2021年8月期は192億円という巨大な赤字だった出前館。その背景には成長に向けた拡大戦略があった。詳細を見ていこう。

営業利益は192億円の赤字

出前館の2021年8月期有価証券報告書によれば、営業損失は192億円となっている。2020年の同期の営業損失は27億円だったことを考えると、赤字の額は7倍ほどになる。

ちなみに売上高は、2021年が290億円、2020年が103億円。2021年の方が3倍近い数字になっている。

売上高は3倍になっているのに7倍近い赤字という結果。なぜだろうか。

2020年10月に発表した中期経営計画はどうなった?

出前館は2020年10月に中期経営計画を発表。これに伴い拡大路線をとっている。GMV(流通取引総額)は前期比58%増、アクティブユーザー数は87%増となっている。また加盟店数も8万4,000店舗を超え、前期比では156%増となった(2021年8月期有価証券報告書)。

ではなぜ赤字が膨らんだのだろうか。確かに拡大路線は順調に進んでいると言える。しかし、コロナ禍によりデリバリー全体の需要が増えたことも一因となり、他者を引き離すことはできていない状況だ。

強気路線を続ける出前館

出前館の強気路線はさらに続く。カクヤスが運営する酒類、日用品などを扱う新たなブランド「カクヤスEXPRESS」において即時デリバリーサービスを開始した。

またウルトラ半額祭など、キャンペーンの実施にも積極的だ。これは弁当や中華、洋食、ピザなど、対象商品が文字通り半額となる。

CMにおいても、人気YouTuberのヒカキンやはじめしゃちょーなどを起用し、好感度の高さが話題となっている。

ブランド価値と認知の向上へ

営業利益の赤字とは逆に好材料が非常に多いのが特徴的だ。ただし、この赤字は当初から想定していた数字でもあるようだ。2022年8月期は「連結営業損益が500億円~550億円の赤字」との業績予想となっている。

UberEatsやmenuなどフードデリバリーの競争は激しい。出前館の赤字拡大の裏には未来を見据えた強硬な拡大路線が存在する。はたしてこれが吉と出るのか凶と出るのか。

文・しらいはるか

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