実名報道をあえて選ぶのは・・・

英国では、事件・事故の被害者あるいは容疑者の実名や顔写真を報じるのが基本だ。

匿名報道は例外であり、例えば性犯罪の被害者や未成年の容疑者・被告、少年司法および刑事証拠法に基づき裁判所が実名報道を禁じる場合のみとなる。

犯行当時14歳の少年による痛ましい事件は、特に同年齢の子供を持つ親世代にとって大きな衝撃だったに違いない。

英国では近年、筆者が住むロンドン地域を含めて未成年者によるナイフ犯罪が大きな社会問題となっている。

なぜこのような事件が発生し、誰がどのような状況で犯行に及んだのかなどの事実関係をあいまいにしておいていいものだろうか。

筆者は氏名や顔写真を含む個々の事実、被告の事情、被害者の家族の思いを詳細に伝える報道には高い公益性があったと思う。

被告の少年の実名や顔写真を公にすることについて、「むごい」と感じる人もいるだろう。

しかし、痛みを伴いながらも個々の事実を共有することで、共によりよい社会を築き上げようとする英社会の努力の一環になるのではないか。

(「新聞協会報」1月1日付の筆者コラム「英国発メディア事情」に補足しました。)

文・小林 恭子/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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