有名人が推薦したことで一夜にして有名となった商品例は少なくないだろう。今回は、バズることよりも、バズった後の行動を追ってみたい。
今回注目するのは、中国の有名女優ファン・ビンビンの推薦によるバスったpdc社の酒粕パックである。この商品は、推薦後1,000万個が完売し、訪日中国人がお土産として買い求めるようにまで至った。現在中国市場の売上は全体の3分の1を占め、pdc社にとって重要な市場となっている。

酒粕パックは、今もなお中国市場で高い人気を誇っている。
そんな酒粕パックが、消費者のフィードバックを基に2代目のパックをリリース。
第1ヒットから得たインサイトを今回の新商品にどう取り入れたのか、および中国市場への考え方などについて、pdcの海外事業部部長である北井さんにお話を伺った。

目次
酒粕パック ヒット後の行動
中国人アイドルのアンバサダー起用
酒粕パック ヒット後の行動
チャイトピ:ファン・ビンビンが推薦してくれた後、中国市場で酒粕パックはどれくらい売れたんですか?
北井:日本から空輸で中国市場に送られた分や、中国の観光客がお土産品としてお買い求め頂いた分も含めると、1,000万個程度だと計算できます。
チャイトピ:第1ヒットから得たインサイトをどう今回の新商品に取り入れたのでしょうか?
北井:お客さまの不満点を改善し、高評価頂いている点をパワーアップ致しました。
具体的には、洗い流しに少し時間がかかるとお声を多く頂いていたので、粘度を抑え、より使いやすくいたしました。
また、酒粕エキス等の主要成分の配合量を2倍に増量いたしました。更に、酒粕=アルコールといったイメージをもちやすい敏感肌の方にも手に取っていただけるように、アレルギーテストやパッチテスト等を実施し、安心してお使いいただけるようになりました。
チャイトピ:和フードを美容素材に使うという理念は、どのように中国消費者の中で浸透させていったのでしょうか?
北井:実は「ワフード」というブランド名自体の知名度はまだ高くありません。理由は中国のお客さまにより効果的に想起していただくよう、キーワードを「酒粕面膜」に絞り込み、認知の拡大活動を続けて来たからです。当時、「面膜」というキーワードは日本と比べ物にならないくらい認知されていたので、認知が高かった「面膜」に、知名度が高くなかった「酒粕」を付けて、「酒粕面膜」というオリジナルキーワードを作り、酒粕の成分をスキンケアに取り入れるとお肌に良い事や、洗い流すタイプのマスクという面白さ、熊本で伝統的な手法で酒造りをしている酒蔵さんのオリジナルの酒粕を使っている等の切り口で、地道に販促活動をしてきました。

チャイトピ:中国市場への進出経緯や、中国市場で認知度を上げるためにどのような活動を行ってきたのか教えて頂けますでしょうか?
北井:2011年に中国での販売を開始しました。当時はインバウンド需要の走りだった時期ですが、インバウンドのみならず、アウトバウンドに打って出る戦略を立てました。その流れでECを開始し、今に至ります。
また、ECから地道に認知度を上げる活動を行ってきました。これにより、しっかり認知度が上がり、自然とリアル店舗からもお声がかかるステータスにまで到達しました。今後は、OMOを意識しながら、顧客ニーズを素早くキャッチでき、事業に取り込めるような仕組みづくりを推進する予定です。
チャイトピ:中国市場でどういった PR戦略・ブランディング戦略を行っているのでしょうか?
北井:PRに関しては、広告代理店を使わずに直接インフルエンサーにアサインする事に力を入れています。直接やり取りする事で、pdcの想いが伝わり、より効果的なPRが出来るようになりました。ブランディング戦略としては、「酒粕面膜」というキーワードを獲得出来たので、「pdc」という言葉を中国のお客さまに想起して頂けるよう、酒粕面膜=pdc=アンバサダーという関連付けの販促に力を入れております。

チャイトピ:中国のREDなど、口コミサイトにてインフルエンサーによる酒粕パックのレビューが多いですが、どういったプロモーションを行ったのでしょうか?
北井:実際に使ってもらって気に入って頂いた場合には、率直な感想をあげてもらっています。
チャイトピ:インフルエンサー選ぶポイントは何ですか?
北井:フォロワー数など、定量で選ぶことはもちろんですが、それ以上に過去の投稿等を見て、我々と相性が合いそうかどうか、という定性面も重視しています。


チャイトピ:pdcのメイン顧客層はどんな人ですか?また、中国消費者をどう見ていますか?
北井:中国では、日本以上に若い世代からご評価をいただいており、10代~20代前半のボリュームが最も大きくなっています。中国のお客さまは、10代~20代前半のZ世代と、20代後半~30代以降の間には、購買行動に大きなギャップがあると感じています。20代後半以降~のお客さまは農耕的購買で、20代前半までのZ世代のお客さまは、狩猟的購買をする傾向があるように感じております。中国では、既にZ世代の購買行動がマーケット全体の主流を作るほどに成長したと考えており、我々は、Z世代の購買行動によりスピーディに対応する事が求められていると考えております。Z世代のお客さまは、他の世代以上にインフルエンサーのライブ販売に反応しやすい傾向がありますし、日頃からSNSを通じて情報をよく収集し蓄積した上で、購買行動は刹那的に行い、次々に良いと思ったものに移り変わっていく特性を強く感じております。
中国人アイドルのアンバサダー起用

チャイトピ:二代目酒粕パックを打ち出したと同時に、御社初のアンバサダーに中国人アイドルのファン・チェンチェンを起用しました。彼をアンバサダーに起用した理由は何だったんでしょうか?
北井:ファン・ビンビンさんの弟、ということももちろんありましたが、それよりも市場調査の結果、彼のファンと酒粕パックのファンの性質に類似性があるというデータがありましたので、依頼することにしました。
チャイトピ:アンバサダーやイメージモデルサービスについての考え方を教えてください
北井:メリットはpdcの認知を拡大できる事です。pdc内では権威付けと表現していますが、pdcの認知や権威・価値が上がれば上がるほど、我々の商品を使っているお客さまに、より満足して頂けると思っています。新規のお客さまにとっても購入のハードルを下げる効果があると考えております。