「YAMAP」の質問!「衛星で、空から遭難者を探せる?」
松本:じつは「リアルタイム紅葉モニター」に続き、「リアルタイム積雪モニター」もやりたいんです。特に紅葉や雪のリアルタイムな情報は、登山計画を立てるときにも有効なはずですから。
中村:いいですね! 雪といえば、ぼくらは「雪崩」の危険度を機械学習できないかなと思っているんです。斜面の角度、日照時間、過去に雪崩が起きた場所を組み合わせて、危険度を出せないか、と。
松本:それができたら登山者の安全に寄与できそうですね。その情報、ぜひほしいです。
土岐:たとえば衛星で「遭難者がここにいる」というのを見つけることはできないんでしょうか?
中村:現時点ではむずかしいかもしれないのですが、今、SpaceX(スペースエックス)社が通信衛星をたくさん打ち上げていて、どこにいても衛星経由で地上とつながれる状態にしようとしています。定期的にビーコンを送り、途切れたら遭難したとみなし、最終ログの位置を警察に届ける……ということはソリューションとして今後はありえるかもしれません。
土岐:ビーコンを送るんですね。スマホでできればベストなんだけれど。そこまではむずかしいですか?
中村:アンテナの小型化も進んでいるので、近いうちに登山者が持ち運べるサイズにまでなるのではないかと期待しています。最近はアメリカでベータ版アプリを実証中との発表がありました。リリースはアメリカ・カナダで2021年に予定とされていますね。
土岐:なるほど、それは期待ですね! でも現時点では衛星画像から直接探すのはむずかしいのか…。
中村:空から見た人間のサイズがあまりにも小さいので、そのままでは見つけられません。でも、ひらけた場所に5mくらいの何か反射するものを広げておいてもらえたら、発見できる可能性もあります。たとえば、防災用でよく見かけるアルミ保温シートのようなものでもいいかもしれません。
土岐:なるほど、登山時はその反射グッズを持ってのぼって、遭難したらそれを広げておき、衛星が上空を通るのを待つんですね。アナログだけど、いいかもしれないな。
中村:SAR画像なら、雲があっても、雪が降っていても地表の様子をウォッチできます。だから、もし広げるならSAR画像で見つけやすい色のものだといいですね。そのグッズを広げたら、上空からよめるサイズのSOSの文字が書いてある、とか。おっと、商品開発の話になってきちゃいましたね(笑)。
「YAMAP」の質問!「衛星で土砂崩れや倒木って見える?」
松本:じつはいま、ユーザーの軌跡データから新ルートを追加したり、既存のルートを更新したりする「伊能忠敬プロジェクト」という新企画を進めているんです。土砂崩れや倒木で歩けなくなった既存ルートも知りたいのですが、もしかして衛星で見えますか?
中村:土砂崩れはすぐに解析できます。倒木はちょっと工夫が必要ですね。たとえば、最初に樹の頂点を抽出しておき、新しい抽出データを重ねたとき、消えた頂点があったら倒木したとみなして解析することは可能です。無料画像は粗いので1本ずつの解析はむずかしいですが、一部エリアがまとめて倒木していればわかると思いますね。
松本:まさに、まとめて倒木しているエリアが知りたいんです。1本くらいならくぐれるのですが、たくさん倒れていると確実に通行できなくなりますからね。無料画像で抽出する場合、日本全国をカバーしようとすると何日くらいでスキャンすることになるんでしょう?
中村:5日程度で日本全国をスキャンできます。でも、めちゃくちゃ大きな容量で、関東圏だけでも数十ギガバイトに及ぶかも…。こういうときはヨーロッパの「Sentinel Hub」という専門サイトがオススメ。無料画像が解析しやすい形で提供されていますよ。日本では衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」で衛星画像を見ることができます!
松本:ぜひ覗いてみます。さきほど出ていた「雪崩」の危険度を機械学習するプロジェクトも興味があります。登山者の安全に関して、ぼくらがお手伝いできることがありましたらぜひお声がけください!
中村:山登りジャンルでは、衛星データは災害や安全面でお手伝いできそうな可能性が見えてきました。土岐さん、松本さん、ありがとうございました!
提供元・宙畑
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