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ロシアの宇宙トイレ
長期滞在で顕在化する女性のトイレ問題
ロシアの宇宙トイレ
一方、国際宇宙ステーションのトイレを独占するロシアがどのようなトイレを開発してきたのか、ご紹介したいと思います。

Credit : sorabatake、『宙畑』より引用)
まずは、今でも国際宇宙ステーションとの往還で使われているソユーズ宇宙船のトイレについてです。排泄物を空気で吸入する仕組みで、ソユーズのトイレは打ち上げから軌道上に至るまで、約2日間の排泄に耐える容量があります。容量が制限されているため、排便は極力推奨されていません。そのため、飛行前には食事制限と事前に排便を防ぐ措置がとられています。

Credit : Eric Long/NASM、『宙畑』より引用)
サリュートのトイレにドアがなく、プライベートな空間を遮るのはカーテンだけでした。続いて、ミールには2台のトイレが設置されました。尿を飲み水に再生する技術が登場したのも、排泄物の大気圏突入による燃焼処分が採用されたのもミールからでした。尿はフィルターを通して回収され、蒸留水、硫酸、三酸化クロム酸で水素イオン指数pHを1.3から2.0程度に処理し、尿の酸性度を下げ容器に格納されました。そこから酸素と水素が抽出され、酸素は船内に再び送り込まれる技術が発達しました。尿は船外に廃棄されましたが、約10年の運用にわたって、尿により船外太陽電池の効率が40%低減したと言われています。(*5)一方、固形排泄物は21回分の排泄を格納できる容量を持つ小さな缶に保管されます。ミールトイレの改良版が、現在国際宇宙ステーションで使用されています。

Credit : Smithonian Institution、『宙畑』より引用)
長期滞在で顕在化する女性のトイレ問題
1963年、ソ連のワレンチナ・テレシコワ宇宙飛行士が女性として初めて宇宙飛行を成し遂げました。一方、アメリカが女性のサリー・ライド宇宙飛行士を初めて宇宙に送り出したのが20年後の1983年です。それ以来、約60人の女性が宇宙に飛び立っています。今まで最長の宇宙滞在を経験している女性宇宙飛行士は、2017年に665日を記録しているアメリカ人のペギー・ウィットソン宇宙飛行士です。それ以前は、イタリア人のサマンサ・クリストフォレッティ宇宙飛行士の199日でした。(男性の長期滞在記録は2015年、ロシア人のゲンナジー・パダルカ宇宙飛行士で879日)

Credit : NASA、『宙畑』より引用)
そこで気になるのが、宇宙に滞在する女性がどのように月経(生理)に対処しているかという問題です。地球には重力があるので、無重力状態では経血は体外に出てこないのかとふと疑問に思います。現在、無重力状態でも経血が体外に排出され、生理周期も影響されないことが確認されています。それでも、宇宙に持って行ける水や日用品の重量が限られているため、多くの女性が短期ミッションではピルを服用して生理を止める選択をしているようです。ピルにはホルモンのエストロゲンが含まれていて、宇宙での骨粗しょう症を防ぐ効果も指摘されています。ただ、宇宙で生理を止めるのか止めないのか、その判断は宇宙飛行士と担当医に一任されています。

Credit : NASA、『宙畑』より引用)
2009年に国際宇宙ステーションへ設置された尿を飲み水に変える装置は、経血のろ過は考慮されていません。火星まで片道2年掛かると言われる長期ミッションなどでは、ピルの服用(効用:2週間)以外にも、IUD(子宮内避妊用具)(効用:3-5年)や注射による避妊薬(効用:2-3年)なども検討されています。