食べていくために、「食べていくことを考えない」
少年B:
手広くお仕事をされている地理人さんですが、その楽しさを教えてください。
地理人:
地図をベースに、新しい仕事が見つけられたら楽しいですね。「東京の地理の歴史を書いてください」って依頼がきても、ありがたいけどそんなにおもしろくはない。私より書ける人がいるでしょうし。でも、「地理を活かした研修」とかがきたら、おっ!てなりますよね。「そんな仕事あるんかい!」って(笑)
少年B:
それは確かにおもしろポイントですよね。「これで食べていけるぞ!」と思ったきっかけのお仕事はありますか?

地理人:
「これ!」という仕事はないんですが、2014年からいろんな仕事が蓄積されて、一定数貯まったタイミングですかね。取材、トークイベント、執筆、DTPデザイン、複数の仕事が重なって一気に来たタイミングがあって、その時に「もしかして仕事として食べていけるか……?」と思いましたね。
少年B:
仕事が複数くると「自分に需要があるんだな」って思えますね。
地理人:
あと、「複数ないと私の収入は成り立たない」って感じですかね(笑)
少年B:
地理人さんが今後、挑戦したい仕事や夢があれば教えてください。
地理人:
夢ではないんですが……。2018年くらいに企業の大きな仕事が途切れて、劇的に収入が下がったんですよ。そのあと持ち直した理由は企業案件の復活じゃなくて、書籍とグッズと展示なんです。
少年B:
違う仕事が入ってきたんですね! そして書籍にグッズに展示……クリエイターなら諸手を挙げて喜びそうな話です。

地理人:
それまでは「企業向けのお仕事がんばるぞ!」と思ってたんですが、それが途切れて、なんとなく作家っぽい仕事になってきてるんですよ。企業に呼ばれたワークショップでも「クレイジーな地理人の話」をしてくれと言われることが増えてきて。
そうすると、「食っていくために仕事のクオリティを上げる」よりも「食っていくことを考えない、私の衝動」の方が価値になり始めているんですよね。
少年B:
食べていくために、「食べていくことを考えない」という……。
地理人:
倒錯してますよね。
もっと空想地図を作る、展示を増やす。実績を積み重ねるよりも、そうやって「地理人」個人のインパクトを出していくほうがいいのかな、と思っています。

少年B:
最後に、「自分だけのスキル」を見つけたいフリーランスに一言お願いします。
地理人:
すでに自分の武器がある人は、それを突き詰めていくのがいいとは思います。
一方で「何もないなあ」と思ってる人は、ひたすら「他者との比較」をすることが大切だと思っています。自分の能力って、ほんと何気ないところにあるんです。自分が何気なくやってることが、周りの人にとってはすごいことだったりする。
少年B:
なるほど……。
地理人:
たとえば器用貧乏だったら、「他の人が手を出さない領域まで広げる」とか。そうすると「あんなことまでできるの!?」になるじゃないですか。
少年B:
確かに……。想像を超える幅広さは武器になる気がします。
地理人:
その強み1本で行けるかはわからないけど、何個か発見して、組み合わせてみれば食べていけるかもしれない。特技と掛け合わせることもできるかもしれません。
【記事のまとめ】
- 突き詰めるのではなく、さまざまな仕事に手を出すのもひとつの手
- 趣味でやっていたことをアウトプットすることで仕事になった
- 専門性は「プラグイン」としても活用できる
- 自分が何気なくやっていることが人にとっては「すごいこと」かも
(執筆:少年B 編集:イズミカズキ 撮影:じきるう)
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