目次
登記変更にかかる費用
・相続による不動産登記の名義変更の費用
・生前贈与による不動産登記の名義変更の費用
・財産分与による不動産登記の名義変更の費用
・不動産取引による不動産登記の名義変更の費用
登記変更にかかる期間
登記変更にかかる費用
登記変更を申請するときにかかる費用として主なものは登録免許税です。相続、生前贈与、財産分与、不動産取引それぞれの場合の税率は既にご説明しましたが、まとめてみましょう。
固定資産評価額 | 相続(0.4%) | 生前贈与(2%) | 財産分与(2%) | 不動産取引(3.5%) |
---|---|---|---|---|
1,000万円 | 4万円 | 20万円 | 20万円 | 35万円 |
2,000万円 | 8万円 | 40万円 | 40万円 | 70万円 |
3,000万円 | 12万円 | 60万円 | 60万円 | 105万円 |
5,000万円 | 20万円 | 100万円 | 100万円 | 175万円 |
7,000万円 | 28万円 | 140万円 | 140万円 | 245万円 |
1億円 | 40万円 | 200万円 | 200万円 | 350万円 |
2億円 | 80万円 | 400万円 | 400万円 | 700万円 |
※不動産取引については、土地1.5%、建物2%の合計3.5%で計算しています。2021年4月1日以降は土地の税率が2%になります。
登録免許税以外にも必要な費用があります。以下、個別に解説します。
相続による不動産登記の名義変更の費用
相続による不動産登記の名義変更を申請する場合は必要書類が数多くなりがちなので、それらの書類の取得費用が高くなる傾向にあります。具体的には以下のとおりです。
種類 | 1通あたりの取得費用 |
---|---|
不動産登記事項証明書 | 600円 |
固定資産評価証明書 | 300円 |
戸籍謄本 | 450円 |
住民票 | 300円 |
印鑑登録証明書 | 300円 |
不動産登記事項証明書は登記申請に必要なわけではありませんが、前述したとおり、最初に権利関係を確認するために必要です。オンライン取得すれば1通あたり500円(最寄りの登記所などで受け取ると480円)になります。
その他の書類の取得費用は自治体によって異なります。上記の金額はおおよその相場になります。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本は、高齢で亡くなった方の場合は5通程度必要になるのが通常です。また、法定相続人の人数分の戸籍謄本、住民票、印鑑登録証明書が必要になります。
土地一筆と建物一筆を相続で取得し、法定相続人が5人いるケースであれば、以上の書類の取得費用が合計で9,300円程度かかります。
これらの書類は遠方であれば郵送で取り寄せることになります。普通郵便で構いませんが、往復の郵送費が別途かかります。
その他、相続税がかかる場合は納税する必要があります。相続税は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除の範囲内であれば課税されません。課税される場合でもさまざまな特例の適用を受けることで大幅に減税されることがあります。
生前贈与による不動産登記の名義変更の費用
生前贈与の場合は、一対一の贈与契約であることが多いので、必要書類はそれほど多くありません。
ケースにもよりますが、取得費用がかかる書類としては、贈与する方の住民票、贈与を受ける方の印鑑登録証明書、固定資産評価証明書くらいで多くの場合は足ります。
なお、贈与契約書には200円分の収入印紙を貼る必要があります。
これに土地一筆、建物一筆の登記事項証明書の取得費を加えると、合計で2,300円程度になります。
その他、贈与税がかかる場合は納税する必要があります。贈与税の基礎控除額は110万円なので、不動産を生前贈与した場合の多くは贈与税がかかります。
財産分与による不動産登記の名義変更の費用
財産分与の場合も、通常はそれほど多くの書類は必要ありません。
取得費用がかかる書類としては、固定資産評価証明書、離婚後の戸籍謄本、財産分与を受ける方の住民票くらいで多くの場合は足ります。
離婚協議書は非課税なので、収入印紙を貼る必要はありません。裁判をした場合の調停調書、審判書、判決書は1通なら取得費用はかかりませんが、追加で謄本の発行を申請する場合は1ページにつき150円の手数料がかかります。
固定資産評価証明書、戸籍謄本、住民票に土地一筆と建物一筆の登記事項証明書の取得費用の合計は2,250円程度になります。
税金について、財産分与を受ける側は登録免許税と取得後の固定資産税以外は非課税となります。ただし、離婚と財産分与の時期がずれている場合は贈与税や不動産取得税がかかることがあります。財産分与する側には譲渡所得税がかかりますが、対象不動産の時価が取得時よりも財産分与時の方が低い場合は課税されません。
不動産取引による不動産登記の名義変更の費用
不動産取引の場合は、固定資産評価証明書、売主・買主それぞれの印鑑登録証明書、買主の住民票などを取得する必要があります。
売買契約書に貼る収入印紙の金額は売買代金によって異なりますが、売買代金1,000万円超5,000万円以下の場合の印紙代は1万円です。
以上の他に土地一筆と建物一筆の登記事項証明書の取得費を合わせると、1万2,400円程度がかかります。
その他、売主には譲渡所得税、買主には不動産取得税がかかります。居住用不動産を売買した場合は、いずれも軽減措置の適用を受けることで課税されないケースも多くあります。
登記変更にかかる期間
登記変更にかかる期間の目安は、おおむね以下のとおりです。
作業内容 | 期間の目安 |
---|---|
1. 対象不動産の権利関係を確認する | 1~2週間 |
2. 戸籍謄本等の証明書類を収集する | 1週間~2ヶ月 |
3. 登記原因証明情報を作成する | 1~2週間 |
4. 登記申請書を作成する | 数日 |
5. 登記申請及び審査期間 | 1~2週間 |
6. 登記識別情報の受領と登記事項証明書の取得 | 1週間 |
合計1~4ヶ月 |
以上は、登記の申請方法や関連する手続きを何も知らない一般の方が自分で調べながら行った場合にかかる期間の目安です。スムーズにできればもっと早く完了する可能性も十分にあります。
2の戸籍謄本等の証明書類の収集にかかる期間は、相続の場合は被相続人が高齢で亡くなったり、法定相続人の人数が多かったり、戸籍が遠方の市区町村にある方が多い場合は1~2ヶ月を要することが多いです。相続以外の場合はそれほど多くの証明書類は必要ないので、1週間もかからないことも多いです。
3の登記原因証明情報というのは、どのような原因によって不動産登記の名義を変更するかを証明する書類のことです。相続なら遺産分割協議書、生前贈与なら贈与契約書、財産分与なら離婚協議書、不動産取引なら売買契約書が登記原因証明情報にあたります。
これらの書類の作成は、慣れた方であれば数時間でできます。慣れていない方は調べながら作成するのが通常なので、1~2週間を目安としておきました。
6については、不動産登記の名義変更を申請しても、即日すぐに登記手続きが完了するわけではありません。その後に法務局で審査が行われます。この審査には通常1~2週間かかります。他のプロセスをどんなにスムーズに行っても、この期間だけは短縮することができません。
以上のプロセスを経て、相続の場合は2~4ヶ月程度、その他の場合は1~2ヶ月程度で登記変更の手続きが完了する場合が多いでしょう。