(4)スマートシティを加速させる国内外の動向
ここまで実際にスマートシティ化を進める都市の事例紹介と基盤となる技術を紹介しました。
本章ではスマートシティ化の促進をより後押しする国の精度やサポート、企業の取り組みをまとめています。
国内各省庁が推し進めるスマートシティ構想
国内においては、内閣府、総務省、国土交通省、経済産業省が自治体や企業向けに、技術面や補助金給付などの支援を行っています。
官民データ活用推進基本法
急速な少子高齢化など国が直面する課題に解決に取り組む環境を整備する目的で、2016年に「官民データ活用推進基本法」が公布、施行されました。
これにより、各都道府県は官民データ活用における方針と施策をまとめた「都道府県官民データ活用推進基本計画」の策定が義務付けられました。市町村は、努力義務とされています。自治体のデータ利活用に関する意識向上につながっているのではないかと考えられます。
スーパーシティ構想
AIやビックデータを活用し、都市の基盤を根本から改革する「スーパーシティ構想」の実現に向けて、2020年5月に「国家戦略特区法」通称「スーパーシティ法」が可決されました。内閣府は国家戦略特別区域を公募して、春頃には選定地域が発表される予定です。指定された自治体は、必要な規制緩和の特例を求めることができるようになります。
海外のスマートシティ支援政策例
ヨーロッパ「Horizon Europe」

Credit : EU、『宙畑』より引用)
2020年10月にEUは、イノベーションを促進する研究開発枠組み「Horizon Europe」を採択しました。これは「Horizon2020」の後継にあたるプログラムで、2021〜2027年までが対象となっています。ヨーロッパ100都市でカーボンニュートラルを実現することやスマートシティの推進がミッションとして盛り込まれています。具体的な内容や予算などは、今後発表される見込みです。
韓国 U-City法と海外拠点の設置
韓国では、2000年代から韓国版スマートシティ「ユビキタス都市(U-シティ)」が注目されるようになりました。2008年にユビキタス都市(U-シティ)建設法が公布され、都市の主要サービスのデジタル化が推進されています。現在は、仁川や松島をはじめ、約50カ所の地域でスマートシティ構築が進められています。
2020年9月には、韓国の国土交通省が「スマートシティ協力センター」をベトナム・ハノイ、タイ・バンコク、インドネシア・ジャカルタ、トルコ・イスタンブールに設置したことを発表しました。これは、韓国のスマートシティ構築に関するノウハウを活かして、海外進出の機運を高めることが目的で、同センターは各地域と韓国企業の橋渡しや支援を行います。
国際規格の標準化
スマートシティは、さまざまな構成要素と技術によって構築されていて、「何から着手すれば良いかわからない」という課題があります。そこで、国際標準化機構(ISO)、国際電気標準会議(IEC)、国際電気通信連合(ITU)などが、国際規格の制定に乗り出す動きが出てきています。
そのような中、中国が新型コロナウイルスの感染拡大対策のための住民監視システムに関連する国際規格を提案。国民の個人情報の収集体制が疑問視されている中国が国際規格をつくるとなると、日本や米国にとって不利に働くのではないかと懸念する声が広がりました。
企業のスマートシティ関連事業事例
Cisco(シスコ)
米国に本社をおく通信機器メーカーのCiscoは、オランダ・アムステルダムや英国・ロンドンをはじめ、世界35カ国70都市のスマート化を手掛けています。
IoTデバイスから収集したデータを一元管理できるツールや、既存の街灯にアクセスポイントやカメラを併設することで、Wi-fiスポットの提供、騒音や大気の汚染状況の監視、ゴミ収集管理サービスが実現できるサービスなどを展開しています。

Siemens(シーメンス)
ドイツ最大の総合テクノロジー企業Siemensは、交通・ビル設備・エネルギー・環境など、幅広い分野のスマート化に対応するサービスを提供しています。具体的には、大気汚染物質の排出量をリアルタイムで収集し、気象情報などと合わせて分析し、対策をシミュレーションするツールやエネルギーの効率化システムなどがあげられます。

Credit : SiemensSource : new.siemens.com/global/en/company/topic-areas/expo-2020-dubai.html、『宙畑』より引用)
Siemensはこれまでに、香港やシンガポールのスマートシティプロジェクトに参画しています。さらに、ドバイのスマートシティ構築にもパートナーとして、参画していて、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期になっているドバイ国際博覧会で展示予定のスマートシティのブループリントが展示される予定です。
Microsoft(マイクロソフト)
Microsoftは、行政向けの管理サービスや市民とのコミュニケーション促進を図るサービスを展開しています。また、IoTセンサやカメラが取得した大量のデータを収集し、分析するのに、Azureクラウドサービスが利用されているケースが多くあります。
2019年に日本マイクロソフトは、東日本旅客鉄道、JR 東日本情報システム、みずほ情報総研と共同で、ブロックチェーンとAzureを活用して、移動や各種サービス利用者の個人データの改ざんや漏洩防止のメカニズムを備えたテスト基盤を構築する実験を行ったことを発表しました。この取り組みは、MaaSにおける有効活用を検討していくとのことです。
日立製作所
デジタル技術を活用したソリューションやサービスを提供する日立製作所は、国内外のスマートシティプロジェクトに積極に参画しています。千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」では、エネルギーマネジメントシステムを導入し、エネルギーの効率化を実現させました。また、2019年には、大阪府大阪市と連携協定を締結し、スマートシティにおけるサービスの検討を行うことを発表しました。
NEC
NECは、スマートシティ向けデータ利活用基盤サービスを提供していて、富山県富山市や香川県高松市、ポルトガルの首都・リスボンなどで採用されています。
(5)まとめ
ビックデータ分析や3Dプリンティング、シェアリングエコノミーなど、指数関数的に発展するテクノロジーが組み合わさることにより、各都市のスマートシティ化は、今後数年間で大きく前進するのではないかと考えられます。
宙畑編集部は引き続き、衛星データプラットフォーム「Tellus」のオウンドメディアとして、スマートシティにおける衛星データ活用の可能性を探っていきます。
提供元・宙畑
【関連記事】
・衛星データには唯一無二の価値がある。メタバース空間のゼロ地点を作るスペースデータ佐藤さんを突き動かす衝動とは
・深刻化する「宇宙ごみ」問題〜スペースデブリの現状と今後の対策〜
・人工衛星の軌道を徹底解説! 軌道の種類と用途別軌道選定のポイント
・オープンデータ活用事例27選とおすすめデータセットまとめ【無料のデータでビジネスをアップデート! 】
・月面着陸から50年!アポロ計画の歴史と功績、捏造説の反証事例