結婚して姓が変わったり、引っ越しをして住所が変わったら、所有している不動産について登記の変更を検討しましょう。変更は義務ではないので、所有者の住所・氏名が変わったからといって必ずしなければいけないものではありません。しかし将来、売却しようとするタイミングや、抵当権抹消登記をする場合には、変更が必要となります。後々、過去の住民票を集めるのに苦労することのないよう、ここでは変更の手続きについて解説します。 その他、相続や生前贈与、財産分与、不動産取引をしたときなど不動産登記の名義変更が必要になるケースはあります。

目次
不動産登記の名義変更は自分でも可能
 ・結婚して姓が変わった場合や引っ越しして住所が変わった場合
不動産登記の名義変更の流れ
 ・相続による不動産登記の名義変更の流れ
 ・生前贈与による不動産登記の名義変更の流れ
 ・財産分与による不動産登記の名義変更の流れ
 ・不動産取引による不動産登記の名義変更の流れ

不動産登記の名義変更は自分でも可能

不動産登記の名義変更は専門家に依頼すれば楽で安心ですし、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的かもしれません。ですが費用がかかってしまいます。ここでは、自分で不動産登記の名義変更を行うにはどうすればいいのか、その流れや費用、必要な書類まで解説します。

土地や建物の登記名義を変更するときは、法務局に必要な書類を提出し、名義変更に必要な税金の登録免許税を納めれば自分でも不動産登記の名義変更を行うことができます。

結婚して姓が変わった場合や引っ越しして住所が変わった場合

結婚して姓が変わった場合や引っ越しして住所が変わった場合であれば、登記手続きは難しくありません。登記申請書の書き方は法務局の窓口でも教えてもらえるので、不動産の登記事項証明書や住民票、戸籍謄本を持って法務局へ行けば自分で手続きをすることができます。

登録免許税は1つの物件につき1,000円です。家屋と敷地が一筆ずつであれば、合計2,000円で名義変更手続きが完了します。

不動産登記の名義変更の流れ

転勤による引っ越しや結婚で姓が変わった場合は上記のように簡単ですが、相続や生前贈与、財産分与、不動産取引によって不動産の名義が変わった場合の手続きは少し複雑になります。そのため、事前にしっかりと準備をしておく必要があります。

不動産登記の名義変更の大まかな流れは、必要書類をそろえ、登記申請書を作成し、それらを法務局へ提出し、登録免許税を納めることです。

相続による不動産登記の名義変更の流れ

相続によって不動産を取得した場合は、登記名義を変更しておかないと後の手続きが大変になってしまいます。

その不動産を売却するときには法定相続人全員の名義で行わなければならなかったり、相続人も亡くなった場合はさらにその法定相続人にも持ち分が移転するため、名義変更の手続き自体が難しくなってしまいます。

そのため、相続によって不動産を取得したら、早めに登記名義の変更をしておきましょう。相続による不動産登記の名義変更の流れは以下のとおりです。

1. 対象不動産の権利関係を確認する

相続によって取得した不動産を被相続人が間違いなく所有していたのかを確認します。そのためには、その不動産の登記事項証明書を取得します。共有者がいないか、抵当権などの担保権が付いていないかなども確認します。

2. 相続人を確定する

被相続人の法定相続人として誰がいるのかを調べます。そのためには、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本を取得します。これによって被相続人の両親、兄弟姉妹、配偶者、子など法定相続人が判明します。

相続人が確定したら、各相続人が現在生存していることを証明するために相続人全員の最新の戸籍謄本も取得しておきます。

また、被相続人が死亡したことを証明するために被相続人の住民票の除票または戸籍の附票も取得しておきます。

3. 誰がその不動産を取得するのかを決める

法定相続人の全員が対象不動産を共同取得しても構いませんが、通常は、そのなかの誰が対象不動産を取得するのかを決めます。遺言書で指定されていればその内容に従い、遺言書がなければ遺産分割協議を行って決めます。

4. 必要書類を集める

以上で取得した書類の他にも対象不動産の固定資産評価証明書など、登記申請のために必要な書類がいくつかあります。登記申請書も法務局のホームページからダウンロードするなどして入手しておくとスムーズに登記申請を行うことができます。

5. 法務局へ必要書類を提出する

必要書類がそろったら、法務局へ提出することによって不動産登記の名義変更を申請します。提出先の法務局は、対象不動産の所在を管轄する法務局です。法務局のホームページで管轄の法務局を調べることができます。

6. 登録免許税を納める

相続による不動産の登記名義を変更する場合の登録免許税は、原則として対象不動産の評価額の0.4%です。

生前贈与による不動産登記の名義変更の流れ

生前贈与とは、贈与者が生存中に財産を別の誰かに無償で渡すことをいいます。渡す相手は法定相続人でも、それ以外の第三者でも構いません。主に相続税の節税や、渡したい相手に確実に渡すために行われます。

不動産を生前贈与するときの登記の名義変更の流れは以下のとおりです。

1. 対象不動産の権利関係を確認する

生前贈与の場合も、まずは対象不動産の登記事項証明書を取得して、所有名義や、抵当権などの担保権が付いていないかなどを確認します。

2. 不動産贈与契約書を作成する

生前贈与も贈与契約の一種です。契約は口約束でも成立しますが、後々トラブルを招かないように契約書を作成することが重要です。登記申請をするときにも必要になるので、不動産贈与契約書は必ず作成しておくべきです。

3. 必要書類を集める

不動産贈与契約書の他にも、その不動産の登記済権利証、固定資産評価証明書など必要な書類がいくつかあります。登記申請書もあらかじめ入手しておくとスムーズに登記申請を行うことができます。

4. 法務局へ必要書類を提出する

必要書類がそろったら、法務局へ提出することによって不動産登記の名義変更を申請します。提出先の法務局は相続の場合と同様、対象不動産の所在を管轄する法務局です。

5. 登録免許税を納める

生前贈与による不動産の登記名義を変更する場合の登録免許税は、対象不動産の評価額の2%です。

財産分与による不動産登記の名義変更の流れ

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産をお互いに分け合うことです。今まで夫婦で住んでいた家に妻が離婚後も住み続ける場合に、その家の登記名義を変更することがよく行われます。

財産分与によって不動産の登記名義を変更する流れは以下のとおりです。

1. 対象不動産の権利関係を確認する

相続や生前贈与の場合と同じように、初めに対象不動産の登記事項証明書を取得して、所有名義を確認しておくことが必要です。

2. どの不動産を財産分与するのかを決める

離婚する際はどちらに離婚を招いた責任があるかにかかわらず、必ず財産分与の請求権が発生しますが、自動的に不動産の名義が変更されるわけではありません。どの不動産を財産分与するのかを決める必要があります。

協議離婚の場合は夫婦の話し合いで決めます。調停・審判・訴訟といった裁判手続きで決めることもできます。

3. 必要書類を集める

どの不動産を財産分与をするかが決まったら、書面を作成します。強制力を持たせるために公正証書を作成するのが望ましいですが、私的に作成した離婚協議書でも登記申請はできます。裁判をした場合は、調停調書や審判書、判決書の謄本で登記申請できます。

他にもいくつか必要書類があるので、集めておきます。登記申請書もあらかじめ入手しておいた方がよいことは相続や生前分与の場合と同じです。

4. 法務局へ必要書類を提出する

財産分与の場合も、対象不動産の所在を管轄する法務局へ必要書類を提出することによって不動産登記の名義変更を申請します。

5. 登録免許税を納める

財産分与による不動産の登記名義を変更する場合の登録免許税は、対象不動産の評価額の2%です。

不動産取引による不動産登記の名義変更の流れ

売買などの不動産取引をした場合の登記名義の変更も自分で行うことができます。流れは以下のとおりです。

1. 対象不動産の権利関係を確認する

他の場合と同様に、まずは対象不動産の登記事項証明書を取得して、所有名義や担保権の有無を確認します。

2. 不動産取引を行う

取引する物件を正確に特定した上で売買などの取引を行います。売買代金の金額や支払い方法なども明確に決めておく必要があります。売買契約がまとまったら、売買契約書を作成しておきます。

3. 必要書類を集める

売買契約書の他にも登記済権利証や固定資産評価証明書など他にもいくつか必要書類があるので、集めておきます。登記申請書もあらかじめ入手しておいた方がよいことは他の場合と同じです。

4. 法務局へ必要書類を提出する

不動産取引の場合も他の場合と同様、対象不動産の所在を管轄する法務局へ必要書類を提出することによって登記申請を行います。

5. 登録免許税を納める

不動産取引によって不動産の登記名義を変更する場合の登録免許税は、土地が評価額の1.5%(2021年4月1日以降は2%)、建物が評価額の2%です。