2019年9月20日より予約受付が開始されたマツダ CX-30。新世代商品の第2弾として投入されたこのクロスオーバーSUVは市場を席巻することはできるのでしょうか?さらに深化を遂げた魂動デザインにも注目です。
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突然、2ケタの数字?CX-30という名前の理由
マツダ3がベースのCX-30は、クロスオーバーSUV市場を席巻できるか?
突然、2ケタの数字?CX-30という名前の理由
突然の2桁数字はどうしてなのか? まずはそのあたりの話からしよう。
これまでマツダのSUVは「CX-3」とか「CX-5」とか「CX-8」とか、数字が1桁だった。ところがブランニューモデルとして登場した「CX-30」は“30”と2桁数字になっているのだ。
車体の立ち位置を考えればCX-3よりは大きくてCX-5より小さいわけだから、「CX-4」と名付けるのが順当なところ。ところが中国には現地専用車としてCX-4が存在するからそうもいかず、CX-30ってことで落ち着いたというわけだ。当初はこれが「CX-3の新型」といったスクープもあったから「新型CX-3」とすれば一件落着だったけど、CX-30のデビュー後もCX-3は引き続き生産販売されるのでCX-30となったと考えれば辻褄は合う。
まあ、先日発表された2020年後半から欧州で販売されているという電気自動車SUVの名前が「MX-30」だったことを考えれば、CX-30はまだまだ分かりやすい名前だ……と思うのは僕だけではないだろう。
マツダ3がベースのCX-30は、クロスオーバーSUV市場を席巻できるか?
というわけでCX-30。このクルマの成り立ちを説明するには、やはりCX-3の存在が避けて通れない。2015年にデビューしたCX-3は美しいスタイルの評価が高かった。しかしその反面、後席や荷室が広くなかったのでファミリーユーザーから選ばれるクルマにはなれなかった。当時は後席も荷室も広くないけど奇抜で個性的なスタイルの日産「ジューク」が大ヒット中で、コンパクトクロスオーバーSUVはデザインの評価が高ければ販売が伸びるとマツダは考えていた。
しかしその後、後席も荷室も広いホンダ「ヴェゼル」がデビューして大ヒット。コンパクトクロスオーバーSUVにも「実用性」の時代が訪れたのだ。続いて人気が盛り上がったトヨタ「C-HR」も、ヴェゼルほどではないけれどCX-3に比べると実用的。そんな背景があって、マツダには実用的なコンパクトクロスオーバーSUVのラインナップが求められたのだ。そこで開発されたのがこのCX-30というわけである。
430L(サブトランク含)というCX-30の荷室容量は、350LのCX-3よりも広い(ちなみにCX-5は505L)。後席使用時の荷室長はそれぞれ、810mm(CX-30)、690mm(CX-3)、960mm(CX-5)となっていて、CX-30ならCX-3と違って「ベビーカーとスーツケースが同時に積める」というわけである。ちなみにCX-5でも上級グレードにしか備わらない電動テールゲートを、もっともベーシックな仕様以外は標準装備するというのもCX-30のちょっとした自慢だ。
そんなCX-30だが、CX-3とのメカニズム的な大きな違いはベースの設計だ。CX-3は車体の基本構造は「デミオ」、つまり現在の「マツダ2」に準じている。いっぽうCX-30は「マツダ3」がベース。格上げされているのである。
とはいえパッケージングはかなり違っていて、ホイールベースは2655mmとマツダ3の2725mmよりも短い。開発主査によるとこの狙いは「荷室を広くしつつも運転しやすくするために全長を短くしたかった」とのことで、全長はマツダ3(5ドアハッチバック)の4460mmよりも短い4395mmとなっている。
いっぽう、その弊害と言えるのは後席膝周りスペースがマツダ3に比べて狭いことだが、とはいえ「背が高い」というSUVのメリットによって、床に対する着座位置を高くして乗車姿勢を整えることで気にならなくしている。
確かに後席に座ってみても「十分な空間だな」と思えた。ただ、座面はもう少し長いほうがしっくりくる気がする。
だから、CX-30のデザインテイストが何となくマツダ3に似ているのは偶然ではない。だだし、よく見るとドアパネルのリフレクション(内側へ凹んだ反り)は方向が違ったりもするのが興味深い。フェンダーやボディ下部を覆う無塗装の樹脂部品がやたらと厚いように見えるのは気のせいではないけれど、チーフデザイナーによると「これを薄くするとボディが厚く見えてしまう」とのこと。好みは分かれそうだが、そこは納得できる。
エクステリアデザインでいえば、ボンネット先端が低くてフロントマスクが“薄い”のは最近のマツダとしては異例。そして細かい部分でいえば、まるで心臓の鼓動のようにパッと転倒しながらぼんやり消えていくウインカーは面白い演出だ。個人的な意見でいえば、結構好きである。
このクラスとは思えないほど、正直に言うとフラッグシップセダンの「マツダ6」を超えているのではないかと思える上質感が自慢のインテリアも、マツダ3に似ているようでちょっと違う。メーターや空調コントロールパネルが同じで全体のテイストが似ているから気が付きにくいが、マツダ3よりも開放的なダッシュボードの意匠なのだ。いずれにせよ、この高級感はクラスを超えている。
そしてフロントシートはフィット感が抜群によく、ペダル配置など運転環境に理想を追求しているのも素晴らしい部分だろう。