自治体や企業が実現を目指すスマートシティのコンセプトを続々と発表しています。実現すると、私たちの暮らしはどのように変化するのでしょうか。国内外の事例や鍵となるテクノロジーをまとめました。
(1)スマートシティとは
スマートシティの定義と変遷
スマートシティの概念は、新しいテクノロジーの登場によって進化を続けていて、明確には定義されていません。
全国各地の取り組みを推進する国土交通省は、
「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」
と定義しているのに対し、シンクタンク・コンサルティングファームの野村総合研究所は、より具体的に
「都市内に張り巡らせたセンサーを通じて、環境データ、設備稼働データ・消費者属性・行動データ等の様々なデータを収集・統合して、AIで分析し、更に必要な場合にはアクチュエーター等を通じて、設備・機器などを遠隔制御することで、都市インフラ・施設・運営業務の最適化、企業や生活者の利便性・快適性向上を目指すもの」
と定義しています。米国の業界団体であるSmart City Councilは、
「全ての都市機能にデジタルテクノロジー(ICT)が組み込まれた都市」
と定義しています。それぞれに違いはありますが「抱えている課題を、テクノロジーで解決する持続可能な都市」という部分は、おおよそ共通しています。
そもそもスマートシティが脚光を浴び始めたのは2000年代後半からで、2010年代は再生可能エネルギーの利用拡大など、特定の分野に特化して推進されてきました。その事例としては、2010年から始まった神奈川県横浜市の「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)」で、低炭素社会の実現に向けて、電気自動車の導入や電力の需給バランスを最適化するバーチャルパワープラントの構築を進められていることなどが挙げられます。

Credit : 横浜市、『宙畑』より引用)
そして、近年は、2012年に構想が始まった福島県会津若松市の「スマートシティ会津若松」が地域の活性化や生活の利便性向上、街の見える化を目指し、データの利活用を進めているように、データ利活用に取り組む自治体が増えてきています。
海外に目を向けると、ウィーン工科大学は、「経済活動・ビジネス」「環境」「交通」「教育」「生活」「行政」の6分野でスマートシティは構成されおり、他分野でのテクノロジーの利用が期待されています。
このように、スマートシティの定義は明確には決まっておらず、時代の流れや各国・各自治体の抱える課題が何かによって変化していることが分かります。
コンパクトシティとの違いから知るスマートシティの特徴
スマートシティと似た概念として、「コンパクトシティ」があげられます。これは、市町村の中心部に居住と各種機能を集約させることで、暮らしやすさを向上させようとする取り組みです。1990年代にCO2の削減をはじめとする環境問題やドーナツ化の対策として、ヨーロッパで議論されるようになりました。
国内では、除雪に膨大なコストがかかっていた青森県青森市と弘前市、ドーナツ化現象が起こっていた富山県富山市などが取り組んでいます。

Credit : 富山市、『宙畑』より引用)
スマートシティとコンパクトシティは、どちらも都市課題の課題を解決するという点では共通していますが、その手法をスマートシティはテクノロジーやデータの利用、コンパクトシティは空間利用とする点で異なっています。
最近では、スマートシティとコンパクトシティの概念を上手く融合させることで、より良い都市の構築に進むのではないかという研究も進められています。