「フリーランスは専門性が必要な時代」と言われることが多くなりました。でも専門性っていったい何なんでしょうか。わたしはライターをしていますが、グルメに旅行におもしろ記事まで、書けそうなものは何でも次第に書いています。自分の専門性って何だろう……そんな悩みを持つフリーランスも少なくないはず。

そんなとき、ふと気付いたのです。「ニッチだけどオンリーワンなお仕事をしている人の生き方に、専門性を身につけるヒントがあるのでは?」と。

今回は音ゲー(音楽ゲーム)の作曲家・譜面制作者のYamajetさんにうかがった「好きが高じて職人技を身につけた話」をお届けします。

目次
僕のやってることは「仕事で遊び」
音ゲーの譜面制作ってどんな仕事なの?

僕のやってることは「仕事で遊び」

音ゲーの譜面制作ってどんな仕事? 音ゲーが好きすぎた結果、職人になった話
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

少年B:

Yamajetさんのお仕事について教えてください。

Yamajet:

大きく言えばフリーの作曲家ですね。音楽ゲームを中心に曲を作ったり、いくつかの会社で音楽ゲームのデータ、いわゆる「譜面」も作ったりしています。

少年B:

Yamajetさんはどういう経緯で音ゲーの作曲家になられたんですか?

Yamajet:

元々、趣味で同人音楽をつくってたんです。音ゲーが好きだったので、「BMS」というゲームとしても遊べるフォーマットで曲を発表していました。

大学を1年で辞めてフリーターをしていたんですが、BMS界隈で交友関係が広まって。当時所属していた同人音楽サークルのメンバーに誘われて、25歳のころ音響・音声制作会社に就職しました。主題歌やBGMはもちろん、SEや声優さんのアフレコまで、主に美少女ゲームの音声まわりを一括で請け負うような会社でしたね。

音ゲーの譜面制作ってどんな仕事? 音ゲーが好きすぎた結果、職人になった話
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

少年B:

会社員はどれくらい続けていたんですか?

Yamajet:

4年くらいですね。そこを辞めてからはフリーランスとして活動をしています。フリーになって今年で8年目になりますね。

少年B:

フリーの作曲家になって変わったことはありますか?

Yamajet:

正直、同人からはじまったので、やってることは昔から変わってないんです。営業活動もほとんどしてなくて。界隈の交友関係であったり、ゲーム会社の人が僕を見つけてくれたりして仕事につながっていくということがほとんどなので、正直「どこからプロになったのか」とか、「これは遊びなのか仕事なのか」とか、その境目がわからない感じはあります(笑)

将来について考えるのが苦手なので、「まぁ何とかなるだろう」って感じで、流れ流され今に至る、って感じですね。

音ゲーの譜面制作ってどんな仕事? 音ゲーが好きすぎた結果、職人になった話
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

音ゲーの譜面制作ってどんな仕事なの?

少年B:

音ゲーの譜面制作もされているとのことですが……どのようなお仕事なのでしょうか?

Yamajet:

譜面制作と作曲は、まったく別物なんです。基本的に、作曲者は譜面を作らないんですよ。一般的な音ゲーって、「もともとある音源にあわせて、流れてくるノート(音符)が判定ラインに合ったらボタンを押したり、タップする」って感じで遊ぶものが多いんですけど、そのノートの配置をするのが譜面制作ですね。曲に合わせて、音階を考えつつ、見た目や遊び心地を意識してノートを配置していく仕事です。

少年B:

見た目というのは?

Yamajet:

たとえば、「ドミソミド」という音があったとします。一度上がって下がる音階なのに、ノートが階段状に配置されていたら、ちょっと腑に落ちない感じがしますよね。「本当にこの音を叩いてるのか?」って不安になるというか。そういったことを考えたり、前後のフレーズを考えながら総合的にノートを配置していきます。

音ゲーの譜面制作ってどんな仕事? 音ゲーが好きすぎた結果、職人になった話
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

少年B:

なるほど! 譜面制作はゲームのステージをデザインするようなものなんですね。難易度の調整とかも、ノートが多くなると難しい、みたいな感じでしょうか。

Yamajet:

基本的に外注スタッフとして参加しているので、僕がレベルを決めるってことはないんです。ディレクターさんに「かんたん、ふつう、むずかしい」という感じでざっくりオーダーされることもありますが、こちらがおまかせで作ったものを会社さんが調整して出す、というパターンのほうが多いですかね。

少年B:

譜面制作が仕事になったのは、やはりBMSが大きかったんでしょうか。

Yamajet:

それが大きいと思いますね。BMSは『beatmania(ビートマニア)』という音ゲーを模したフォーマットなので、ボタンを押してフレーズを演奏するゲームなんです。そうすると、作った曲の音を切り取って、ボタンに対応させて、ゲームとして遊べるように組み上げる作業が必要になってくるんですよ。その組み上げる作業というのはまさに、いまやっている譜面制作そのものなんですよね。

音ゲーの譜面制作ってどんな仕事? 音ゲーが好きすぎた結果、職人になった話
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

Yamajet:

僕はBMSが楽しくてずっと遊んでいたんですが、いつの間にか経験を積んでいて、気づいたら仕事になっていた……という感じです。あの時、よくワイワイ遊んでいたBMS界隈の人たちも、気づけばみんな出世されていて……。

少年B:

界隈の人たちがみんな作曲家に……!?

Yamajet:

作曲家になる人もいますし、メーカーに就職してゲームを作る側に回った人もいます。みんなゲームが大好きな人たちですから。そこで、ふとした拍子に思い出してもらって、お仕事をいただけることも多いですね。

少年B:

BMSでの経験が譜面制作に活きて、人との繋がりが仕事になった、という感じですか?

Yamajet:

そうですね。BMSから始まって、同人音楽や即売会、ライブイベントやDJとかも含めて、界隈に顔を突っ込んでいって。またそれに関連する界隈にもまた顔を出してたら、作曲家だけじゃなくて、ムービーを作る人だったり、プレイヤーだったり、友達がめっちゃ増えていきました。そういう繋がりは、仕事面でも本当にありがたいなと思います。

音ゲーの譜面制作ってどんな仕事? 音ゲーが好きすぎた結果、職人になった話
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)