(5)おまけ:内覧会を訪れた宙畑メンバーのここが気になる!

①展示されていたモックアップについて

1. 両面に貼られた太陽電池セル

モックアップを見ていて、最初に気になったのはカメラと同じ面にも太陽電池セルが貼られていること!

【ソニーGの挑戦】宇宙飛行士だけの特権を全人類に解放! ゲーム事業メンバーも参加する新規事業の狙い
(画像=『宙畑』より引用)

通常カメラが搭載されている面は、地球を向いていることが多いため、太陽光があたることは少なく、太陽電池セルを貼ることは稀です。

今回の衛星では、太陽電池パドルを展開する前に発電するために利用するのはもちろんのこと、地球以外を撮影することも想定されていることやより多くの電力を必要とする動画撮影モードがあることなどから、少しでも多く発電量を稼ぎたいという意図が感じられました。

2.推進器と太陽パネルの位置、水推進を用いているから攻めた設計に?

続いて、衛星の裏側に回って気になったのは、衛星の軌道を維持・変更するために用いられる推進器と太陽電池パネル面の近さです。

【ソニーGの挑戦】宇宙飛行士だけの特権を全人類に解放! ゲーム事業メンバーも参加する新規事業の狙い
(画像=『宙畑』より引用)

通常推進器からは、衛星の外に推進剤が放出されるため、その燃料の付着によって太陽電池の表面が汚れてしまわないようにするため、ある程度距離を取ることが一般的です。

今回の衛星の推進剤には水が用いられるとのことで、太陽光が当たり温度が高くなる太陽電池の表面にはとどまることはないと考えられるので、近い距離に置くことができているのかもしれません。

3.太陽電池パドルの展開機構

【ソニーGの挑戦】宇宙飛行士だけの特権を全人類に解放! ゲーム事業メンバーも参加する新規事業の狙い
(画像=『宙畑』より引用)
【ソニーGの挑戦】宇宙飛行士だけの特権を全人類に解放! ゲーム事業メンバーも参加する新規事業の狙い
(画像=『宙畑』より引用)

そして、モックアップで確認せずにはいられないのはやはり、太陽電池パドルの展開機構でしょう。どこまで実際のものが再現されているかは不明ですが、パドルが収納され、把持すると思われる本体側には、複数の表面処理の異なる部材が確認できました。

表面処理が異なるのは、真空の宇宙空間で同種金属が固着してしまうことを避けるためだとすると、なんらかこのあたりの部材が動くことで把持されていたパドルが展開する仕掛けになっているのかもしれませんね。(東京大学の超小型衛星のパネル展開の十八番はテグスを電熱線で焼き切る方法だと思いますが、写真の通り、カメラレンズに近すぎてレンズを汚す危険性もあるため、同様の方法が果たしてとられるのかは不明です)

②衛星画像の地上分解能(解像度)

衛星データの利活用事例について、日本一熱量をもって取り組む気概をもって運営するメディアとして、衛星画像の地上分解能が気にならない訳がありません。地上分解能次第が分かれば、どのような衛星画像が撮影できそうかのアイデアもより具体的に検討できるでしょう。

しかしながら、現時点で、地上分解能は非公開とのこと。人工衛星の打上げは2022年10~12月とのことですので、実際に撮影された衛星画像の発表や地上分解能の発表を楽しみに待ちたいと思います。

③ビジネスモデル

最後に気になるのはやはりどのように新規事業としてお金を稼いでいくのかということです。ここまでにも紹介した通り、一般の人々もお客さんとして想定されています。一般の人々が衛星画像を購入するというサービス形態は、世界を見渡しても前例がないチャレンジです。

単純に計算すると、一枚数万円の画像によって衛星開発費や打ち上げ費を回収しなければなりません。数十億円かかったとすると、数10万人が利用すれば、と求めることができますが、そのような単純なビジネスモデルではない、新しいマネタイズの形が産まれることに宙畑としては大きく期待しています。

例えば、先に紹介した杉本博司さんの作品などのアート作品が産まれ、高額の衛星画像が流通したり、教育プログラムを通して疑似的に宇宙と繋がる体験をした生徒からのフィードバックや、その意識変容を観察することで、事業化に向けた検討を進めるという期待も話されていました。

「STAR SPHERE」の人工衛星の寿命は2年半と想定されています。この期間内で得られたデータや気づきをもとに、様々な事業アイデアと事業モデルが産まれ、これからの新しい宇宙ビジネスの形がソニーから産まれることをとても期待しています。

提供元・宙畑

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