この行動についての特集番組を制作したNHKの番組ディレクター小山靖弘氏

きっかけは、「人づて」だった。10年ほど前、オーストラリア南西部沖でダイオウイカがシャチをくわえている姿が撮られたと私の耳に飛び込んできた。ダイオウイカとシャチが決闘しているというのだ。これを番組化できないかと、現地の海洋研究家→コーディネーター→何人ものディレクターと、数年かけて話がめぐってきたのだ。当時、ダイオウイカの番組を制作していた者として、そりゃ無理だろう、と聞き流していた。しかし、チャンスは意外なところからやってきた。2019年、たまたま南極海でのロケがあり、その帰りに現地を下見できる機会を得た。その初日、沖合で大揺れの船で目撃したのは、シャチの群れがゴンドウクジラを襲った姿。えっ?この海すごすぎる!学生時代に海棲哺乳類を専攻していた自分にとって、シャチに会うのさえ難しいのに、シャチがクジラ狩りする姿をこの目で見られるとは夢にも思っていなかったのだ。そして、シャチが向けた矛先は…、なんと世界最大の動物シロナガスクジラだった。そして、その深海には本当にダイオウイカの姿まで。信じられない。まだまだ地球って知らないことばかりだ。

海の王者“シャチ”が地球最大の“シロナガスクジラ”を捕食する、世界初の報告
(画像=深海の王者・ダイオウイカ、『オーシャナ』より引用)
海の王者“シャチ”が地球最大の“シロナガスクジラ”を捕食する、世界初の報告
(画像=海の最強ハンター・シャチ、『オーシャナ』より引用)

本特集番組の再放送が決定!

NHKスペシャル
「激闘 シャチ対シロナガスクジラ~巨大生物集う謎の海域~」
【NHK BSプレミアム】3月12日(土)午後3:30~4:19

NHKオンデマンドでも視聴可能(有料)

捕食の瞬間に偶然居合わせた映像家・中川西宏之氏

ある日ふとシャチに会いたいなぁ~と思った。パースの友人に 情報収集依頼。研究者John Totterdellと繋がり調査船の乗船許可が下り現地へ。私が衝撃の現場に遭遇したときは、暴風雨雷ゴロゴロ大しけ。憂鬱な気持ちでいつものポイントへ。霞む水平線に鳥山を発見。既にシャチの集団が大暴れ。船に乗っていたのはシャチ調査団体、個体識別写真を撮るボランティア、DNA採取の研究者など数名。嵐の船上。足元が不安定な中で右往左往の大興奮。鳥たちの鳴き声、砕ける波音、血の甘い匂い?野生動物の匂い?生きものたちの力強さ、生きていくことの厳しさそして命の輝きを感じた。スイム許可を得ていたがみんなに止められた。この瞬間を危険と感じなかったのは私だけなのだろうか?世情が許せばまた行きたい。

海の王者“シャチ”が地球最大の“シロナガスクジラ”を捕食する、世界初の報告
(画像=世界初撮影!シロナガスクジラvsシャチ(撮影 中川西宏之氏)、『オーシャナ』より引用)
海の王者“シャチ”が地球最大の“シロナガスクジラ”を捕食する、世界初の報告
(画像=CETREC リサーチチーム 2019(左上が中川西宏之氏。右上がリサーチチームリーダーのJohn Totterdell氏)(撮影 CETREC WA)、『オーシャナ』より引用)