(モンテカルロシミュレーションで検証 連載47)
前回の連載からたった1週間で、オミクロン株の感染は急拡大しました。そこで内容は前回の連載と同じですが、新しい新規陽性者データの追加と、日本を含め5カ国については、再計算の結果に差し替えました。
世界的規模で同期し感染拡大しているオミクロン株について、ピークアウトのメカニズムを内蔵している山火事理論を用いて南アフリカ、日本を含む世界15カ国の今後を予測します。
1.山火事理論による予測の意味するもの
昨年の11月から導入した山火事理論は、感染拡大の上昇フェーズの陽性者データから初期条件を決定すると、その後のピークアウトの時期、大きさ、ピークの幅が全て決定される、つまりピークアウトのメカニズムを内蔵している理論です。
それまで行ってきた本連載の現象論的取扱いは、既存データを再現するようにパラメータを変化させ、経験則を含めてその延長として予測するものでした(AIによる予測もこの類に入ると思います)。このようなピークアウトのメカニズムを内蔵していない予測とは根本的に異なります。
現在、山火事理論の更なるブラシュアップと定式化を進めていますが、同時に、この理論を現実の現象に適用した場合、どの位データの再現性があるか、多くの国のデータに対して、どの位普遍性と予測性能があるか、を検証しています。
今回のオミクロン株の世界規模で同期した感染拡大は、検証のためには重要なデータです。下に示す15カ国の予測は、国別の事情等は考慮せず、同じメカニズムで一律に予測するため似たような形に見えます。今後、各国の結果が出てくれば、予測とデータの比較から、理論の問題点、普遍的なものと各国の事情による差異、等が明らかになり、ピークアウトのメカニズムの解明に光明を与えるだろうと期待しています。
2.ヨーロッパのデルタ株の予測の検証
オミクロン今後を予測するにあたり、オミクロン出現以前の予測について検証しておきます。昨年の11月の末にヨーロッパ各国でデルタ株が同期して急上昇しましたが、フランス、スペイン、ドイツ、ベルギーの4カ国について、山火事理論を用いてピークの立ち上がりの情報からピークアウトを予測したのが下の図です(本連載45)
図1の赤線が、前回の予測です。ドイツ、ベルギーに関しては、ピークアウトの日時、大きさ共に非常によく現在のデータを再現しています。
一方、フランスとスペインは、予測のピークアウトの位置から急激に上昇して、山火事理論の予測が全く機能しないのかと思いましたが、実はこの時、既にオミクロン株による感染拡大が始まっていて、その成分が被っていたことが後から分りました。
現在のオミクロン株の予測を青線で示しています。フランスとスペインは、デルタとオミクロンのピークが重なっているので誤解しましたが、前回の予測はデルタ株の成分を良く再現していることが分ります。4カ国の事例での山火事理論の予測性能の一端が示されたと思います。