目次
表に出ることの少ない譜面制作、その実態は?
「自分にしかできない仕事」だから食いっぱぐれない

表に出ることの少ない譜面制作、その実態は?

音ゲーの譜面制作ってどんな仕事? 音ゲーが好きすぎた結果、職人になった話
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

少年B:

Yamajetさんは作曲と譜面制作の両方を手掛けていますが、収入の割合はどうなっているんですか?

Yamajet:

「作曲1:譜面2」くらいの稼ぎですね。作曲も3?4年前に比べるとかなり単価を上げていただいてるんですが、譜面制作は大きなところで3つやらせてもらってるので、そちらの収入のほうが高い感じです。譜面制作の仕事は、基本的に名前は出ないことが多いですね。

少年B:

でも、プレイヤーからすると「神譜面をプレイしたい!」「譜面制作者の名前を知りたい!」って気持ちはありますよね。

Yamajet:

そうだと思います。曲もそうですけど、譜面にもけっこう個性が出るんですよ。だから、クレジットがなくても予想できるパターンもありますけどね。僕もそうですけど、遊ぶ側もオタクなので(笑)

少年B:

「この譜面、〇〇さんっぽいな?!」とかあるんですね!

Yamajet:

そうそう、想像しながらプレイするのも楽しいんですよね。譜面の場合は曲よりも「内部データ」に近いので、あまりクレジットされないのかな、という感じはしますね。最近は譜面制作者の名前をだす音ゲーもだんだん増えてきましたが。まぁ、名前の出る出ないにはあまりこだわってないですね。

音ゲーの譜面制作ってどんな仕事? 音ゲーが好きすぎた結果、職人になった話
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

Yamajet:

譜面制作は本来は内製でやることが多いんでしょうけど、僕の場合は作曲と譜面「両方できるから」仕事に繋がった面も多いと思います。譜面制作で呼んでもらった会社さんに「僕、曲も作ってるんですけどどうですか?」ってアピールをしたら曲も発注してもらえたりとか。

「自分にしかできない仕事」だから食いっぱぐれない

少年B:

譜面制作ならではの苦労や楽しさを教えてください。

Yamajet:

たとえば、『beatmania』や『太鼓の達人』は一方向からノートが流れてくるゲームですが、画面上のいろんな位置にノートが出現するタイプのゲームは「見やすさ」も考えなきゃいけないので、やっぱり気を遣いますね。

少年B:

ゲームごとに仕様が違うのか……それは大変ですね。

Yamajet:

逆にいろんな音ゲーがあるからこそ、飽きずに仕事ができるのはありますね。いま譜面を手がけているゲームもみんな個性があって。たとえば、キャラクターの動作に合わせてフリックするゲームもあります。足を右に蹴り上げる動作に合わせて右にフリックしたり……。譜面制作の手間はかかるんですが、没入感が増すので、プレイしてて楽しいです。

少年B:

ご自身も音ゲーマーだからこそ、大変な仕事も楽しめるんですね。

Yamajet:

うん。あと、プレイするハードで全然違うのもおもしろいですよ。たとえばスマホの音ゲーなら、ノートが落ちてくるラインが5つあった場合、真ん中のラインに長押しがあるときに左右どちらの手で押したらいいのかわかんないんですよね。左手で長押しして、次のノートが右側に降ってくればいいけど、左に降ってくる可能性もあるので。プレイヤーの意識を、譜面でうまく誘導しないとだめなんです。

音ゲーの譜面制作ってどんな仕事? 音ゲーが好きすぎた結果、職人になった話
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

Yamajet:

スマホの音ゲーは、基本的にはスマホを横にして、左右2本の親指でプレイするように作られているんです。自分は親指だけじゃなくて、ほかの指も使っていたのでまったく気にしてなかったんですが、譜面を作る側になってはじめて気にするようになりました。いまでも油断すると、たまにリテイクを言われます(笑)

少年B:

なるほど……。自分の感覚だけではだめな場合もあるんですね。

Yamajet:

あと、作曲ソフトでは譜面は作れないので、基本的には専用の譜面制作エディターがメーカーさんから支給されて、それを使ってプレビュー画面を見ながら仕上げる場合が多いんです。でも、メーカーさんによってはエディターが支給されないケースもあって、その場合は自分で工夫しなくちゃいけない。

少年B:

そんなことがあるんですか!

Yamajet:

僕はプログラムを組めないので、作曲ソフトとExcelを使って変換とかを頑張って、譜面を組み上げることもあります。でも、これもだいぶ経験を積ませてもらったので、なんとなくどんな状況にも対応できるようになりました。

少年B:

Excelで! それができる人はそうそういないのでは……!?

Yamajet:

そうですね、作曲ができて、音ゲーに詳しくて、かつどんな状況でも譜面が作れるって人は、確かに少ないかな、と思います。最初の頃は「エディターないのか?!」とも思ったんですが、逆に言えば「こんな状況で譜面作れるの、俺しかいないよな」って(笑) 他にできる人がいないなら、当分は仕事に困らないなと。

音ゲーの譜面制作ってどんな仕事? 音ゲーが好きすぎた結果、職人になった話
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

少年B:

楽しさややりがいについてはどうですか?

Yamajet:

やりがいはすごくありますよ! BMSもそうですが「自分で曲作ってそれで遊びたい」から始まってるので。自分の作った譜面が遊んでもらえるのは嬉しいし、ゲームが公開されてるってことは自分でも遊べるわけですよ。自給自足をしつつお金ももらえるわけですから、こんなに楽しいことはないですよね。

少年B:

思い出に残る仕事はありますか?

Yamajet:

サービスが終了してしまったゲームのことが思い出に残りますね。尖ったゲームはなかなか長く残らないんだけど、だからこそ僕らみたいなゲーマーには記憶に残ります。スマホのゲームで「親指以外を使ってもいい」って言われたので、雪崩のようなノートを降らせてみたりとか(笑)

音ゲーの譜面制作ってどんな仕事? 音ゲーが好きすぎた結果、職人になった話
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

Yamajet:

あとはそうだなあ……曲もそうだけど、僕はあんまりメッセージ性を持たせないので、単純にいい音の響きであったり、プレイして楽しい譜面が作れればいいなと思ってますね。そう考えると、思い出に残る仕事ってそんなにないかもしれません。美味しかったラーメンやビールは残ってるんだけど(笑)

少年B:

(笑) 毎日楽しく働いているんだなというのが伝わってきます。

Yamajet:

楽しくやってるのもそうだし、フリーランスだから、自分でぜんぶマネジメントできるので。会社員時代はそんなに仕事ができるほうじゃなかったので、みんなの足を引っ張ってしまったな、申し訳ないなって気持ちがけっこうあったんですが、今はやるもやらないも全部自分に返ってくる。精神的に楽になりましたね。