こんにちは。

先週の木曜日から金曜日にかけて、アメリカの株式市場で異常な動きが続きました。

つい最近まで時価総額1兆ドルを超える「1兆ドルクラブ」に属していたメタやアマゾンが、まるで上場後間もない新興企業のように、1日のうちに25%以上もの大暴落をしたり、13%台の急騰を演じたりしたのです。

米株市場の崩壊が始まった
pressureUA/iStock(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

1986年から株式市場を観察しつづけてきた私にとってもまったく経験したことのない、2営業日続きの大荒れ相場となったわけです。 私は、この乱高下はアメリカ株市場が本格的な崩壊過程に突入したことを象徴していると思います。

前例のない2日続きの大型株乱高下

まず、2月3日には、昨年末に社名をメタ(正式にはメタ・プラットフォームズ)に変更したフェイスブックが暴落し、たった1日でS&P500採用銘柄中90%以上の企業の時価総額より巨額になる2370億ドルを失うという大波乱がありました。

米株市場の崩壊が始まった
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

直前に発表した2021年第4四半期決算の内容があまりパッとせず、創業以来初めてアクティブユーザーの人数が減少に転じたことが嫌気されたと言われています。

それにしても、時価総額の4分の1以上を1日で失うほど大きな問題を抱えている企業には見えなかったので、市場の混乱は並大抵ではありませんでした。

上のチャートでもご覧いただけるように、去年の9月初めに史上最高値を付けてから、小波動ごとに下値を切り下げる展開が半年近く続いたあげく、この大暴落となったのです。

米株市場の崩壊が始まった
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

1月末からはやや上向きに転じた印象があっただけに、決算開示後のメタ大暴落はかなり経験を積んだファンドマネジャーたちにとっても想定外の事態だったと思います。

そして、その翌日、今度は直前に開示した決算がまあまあの内容だったアマゾンが、こちらは急騰となりました。

米株市場の崩壊が始まった
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

2月4日の終値ベースでは、前日比13.5%増の3153ドルとなり、その後の時間外取引では3171ドルまで続伸しました。

直近5営業日だけの株価推移を見ますと、前日だけはメタの大暴落に引きずられて下げていますが、1月中旬に下げたあとの回復過程からメタよりしっかりしていた印象があります。

米株市場の崩壊が始まった
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

3日にメタが失った時価総額も、4日にアマゾンが増やした時価総額も、1銘柄の1日の時価増減額としては史上最大だそうです。

27兆円とか25兆円といった数字は、国家予算以外ではあまり見かけないので当然かもしれません。

さて、アメリカを代表する株価指数であるS&P500株価指数は、今年の年初からどんな動きをしていたのでしょうか。

米株市場の崩壊が始まった
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

1月最終週にいたって、やっとそれまでのほぼ一本調子の下げから回復の兆しが見えてきた矢先の、藪から棒の乱高下だったわけです。

結局、4日のアマゾンが牽引した0.5%の上昇では、3日のメタが足を引っ張った0.85%の下落を取り戻すことはできませんでした。

なんだか、いつか見たことがあった景色だなあという気がします。

今年初の営業日だった1月3日にいともあっさりと史上最高値をつけてから、「もう4800台突破は時間の問題、今年中に5000の大台乗せもあるかもしれない」と強気筋が張り切る中でずるずる下げてきた経緯を見るにつけても、思い出したことがあります。

日経平均が3万9000円まであと85円に迫って、日本株関係者のみなさんがほぼ例外なく来年は4万円の大台乗せと期待しながら大納会を終えた、1989年末から翌1990年年初の雰囲気によく似ているのです。

史上最高値更新後の下げ幅としては、1990年年初の日経平均に比べてずっと小幅ですが、でも非常に気がかりなことがあります。

ハイテク株は、軒並み過去30日間で値下がりしている

次の表のうち、とくに右端の過去30日間の株価推移の欄にご注目ください。

米株市場の崩壊が始まった
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

30日間で値上がりした銘柄や品目は薄緑、値下がりしたほうはピンクのシェードになっているのですが、ご覧のとおりサウジアラビアの国営石油会社アラムコと、ウォーレン・バフェット率いるコングロマリット、バークシャー・ハサウェイ以外は全部値下がりしています。

つまり、これまで延々とアメリカ株の好調を引っ張ってきたハイテク・情報通信・ネット関連株が全滅だったということです。

もちろん、値下がり幅にはかなり大きな差があります。

米株市場の崩壊が始まった
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

こちらは、去年の大晦日、12月31日の株価を基準にしてそこからの変動率を示したグラフですが、代表的なハイテク7銘柄すべてが、値下がりしています。

もちろん、グーグル(上場持ち株会社名としてはアルファベット)のように0.58%の下落で済んでいる企業もあれば、メタやネットフリックスのように30%以上下がっている企業もあります。

下げ幅を1ケタに抑えられたグーグル、アップル、アマゾン、マイクロソフトは勝ち組で、2ケタになってしまったエヌビディア、メタ、ネットフリックスは負け組と言ってもいいかもしれません。

ただ、ハイテク・情報通信・ネット関連の大手が軒並み年初来丸1ヵ月を過ぎた時点で値下がりしているという事実の重みは、かなり大きいです。