(3)夢物語ではない、月や火星に“住む”という選択肢
月や火星、SFの世界に出てくるような舞台が人類にとって当たり前の存在になるかもしれません。実はそこに向けて、すでに複数のプロジェクトが進んでいるのです。
■月探査プロジェクト
例えば、スペースXやスペース・アドベンチャーズは月への宇宙ツアーを計画しています。ZOZOの創業者・前澤友作氏の出資で立ち上がったディア・ムーン・プロジェクトは、スペースXが現在開発中の大型宇宙船スターシップ号に8名程度の乗客を乗せ、ファルコンロケットで月まで送る壮大なプロジェクトです。過去にアポロ13号が辿った軌道と同じ軌道を通り、月に着陸することなく月の周囲を回り、打ち上げから6日後に地球へ帰還する予定です。
現時点では2023年に予定されているスペースXの月旅行ツアーですが、ツアーの回数を重ねて安全性や安定性が確立されれば、価格も下がる可能性があります。価格が下がればより多くの参加者を集められ、さらに価格が下がるという好循環が生まれるはずです。
民間だけでなく、国家でも再度月を目指す動きがあります。NASAでは2028年に月面基地建設を目指す「アルテミス計画」が立ち上がっており、2024年に有人月面着陸を予定しています。
■火星探査プロジェクト
将来的には火星への旅行ツアーなども計画されており、宇宙旅行ビジネスのさらなる広がりが期待できます。「火星への移住」をミッションに掲げるスペースXをはじめ、宇宙船の信頼性向上と大型化が実現することで、宇宙旅行ビジネスは確実に拡大するでしょう。
火星への旅行や移住を進める前に火星を探査する必要がありますが、すでにそのためのプロジェクトも進んでいます。
例えば、NASAは2033年の火星有人探査計画を進めています。その上で、火星探査車(ローバー)を送り込むプロジェクトが進めており、2020年夏に「Perseverance」を積んだロケットを打ち上げる予定です。
さらに、スペースXと同様に、商用旅行サービスの展開を進めようとしているアクシアム・スペース社です。同社は、旅行サービスだけでなく、NASAからISSの商業モジュール建設業者として選定を受けている他、火星探査用ローバーの開発にも力を入れています。
これらの取り組みが成功すれば、人類が火星に旅行して定住する未来が実現するかもしれません。
(4)まとめ
2020年代は、ヴァージン・ギャラクティックのVSS Unityによる、一般の旅行客を乗せた「宇宙旅行ツアー」が大きな盛り上がりを見せるでしょう。
またスペースXも、来年末までに国際宇宙ステーションへの8泊10日の宇宙旅行ツアーを実施する予定です。さらに2024年までに、ファルコン宇宙船による地球周回軌道観光ツアーも始まる予定です。コロナウイルス感染拡大により、ツアー開始を遅らせることは十分考えられますが、10年スパンで見れば実現する可能性の方が高いでしょう。
■有人宇宙飛行スケジュール(延期の可能性あり)
2020年5月27日:NASA・スペースX ISSへ
2021年7月11日:ヴァージン・ギャラクティック、リチャード・ブランソン氏を乗せた有人宇宙飛行を成功!
2021年7月20日:ブルーオリジン、ジェフ・ベゾス氏を乗せた有人宇宙飛行を成功!
2021年:スペース・アドベンチャーズとスペースX、民間人に宇宙旅行を提供開始
2021年:アクシアム・スペースとスペースX、民間人をISSへ
2023年:スペースX、ZOZO創業者・前澤友作氏を乗せて月周回旅行へ
2024年:スペース・パースペクティブが成層圏への旅行提供開始
2024年:NASA、有人月面着陸
2030年代:中国、有人月面着陸
2033年:NASA、火星有人探査
2020年代は、宇宙旅行ビジネスが花開いたーー。後世の人たちは、このように評価するかもしれません。
提供元・宙畑
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