もくじ
「その人を知る」ことがネタ作りの最初のステップ
ネタ作りは依頼者の「おもろい」を当てる作業
「その人を知る」ことがネタ作りの最初のステップ
少年B:
ネタ作家のお仕事について、もう少し詳しくお聞きできればと思います。先ほど「3時間で1本ネタを作る」というお話がありましたが、具体的にはどのようにネタを作っていくんですか?
芝山:
ネタ作りの依頼があったら、まずはそのコンビの良さを深掘りするようにしてます。

少年B:
深堀りというと……?
芝山:
3時間の打ち合わせの中で、最初の1時間はガッツリ質問しまくります。いままでどういうことで怒られてきたのか、どういうところを褒められてきたのか、どういうことに怒るのか、学生のころどうやって友達を笑かしたか、みたいな。
たくさん質問する中で、相手の人格をはっきりさせていくんです。そのうえで、そのコンビのやりたいことと、これやったらおもろいんちゃう?ということをすり合わせてネタを作っていきます。
少年B:
なんだかカウンセラーみたいですね!
芝山:
そうなんですよ。でも、初めのころはめちゃくちゃ勘違いしてましたからね。最初の半年はずっと失敗し続けてきて。

芝山:
芸人さんも「このネタおもろいっすね」とは言ってくれてたんですけど、正直当たる確率が低くて。依頼者の良さを引き出して、お客さんにおもろいって思われるネタを作らなあかんのに、当時は「自分がおもろいと思うことをやらしてた」んですよね。俺はこの仕事を、自分の才能を見せつけるための手段にしてるって気付いたんです。
そこからは反省して、相手をよく観察するようになったし、ちゃんと納得してやってもらえるように言い方にも気を付けるようになりましたね。
ネタ作りは依頼者の「おもろい」を当てる作業
少年B:
3時間でネタってどんどん思いつくものなんですか?
芝山:
僕はこれめっちゃ早いんですよね。普通はまぁ1~2週間くらいかかるらしいんですけど。ネタ作る早さには自信持ってますね。だからこの仕事が成立してるというか。
少年B:
芸人としてネタを作っていたときと、ネタ作家として人のネタを作っているのでは、心境や手法に違いはありますか?

芝山:
芸人は自分の「おもろい」を追求していくので、自分の感覚がしっかりあるんですよね。急に自分の好きな食べものがわからなくなることって、ないじゃないですか。
でも、ネタ作家は依頼者がどういうネタが好きなのかっていうのを、当てにいかなきゃダメなんです。「魚好きなんです」って言われて、煮つけなのか焼き魚なのかお寿司なのか。お寿司でも、回転寿司と高級店ではまた違うじゃないですか。限られた時間のうちに正解を出さないといけない。
少年B:
それこそ、料理を片っ端から作って試食してもらうような作業ですもんね。大変だ……!
芝山:
極端な話やけど、最後の15分まで一切当たらなかったこともありますね。めっちゃ汗かいて、「ヤバいヤバいヤバい」ってなって。途中トイレ行く振りして鏡見て「俺は出来る、大丈夫や」って暗示かけて帰ってきたりとか。

芝山:
それで、最後の15分でできたネタを話した瞬間爆笑されて「それめっちゃおもろいですね!」って言われて、「よっしゃこれや!」って一気に書き上げて。あれはホンマに焦りました……(笑)
少年B:
想像すると胃が痛くなりますね……!
芝山:
それこそ初対面の芸人さんにもネタを提供することもあるので、そんな人らも笑わせないといけない、っていうのは難しいところですね。最初はみんな敵みたいな顔してますから。
少年B:
え? 依頼者が敵みたいな顔を!?
芝山:
疑心暗鬼ですよね。「お前ホンマにおもろいんやろうな?」みたいな顔して来る人が多いです(笑) でも、1回笑かしたら「おもろいやんけ」ってなって、すっと内側に入れてもらえるというか。
やっぱり信頼してもらえないことには、どんな言葉も響かないんでね。そこまでがしんどいところではあります。