ドーピング問題における日本の役割
よもや今回のワリエラ選手のドーピング疑惑が国家ぐるみであるということはないと思うが、ドーピング問題の背景には、ロシアが抱える貧困問題がある。スポーツ用具を買うことすらできない貧困家庭に生まれた子供たちが飛躍するためにはスポーツしかない。そしてコーチなどのスタッフにとっては巨額な金が動くオリンピックは大金を稼ぐビッグチャンスでもある。ドーピングは、選手にとってもスタッフにとっても魅力的な暗黒のツールだ。
近年、日本では、海外からの優秀なコーチの招請、科学的なトレーニング方法の開発、強化施設の増設、強化システムの改善などにより、オリンピックでの躍進には目を見張るものがある。これまでドーピング疑惑が発生したことはほとんどなく、発生したとしてもきちんとした問題の改善が行われている。ましてや組織的なドーピングなどは行われたことはない。
こうした日本には、ドーピングが世界に拡散することに歯止めをかけるために何か役立つことがあるのではないだろうか。ドーピング禁止薬物の高精度分析機械の開発、スポーツ後進国に対する経済援助、モラルの高い優秀なコーチの海外派遣、ドーピング後遺症に悩む選手へのケアなどによって、日本は大いに世界のスポーツ界に貢献できるはずである。
藤谷 昌敏
1954年、北海道生まれ。学習院大学法学部法学科、北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科修士課程修了。法務省公安調査庁入庁(北朝鮮、中国、ロシア、国際テロ部門歴任)。同庁金沢公安調査事務所長で退官。現在、JFSS政策提言委員、合同会社OFFICE TOYA代表、TOYA未来情報研究所代表、一般社団法人経済安全保障マネジメント支援機構上席研究員。
編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2022年2月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。
文・藤谷 昌敏/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?