3.ヨーロッパのデルタ株、オミクロン株の予測の検証
フランス、スペイン、ドイツ、ベルギーの4カ国について、山火事理論を用いたデルタ株とオミクロン株の予測(本連載45)の検証です。下の図は、1月1日の予測と現在までのデータです。
スペイン以外は、まだピークアウトしていないので、確定的なことは言えませんが、山火事理論によるオミクロンの予測は、ピーク位置はほぼ合っているようです。ただ、大きさは大分データからずれてきています。
山火事理論では、初期状態を決めてやると、ピークアウトの時期、大きさ、その後の収束が決まってしまいますが、これら4カ国の初期状態は、オミクロン株の立ち上がりの初期1月1日までのデータで決めたもので、その不確定さが大きく出たものと思われます。
この点を考慮すれば、山火事理論の予測性能は良好です。今後、定量的に検証していきます。
4.日本のオミクロン株の予測
図3に日本のオミクロン株の予測(1月23日再計算)を示します。
左図上が実効再生産数Rtのデータ(青)と予測値(赤)、陽性者データの微分値(緑)と予測値(水色)。左図下が線形表示での新規陽性者のデータ(青)と予測値(赤)。右図は対数表示で、新規陽性者のデータ(赤)と予測値(黒)、死亡者のデータ(青)と予測値(黒)、60歳以上の新規陽性者のデータ(緑)と予測値(橙)。左右の図とも山火事理論の陽性者の予測線には理論に基づく系統誤差(朱)が示してあります。
予測線は、陽性者の急上昇が一段落した後の1月23日までのデータで初期条件を決定したものです。この図ですと、ピークアウトは2月10日、ピーク値12万4千人の陽性者で、その後収束という予測です。(前回1月7日の予測の約2倍です)
陽性者数の微分値(緑)をRtとの比較のため表示しています。Rtに表れている今回の鋭いピークは、陽性者数の1月初めの垂直上昇とその後の少し緩和した上昇を反映したもので、ピークアウトの先行指標ではありません。これも誤解を生む指標です。
一方、微分値の振舞いは、その定義通り、ピーク位置が変曲点、ゼロ切る点が陽性者のピークを表しますから指標としては明確です。
今回、山火事因子Y(t)というものを定義しました。
山火事理論では、「燃えやすい所が燃え尽きる」という仮説に基づいていますから、ひとつの山で感染者総数S0が全体を規定します。数値解法では、このS0を逐次代入法で自己無撞着に解きます。D(t)を日毎の陽性者数とすると、Y(t)は感染可能な残り人数を、感染者総数S0で1に規格化して表しています(朱破線)。
現在の予測でオミクロンでの総数S0が455万人、現在までの陽性者55万人で、一割強落ちています。例えば今後、無作為サンプリングでPCR検査をすると、この因子に従って陽性率が下がるはずです。
図3左では、RtとY(t)の下降の様子は相似ですが、あくまでも山火事因子が原因(メカニズム)で、Rtはその結果です。Rtを基に予測を行うと、データ解析やAI予測になってしまいます。この場合、モデルがないのでメカニズムの議論はできません。
その結果、「なぜ下がったか理由が分からない」という発言になります。また、予測が外れた場合の原因検証は、モデルの発展には必須のものですが、モデルがない限り、予測が外れた原因をいくら推測しても、その知見を使って、次へ発展させることができません。
世界的な新型コロナ感染拡大には、各国の国情の違い、対策の違いが甚だ大きいにもかかわらず、変異株毎に感染が拡大して必ず収束し、更に、その高さはまちまちであるものの、ピークの半値幅はほぼ同じ値を示す、という事実が観測されています。ここには何らかの法則、メカニズムがあるはずです。今回、山火事因子Y(t)というものを定義できるようになったこと、これがまず第1歩です。