目次
不動産投資が節税になる人とならない人の違い
 ・節税にならない人
 ・節税になる人
 ・節税を考えるより稼いで税金を払う考え方がよい
節税額のシミュレーション
 ・所得税の節税シミュレーション
 ・住民税の節税シミュレーション

不動産投資が節税になる人とならない人の違い

節税にならない人

最近は、サラリーマンで不動産投資をしている人が増えてきていますが、人気のワンルームマンションを1区分購入するだけでは節税効果は限定的です。

初年度は不動産取得税や諸費用で節税できますが、2年目以降は投資不動産の取得にかかった減価償却費と物件購入にローンを組んだ場合の借入金の利息が大きな経費になる程度、と一般的には考えられます。

また、ワンルームマンション1区分保有であると、計上できる旅費交通費、接待交際費等の各種経費もかなり限定的です。

節税になる人

不動産投資で節税になる人の特徴は、収入が多く高額納税をしている方たちです。建物価格の高い物件を購入することで減価償却費が経費計上できますし、また節税効果を維持するために、新たに別の不動産物件を購入する行動も含まれます。

節税を考えるより稼いで税金を払う考え方がよい

「不動産投資が節税になる仕組み」の部分でも紹介したように、基本的には不動産所得で赤字が出ている場合のみ、給与所得から源泉徴収されている税金が赤字分控除されます。それを「節税」ということがほとんどです。

つまり、節税という以前に赤字の状態なわけです。税金上では多少納税額が減っていたとしても、キャッシュフローベースでは逆にキャッシュアウトの方が多いともいえます。

そのため、不動産投資をすることで節税をするという考え方よりは、不動産投資をすることで収入の柱を作っていくという考え方の方が健全です。よほど儲かったら法人化するという考え方はあります。そうでない場合は、不動産投資も含めてお金を稼いで税金を納めていった方が結果として手元に大きくお金が残ります。

節税額のシミュレーション

所得税の節税シミュレーション

節税額がいくらぐらいなのかをシミュレーションするためには、支払うべき所得税を算出し、どれほど損益通算できるのかを計算する必要があります。

サラリーマンの場合、基礎控除・給与所得控除・社会保険料を計算し所得税を算出します。

例えば、

  • 給与収入:年収600万円

のサラリーマンが不動産投資をしたと想定します。2年目の不動産所得が30万円の赤字だったとします。基礎控除は令和2年より変更され、以下のようになっています。

合計所得額控除額
2,400万円以下48万円
2,400万円以上2,450万円以下32万円
2,450万円以上2,500万円以下16万円
2,500万円以上0円

また、給与所得控除も以下のように変更されています。

給与等の収入金額給与所得控除額
1,625,000円まで550,000円
1,625,001円以上1,800,000円以下収入金額 × 40% - 100,000円
1,800,001円以上3,600,000円以下収入金額 × 30% + 80,000円
3,600,001円以上6,600,000円以下収入金額 × 20% + 440,000円
6,600,001円以上8,500,000円以下収入金額 × 10% + 1,100,000円
8,500,001円以上1,950,000円(上限)
  • 基礎控除:48万円
  • 給与所得控除:164万円(収入金額 × 20% + 440,000円)
  • 社会保険料:86.4万円(年収 × 14.4%)

年収から控除額や社会保険料を差し引くと、課税される所得金額を算出できます。

  • 600万円 -(48万円 + 164万円 + 86.4万円)= 301万6,000円

ここから実際の所得税額を計算します。計算は以下の表で行います。

課税される所得金額税率控除額
1,949,000円以下5%0円
1,950,000円以上3,299,000円以下10%97,500円
3,300,000円以上6,949,000円以下20%427,500円
6,950,000円以上8,999,000円以下23%636,000円
9,000,000円以上17,999,000円以下33%1,536,000円
18,000,000円以上39,999,000円以下40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円
  • 所得税額:301万6,000円 × 10% - 97,500円 = 20万4,100円

上記金額が所得税になります。

不動産投資の赤字が30万円出た場合、課税される所得金額から赤字分を差し引きします(損益通算)。

  • 301万6,000円 - 30万円 = 271万6,000円

課税対象の所得額が減少します。ここに対して、上記表に書いてある所得税を計算すると

  • 所得税額:271万6,000円 × 10% - 97,500円 = 17万4,100円

上記が所得税額となり、不動産投資をしていなかった場合に比べて3万円の節税となりました。

住民税に関しても見ていきましょう。

住民税の節税シミュレーション

まずは住民税の基礎控除を算出します。

合計所得額控除額
2,400万円以下43万円
2,400万円以上2,450万円以下29万円
2,450万円以上2,500万円以下15万円
2,500万円以上0円
  • 住民税の基礎控除額:43万円

年収から住民税の基礎控除、給与所得控除、社会保険料を差し引き、課税対象所得額を算出します。

  • 600万円 -(43万円 + 164万円 + 86.4万円)= 306万6,000円

住民税の所得割は10%なので、

  • 306万6,000円 × 10% + 1,500円 + 3,500円 = 31万1,600円

が不動産投資をしていない場合に納めるべき住民税となります(上記1,500円と3,500円は、東京都の場合の個人住民税と市町村民税の均等割)。ここで同様に30万円の赤字が出ていると、

  • 課税対象の所得額:306万6,000円 - 30万円 = 276万6,000円
  • 納めるべき住民税:276万6,000円 × 10% + 1,500円 + 3,500円 = 28万1,600円

となり、不動産投資することで3万円の節税となります。