睡眠薬で意識が蘇る奇跡が起きました。
『Cortex』の11月号に掲載された論文によれば、重い脳障害によって8年間、無動無言症の状態にあった男性に睡眠薬として知られるゾルピデム(総称: マイスリー)を投与した結果、意識が覚醒し、自主的活動が再開されたとのこと。
しかし、いったいなぜ、睡眠薬が障害を負った患者に覚醒を促したのでしょうか?
目次
無動無言症は起きているのに意識が閉ざされている
6.7%の希望
睡眠薬が効いている間だけ覚醒できる
原因は脳の過活動
より長い効果を求めて
無動無言症は起きているのに意識が閉ざされている
8年前、20代後半だったリチャード氏はアルコール乱用の病歴があり、ある日喉を詰まらせて酸素不足に陥り、脳に重度の障害を負いました。
結果、リチャード氏は生きてはいましたが、もはや意図的に話すことも、食べることも、トイレにいくこともできなくなってしまったとのこと。
多くの場合、このような状態に陥った患者は同時に深い昏睡状態に陥りますが、彼は違いました。
リチャード氏が陥った状態は医学的に無動無言症と言われており、通常の人間のように眠ったり起きたりするものの、知的・意図的な動作が失われる、きわめてまれな状態だったのです。
知的・意図的な動作が失われた彼は、車椅子の上で栄養を供給するチューブと排せつ物を誘導するチューブにつながれたまま、回復の兆しが見えず、絶望的な状況でした。
そこでリチャード氏の家族は最後の方法を試すことにしました。
6.7%の希望
リチャード氏のような無動無言症に陥った人間は、6.7%という僅かな確率ながらも睡眠薬として知られるゾルピデム(マイスリー)を接種することで、意識を回復させることが知られていました。
そこで彼の主治医は、家族の同意の元、10mgのゾルピデムを投与しました。
すると奇跡が起こります。
ゾルピデムを投与されてから僅か20分でリチャード氏は自発的に話し始め、父親に電話したいと告げ、車椅子から立ち上がって歩くようにさえなったのです。
しかし、悲しいことに効果には時間制限がありました。