もくじ
ネタ作家は「芸人の3倍嬉しい」
自分の強みは「修正された欠点」にある

ネタ作家は「芸人の3倍嬉しい」

少年B:

営業はどうしているんですか?

芝山:

営業はしたことないですね。TwitterのDMで直接依頼が来たり、ネタを作った芸人さんから、また別の芸人さんを紹介してもらったり……みたいな感じです。

少年B:

ネタ作家としての収入は、芸人さんのネタ作りがメインなんですか?

芝山:

いえ、収入の柱は企業さんのお仕事が6割で、芸人さんのネタ作りは3割程度です。企業のお仕事は、アイドルやYouTubeタレントさんなどのお笑いコンサル的なやつですね。「この子らにお笑いテクニックを教えたってください」みたいな。

使ってる時間でいうと芸人さんが一番多いんですけど、お金がたくさんある芸人さんってそうそういないんで、なかなか金額を上げづらい部分もあります。

少年B:

仕事内容の割に金額は上げづらいという……。

お笑い界のゴーストライター!?「ネタ作家」に聞いて分かった、自分の“おもろい部分”の引き出し方
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

芝山:

そうですね、周りにも「もっと金額上げたら」って言われるんですけど、それはなかなか難しいんで。でも、自分の作ったネタでその芸人さんがテレビ出てたりするとやっぱ嬉しいし、賞取ったとか報告してもらえることも多いんで、そういうやりがいがありますね。

ネタの打ち合わせの場で正解出したら1回笑ってもらえて、打ち合わせ終わりに「ありがとうございました」って感謝される嬉しさがあって。そんで後から「ライブでウケました!」「賞レースで1位になりました!」って連絡が来たら、また嬉しいですよね。

だから、芸人やってたころよりネタ作家のほうが、楽しいとか嬉しいって思う回数は多いですね。芸人の3倍嬉しいです。

少年B:

お笑いを通じて、人を幸せにしている実感があるんですね。

芝山:

あと、自分はネタ考えるのは好きなんですけど、ネタの練習するのはしんどいなーと思ってて(笑) なんで、自分にとって芸人の楽しい部分だけ残したら、いまの仕事に行き着いたって感じです。知らん人と会うのもスリルあっておもろいですし。

自分の強みは「修正された欠点」にある

少年B:

依頼者を分析してネタを作ってきた芝山さんですが、もし「自分の個性や専門性がわからない」って相談されたらなんと答えますか?

芝山:

まずは、「過去を振り返る」ってことですかね。たぶん、自分の過去を振り返ってみると、外からの圧力によってめちゃめちゃ修正された箇所があると思うんです。「それは変やで」とか「もっとこうしなさい」「ちゃんとしなさい」とか、周りから注意されて直したポイントが。

そこにスポットライトを当ててみて、「どうしたらそこがプラスになるか」を考えてみたらどうやろうと思うんですよね。

お笑い界のゴーストライター!?「ネタ作家」に聞いて分かった、自分の“おもろい部分”の引き出し方
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

少年B:

確かに、自分も社会に出るために直した部分ってたくさんありますね……!

芝山:

でも、そこで消されたのは個性で、実はその人の強みだったりするんですよ。たとえば話が下手で、本題に関係ない描写が多い人がいたとします。でも、そういう人が桃太郎の話をしたらどうです?

「おじいさんは大きく伸びをしてから包丁を右手で持って桃の正面に立ちました」とか、いちいち全部細かく言うていったらネタになるじゃないですか。

少年B:

……なるほど!

芝山:

そういう自分の個性を活かして、それをプラスにしてみるってのがええんちゃうかなと思います。

お笑い界のゴーストライター!?「ネタ作家」に聞いて分かった、自分の“おもろい部分”の引き出し方
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

芝山:

あと、実はもうひとつ別の考え方があるんですけど。

少年B:

なんでしょう?

芝山:

以前コンサルで「人と話せない」って女性と話したことがあったんです。「みんな私のことを『ブスが喋んな』って思ってるから話せないんです」って。自分はぜんぜんブスじゃないと思ったし、自信付けたら直るんちゃうかと思って「あなたはきれいだよ、俺は味方やから」と言うてたんですけど、ずっと平行線で。

少年B:

なにかのトラウマがあったんでしょうか……?

芝山:

でも、こんなに思い込むのっておかしいなと思って、聞いたんですよ。「もしかして、街中で自分より容姿が劣ってる人がおったら『ブスが喋んな!』って思ってない?」って。

少年B:

えっ!?

お笑い界のゴーストライター!?「ネタ作家」に聞いて分かった、自分の“おもろい部分”の引き出し方
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

芝山:

そしたら「思ってます」って言うんですね。これ究極やなと思って。人間って周りの人間も自分の感覚で生きてると思い込んでるんやなってことがわかったんですよ。

人に対して攻撃的な言葉を吐くと、周りの人も自分に対しても同じ言葉で攻撃してると思ってしまう。言った言葉は返ってくるって言うけど、まさにその構図やなと。

少年B:

それで、芝山さんはどうしたんですか?

芝山:

そう思うのはもう、そういう視点ができてるからしゃあない。だから、「ブスが喋るな」と思った瞬間に「せやけど服はちょっとかわいいやん」って思おうって言うたんです。そしたら周りの人の自分に対する視点も「あなたブスやけど、服はちょっとかわいいやん」になるから。そうしたら後日、それがキッカケで「人生が変わった」って言ってもらえた。

自分が芸人のときも、人のネタ見て「何や、ありきたりなネタでおもんないな」とか思ってたわけです。だから「斬新なことせなあかん」と思って、それでお客さんや同業者からも同じこと思われてるって錯覚してて、そのプレッシャーに負けたりもしてて。

少年B:

自分の考えが変われば、人への見かたも変わってくるというか……。

芝山:

そうなんです。周りを否定する心が自分にあるから、自分自身も苦しめられているって場合がある。なので、「個性や専門性がなきゃいけない」って思うのも、もしかしたら同じことかなと。「個性や専門性が求められることもある」程度にしてると、自分も楽に踏み出しやすくなるんじゃないかな。

だから、考え方を変えてみるのもひとつの方法ちゃうかな、と思いますね。

【記事のまとめ】

  • 好きなものについて理論的に考えておくことが大事
  • 積み重ねた実績が信用になる
  • ただし、相手に認めてもらわないと本当に信頼されるのは難しい
  • 消された個性にもう一度光を当ててみると、長所になるかも
  • 「専門性が必要」という考え方を変えてみる

(執筆:少年B 編集:泉 撮影:じきるう)

提供元・Workship MAGAZINE

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