「フリーランスは専門性が必要な時代」と言われることが多くなりました。でも、専門性とは、いったい何なのでしょうか。わたしはライターをしていますが、グルメに旅行におもしろ記事まで、書けそうなものは何でも手当たり次第に書いています。自分の専門性って何だろう……そんな悩みを持つフリーランスも少なくないはず。
そんなとき、ふと気付いたのです。「ニッチだけどオンリーワンなお仕事をしている人の生き方に、専門性を身につけるヒントがあるのでは?」と。
今回お話をお伺いしたのは、空想地図作家の地理人さん。「好きなことを仕事にできるとは思ってなかった」と語る地理人さんが、地図・地理を軸にさまざまなお仕事へつなげていく過程をお聞きしました。
目次
地図・地理をベースに10種以上の仕事を展開
7歳のころから「空想地図」作りを始める
地図・地理をベースに10種以上の仕事を展開

少年B:
地理人さんはどんなお仕事をされてるのですか?。
地理人:
はい、わたしは地図・地理系の自営業をしております。
少年B:
……すみません。仕事内容がまったくわからないのですが、具体的に教えていただけますか?

地理人:
ここ10年の仕事はこんな感じですね。複数の仕事を組み合わせて、なんとか自分一人くらいなら食べていけるかなといった感じです。
少年B:
めちゃめちゃ手広くお仕事をされている……! 「地理情報編集」ってのはどういうお仕事ですか?
地理人:
「エリアをどのように分けるか決める」というお仕事ですね。たとえばホテル予約サイトで行き先を選ぶときに、エリアを選択しますよね。
少年B:
「上野・浅草・両国」みたいなやつだ。そんなお仕事もあるんですね! あと気になるのは「アート関連」ですが……。

地理人:
空想地図をアートとして美術館に展示していただいてます。宮崎県の都城市立美術館や、昨年は東京都現代美術館にも出展しました。
少年B:
空想地図のアート出展……!? ますます地理人さんがどういうお仕事してるかわからなくなってきました……!
7歳のころから「空想地図」作りを始める
少年B:
空想地図についてお聞きしたいのですが、そもそもこれはどのようなものなのでしょうか??
地理人:
戦隊ごっこや砂遊びをするような感じで、7歳のころから実際には存在しない空想上の地図を作ってるんです。自分にとってはヒーローよりも地図が身近だったんでしょうね。
少年B:
地図を見慣れていた? 家にたくさん地図があったんですか?

地理人:
私は5歳のころに引っ越しているんですが、当時は1990年、まだインターネットがない時代です。そうすると、引っ越した瞬間に地図を買うんですね。
少年B:
あ! 新居の近くに何があるかわからないから!
地理人:
とりあえず紙の地図を買って、家族みんなでスーパーの場所とか確認するわけですよ。なので、非常に手の届きやすい場所に地図があったんです。
少年B:
わたしも地理人さんと同い年ですが、そういえば家には旅行用の道路地図が何冊かありましたね……!
地理人:
インターネット時代じゃないからこそですよね。郊外に住んでいたこともあって、目で見たさまざまなものを空想地図に落とし込んでいたんです。

少年B:
そうしてできあがったのが代表作の「中村市(なごむるし)」ですか?
地理人:
そういうわけではないですね、当時は思いつくままに好き勝手に描いていて、ぜんぜん1枚の地図としては完成しなかったんです。そこで、10代後半に「何かひとつ完成させよう」と思って、「中村市(なごむるし)」に絞りました。
少年B:
いまの「中村市(なごむるし)」のかたちが決まったのはいつ頃ですか?
地理人:
かたちは今でも決まっていないんです。定期的に描き直していて、毎回「これで終わり」と思っているんですが。描くたびに変わっているので、どうなるやら……。
少年B:
それは畑だったところにビルが建ったりとか……。
地理人:
そういう経年の変化ではなく、知識量の変化ですね。「この流れだと城下町のできかたは違うはずだよな……」とか気づくんです。だから、全体の構造は変わってないんですが、知識がつくたびにけっこうガラッと変わりますね。

少年B:
ちなみに、なぜ「中村市(なごむるし)」という名前なんですか?
地理人:
小5のときに転校してきた中村くんって友達がいて、彼も地図描きに誘ったら一緒に描くようになり……。で、ふと「名前もらっていい?」って聞いたら「読み方だけ変えて」と言われたので、「中村市(なごむるし)」になりました。
いまでは「中村市」のグッズが出たり、美術館に出展するまでになりましたが……。いや、だってまさかこんな話題になるとは思ってなかったので!
少年B:
(笑)
地理人:
個人でひっそり作ってるものだったので……。こうなるって知ってたら、少なくとも中村にはしなかったですね。