英イングランド東部リンカーンシャーにあるリンカーン刑事法院で昨年11月8日、2020年12月に12歳の友人をナイフで刺殺した少年(犯行当時14歳)に対し、最低服役期間17年の無期懲役刑が宣告された。同時に、現在15歳の被告少年に対する匿名報道命令が解除された。

英国には18歳未満の被害者、証人、被告の特定につながる報道を禁じることを可能にする「少年司法および刑事証拠法」(1999年)がある。これに基づく裁判所の匿名報道令に対して、複数のメディアから解除を求める声が上がっていた。
ジェレミー・ベーカー判事は、被告の実名報道がナイフ犯罪の抑止、調査、原因究明に役立つと判断し、匿名令の解除を決めた。
解除に至るまでの経緯を辿ってみたい。
友人少年を森に呼び出した
事件発生は、20年12月12日。マルセル・グレシュ被告は友人ロバーツ・ブンシスさんをリンカーンシャー東南部の都市ボルトン近辺の森に呼び出した。
大麻売買の相談のためだったが、被告が被害者に会合時に渡すと約束していた50ポンド(約7800円)を提供しなかったことで口論が発生。被告はブンシスさんに70回以上ナイフを突き刺して殺害。首を切り落とそうとした跡もあった。
殺害から数日たった同20日、通行人がブンシスさんの遺体を森の中で発見した。
地元警察に逮捕された被告の少年に対し、陪審団は21年7月15日、殺人罪で有罪とする判決を下した。ベーカー判事は同年11月8日、最低17年間の禁錮刑を宣告。被告による殺害を「凶暴」「残忍」と評した。
被害者少年の実名、顔写真は大々的に報道された
被害者の実名・顔写真は量刑発表以前、公共放送BBCのニュースサイトを含む主要メディアに事件報道の一環として大々的に取り上げられた。
匿名令により実名報道は禁じられていたものの、被告の事情は裁判報道を通して広く知られるようになった。
被告はナイフ所持や麻薬売買などの理由で地元の学校を2度退学せざるを得なくなり、犯行後は特別の教育施設に通っていた。13歳当時から毎日大麻を吸引し、アルコール飲料を1日おきに摂取。部屋には大量のナイフがあり、これを使って大麻の塊を削るという壮絶な生活を送っていた。