回転が速くコロナの影響を受けにくいといわれているラーメンチェーン。前回の記事では、「一風堂」と「一蘭」について紹介した。今回は、「日高屋」と「幸楽苑」の業績を紹介する。
アルコール提供できず苦戦する日高屋
2017年からアルコールの提供を始めた日高屋。ちょい飲みができるラーメン屋でサラリーマンに人気だったが、コロナで酒の提供はできなくなった。ハイデイ日高 <7611> の2021年2月期売上高は295.6億円(前年同期422.1億円)、営業利益▲28.0億円(前年同期41.0億円)、経常利益▲27.8億円(前年同期41.1億円)、最終利益▲29.5億円(25.8億円)と売上を大きく落とし、赤字着地となった。
2022年第二四半期は、営業利益・経常利益・当期純利益ベースですべて赤字。第三四半期は営業利益ベースで31.0億円の赤字だが、経常利益が11.7億円、最終利益が7.6億円と黒字となっている。
ただ黒字になったのは時短営業協力金が入ったことによるものだ。2022年2月期の決算も最終利益ベースでは黒字化の見込みだが、金融機関は営業利益ベースで業績判断をするため、依然厳しい状態といえるだろう。
テイクアウトに力を入れていくというものの、アルコール提供で売上をあげていたこともあり、客足が戻るまで営業利益ベースで黒字になるのはなかなか厳しいかもしれない。
また日高屋がコロナ禍の影響を大きく受けた理由として、駅からのアクセスに便利な地域に出店していることが挙げられる。出勤がないリモートワーク期間中は客足が離れてしまうのだ。
立地面でもコロナ禍の影響は大きい。日高屋の店舗は総店舗数445店舗のうち1都3県に441店舗。首都圏600店舗を目指すという方針通り、首都圏に集中している。首都圏は、緊急事態宣言の影響も大きい場所だ。顧客ターゲットの変更や出店方針の検討も必要だろう。
2期連続赤字の幸楽苑
ラーメンチェーン幸楽苑を営む幸楽苑ホールディングス <7554>の21年3月期の決算は、売上高265.7億円(前年同期382.4億円)、営業利益は▲17.3億円(前年同期6.6億円)、経常利益は▲9.7億円(前年同期8.2億円)、最終損益は▲8.4億円(同▲6.8億円)と2期連続の最終赤字で着地。
2022年第2四半期は営業利益ベースでは依然9.7億円の赤字ではあるが、経常利益は5.2億円、最終利益は3.4億円に黒字化。2019年3月期上半期以来2期ぶりの黒字となった。イートイン以外の強化、新規事業の立ち上げ、固定費削減に努めている。
2022年3月期通期の最終損益は5億円の黒字予想。2022年3月期の決算予想は営業利益ベースで3億円の黒字を予想していたが、▲9.4億円の赤字に予想を引き下げた。
新型コロナウイルス感染症が終息せず、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の実施による営業時間短縮要請等が繰り返されたことで業績への影響が想定よりも長引いていることが要因とされている。
ラーメンチェーンの今後
回転が速く、コロナ禍でも影響を受けにくいといわれているラーメンチェーン。時短営業の協力金が入ることにより、最終利益は黒字化する可能性が高いが、営業利益ベースでは厳しい状況が続いている。
オミクロン株の流行でコロナの感染者が急増し、まん延防止等重点措置をとる都道府県が増えている。東京都は緊急事態宣言を検討していることから、さらに追い打ちがかかることが予想される。
このような状況下で生き残っていくためには、ラーメンチェーンは客単価を上げること、テイクアウトを増やすこと、人件費をはじめとした固定費を減らすことなど、課題は多い。厳しい状況をいかに打破できるか、企業努力が問われる。
文・勝目麻希
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