキはNo.1

家電量販店の店舗に配属される従業員は、来店客に対する接客サービスの要となる。接客の質は、高い顧客満足を獲得するための重要なポイントではあるが、接客にあたる従業員の数も大きく影響すると考えられる。

2021年3月19日付の会社四季報から家電量販店各社の単体と連結(参考)の従業員数を引用して、以下のような単体ベースの従業員数ランキングを作成した。ヨドバシカメラの従業員数は、ホームページに掲載されていた2019年4月1日現在の従業員数である。

「従業員数」ランキングTOP11

順位 会社名
<証券コード>
従業員(単) 従業員(連)
1 ヤマダホールディングス
<9831> 
9,264人 24,070人
2 エディオン
<2730>
8,001人 9,018人
3 ヨドバシカメラ 5,000人
4 ビックカメラ
<3048> 
4,544人 9,056人※
5 上新電機
<8173>
3,439人 3,940人
6 コジマ
<7513>
2,710人
7 ノジマ
<7419>
2,620人 6,620人
8 ケーズホールディングス
<8282>
2,217人 6,735人
9 ピーシーデポ
コーポレーション
<7618>
692人 852人
10 アプライド
<3020>
402人 426人
11 ラオックス
<8202>
355人 1,178人
※ビックカメラの連結従業員数には、子会社であるコジマの従業員数2,710人が含まれる

従業員数においても、ヤマダホールディングス単体(ヤマダデンキ)が第1位となった。事業規模や時価総額、店舗数だけでなく、ヤマダデンキはじめグループ全体が抱える従業員数も業界No.1の巨大企業であることがわかる結果である。

第2位のエディオン単体は、事業規模や店舗数から見ると、従業員数の多さが際立つ。エディオンは、小売業の基本である「おもてなしの心」を大切にしている。心のこもったあいさつや、豊富な商品知識に裏付けられた丁寧な接客対応は、多くの従業員によって体現されていると考えられる。

店舗数で第9位だったヨドバシカメラは、従業員数5,000人で第3位にランクインしている。

店舗数は少ないながらも、接客対応するための従業員が駅前の大型店舗に多数配置されているだけでなく、仕入れ・販売・配送すべてを自社で行っているヨドバシ・ドット・コムの従業員数も含まれていることから、ヨドバシカメラとして5,000人もの従業員を抱えていると推測される。

家電量販店では、従業員が来店客に対して、商品の機能性や使い方などを説明する機会が多いため、従業員数も多くなる傾向がある。従業員数の多い家電量販店なら、店頭できめ細かな接客サービスを受けられる可能性も高いだろう。

7,「年収」ランキングTOP10……従業員の満足度にも影響、上新電機がNo.1

年収の高さは従業員のモチベーションにもつながると考えられるため、従業員に高い年収を支払っている家電量販店では、従業員から質の高い接客を受けられる可能性も高い。

以下の年収ランキングを見ながら、店頭での従業員の接客対応の様子をイメージしてみるのもよいだろう。

各社の平均年収は、2021年3月19日付の会社四季報の数値を引用している。

「年収」ランキングTOP10

順位 会社名
<証券コード
平均年収
1 上新電機
<8173>
574万円
2 エディオン
<2730>
521万円
3 ケーズホールディングス
<8282>
520万円
4 アプライド
<3020>
492万円
5 コジマ
<7513>
466万円
6 ヤマダホールディングス
<9831>
445万円
7 ノジマ
<7419>
444万円
8 ビッグカメラ
<3048>
435万円
9 ピーシーデポ
コーポレーション
<7618>
434万円
10 ラオックス
<8202>
358万円

年収ランキング第1位は大阪基盤の上新電機、第2位も大阪市に本社を置くエディオン、第4位は福岡市が拠点のアプライドであり、上位5社中3社が首都圏以外に本社を置く会社という興味深い結果になった。

3社からは、地域社会に根差した会社運営と家電量販店業界としては高い年収、さらに地域一番店としての誇りをもったモチベーションの高い従業員からの、満足度の高い接客対応を期待できるのではないだろうか。

8,生活に密着した家電量販店、自分のライフスタイルに合った店を選びたい

国内の家電量販店会社は多くはないが、各社とも、多店舗展開をしており、全国各地で店舗を利用することができる。

各社の店舗展開戦略によって、大都市駅前店、郊外店、生活密着型店舗、ホビー店舗、パソコン専門店など、店舗のタイプは多種多様である。

近年は、ECサイトやバーチャルリフォーム店舗、会員制度、専用アプリの導入など、サービスも多様化している。

自分の志向やライフスタイルに合った家電量販店やサービスを選んで、便利で快適な生活につなげていけるとよいだろう。

近藤真理
執筆・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。

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