「起業した企業の9割は5年以内に消滅する」。このようなフレーズを耳にすることがあるが、本当だろうか。中小企業庁のデータを紐解くと、実態はかなり異なるようだ。
企業生存率と起業廃業率の実態
中小企業庁は過去に発表した中小企業白書において、「起業後の企業生存率の国際比較」というデータを公表している。日本のデータを表で示すと以下のようになる。企業生存率だけではなく、企業廃業率も併せて示した。
項目 | 0年(創業時点) | 1年後 | 2年後 | 3年後 | 4年後 | 5年後 |
---|---|---|---|---|---|---|
企業生存率 | 100% | 95.3% | 91.5% | 88.1% | 84.8% | 81.7% |
企業廃業率 | 0% | 4.7% | 8.5% | 11.9% | 15.2% | 18.3% |
起業から5年後の企業廃業率は18.3%であり、「起業した企業の9割は5年以内に消滅する」という言葉は、実態と大きくかけ離れている。ちなみに中小企業白書によれば、10年後でも企業廃業率は3割、20年後でも約5割だ。
廃業率は低いが起業にはリスクがある
このような数字を知ると、起業が怖くなくなったのではないだろうか。実際は廃業していなくても実質的に事業を停止している企業もあるため、リスクはもう少し高いと考えたほうがよいが、それも「5年で9割が消滅」よりはずっとマシだ。
だからといって、起業にリスクがないわけではない。無理な事業計画や身の丈に合わない設備投資、質の低いビジネスモデルなどは失敗につながるため、是が非でも避けたいところだ。
<起業の失敗に結びつく要素>
・事業計画の甘さ
・過大な設備投資
・質の低いビジネスモデル
・資金調達の失敗
・人材不足
「生存」ではなく「成功」を目指すべき
さらに、「成功とは何か」も改めて考えてみてほしい。起業して事業が続いていくことが成功ではない。事業を続けることができても、利益を増やしていけなければ経営者としては二流、三流だ。
5年後に生存している企業は81.7%だが、「成功している企業」に限れば割合は少なくなるはずだ。もしかすると、10%程度かもしれない。
せっかく起業するなら、「生存すること」ではなく「成功すること」を目指すべきだ。起業する人は、企業の生存率と成功率は異なることを理解しておこう。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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