Q7. もうかる企業もありますね?
電気自動車は脱炭素化でもうかる数少ない産業ですが、去年のテスラの販売台数は93万台。全世界で1000万台売るトヨタの1割にもなりません。自動車は衰退産業なので、今より大きくなることはありえない。
水素やアンモニアでもうかるのは、その設備をつくる会社だけで、それを使って発電する会社は、1キロワット時あたり約100円の水素を燃やして、20円以下の天然ガスと同じ電力をつくるので、大幅な赤字になります。政府がその損を埋める巨額の補助金を出さない限り、ビジネスとしては成り立たない。
Q8. 経済は成長するんでしょうか?
IEAは、2050年にCO2を「ネットゼロ」にするには、毎年4兆ドルのコストがかかると試算しています。これは世界のGDP(国内総生産)の5%ですが、リターンは気温が1.5℃下がるだけ。つまり脱炭素化で成長率は5%下がるのです。これが30年続くと、GDPは80%下がります。
政府が考えるべきなのは、そのコスト負担をどう公平にするかということです。「グリーン成長」などという幻想をふりまくから、脱炭素化で成長できると錯覚した企業が化石燃料投資をやめ、インフレが起こっているのです。
Q9. では政府も日経新聞も「脱炭素化で成長する」というのはなぜでしょうか?
経産省や環境省にとっては、脱炭素化にばらまく補助金を獲得でき、日経新聞にとっては脱炭素化の広告を取れるからでしょう。それにあおられて脱炭素化に投資した企業が莫大な赤字を出しても、それを救済する数十兆円の財源はありません。
民主党政権のやった再生可能エネルギーの固定価格買い取り(FIT)は大失敗だったので、岸田政権は二度とやらないでしょう。ガソリンが170円になったぐらいでビビる政権が、ガソリン価格が何倍にもなる炭素税をかけることはありえない。
Q10. 脱炭素化は必要ないんでしょうか?
気候変動対策は必要ですが、日本がCO2排出をゼロにしても、地球の平均気温は0.01℃も下がりません。排出量を急激に減らそうとすると莫大なコストがかかりますが、今回のガソリン騒動でわかったように、それは政治的に不可能なのです。
「グリーン成長」などという幻想を振りまくのをやめ、脱炭素化のメリットだけではなくコストを正直に明らかにし、どれぐらいコストを負担してもいいかという費用対効果を国民が判断すべきだと思います。
文・池田 信夫/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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