動物のはく製や動植サンプル、岩石など470万点の標本を収蔵する国立科学博物館が、デジタル技術を用いてコレクションを紹介する取り組みを検討しています。大英自然史博物館なども実施しているこの取り組みは、人類共通の資産を活用するための新たな動きとして注目を集めています。

国立科学博物館が中長期的な運営方針である「科博イノベーションプラン」を発表しました。収蔵されている多種多様な標本について、仮想現実(VR)を活用して、展示を行ったり学習を促したりします。SNSを通じて外国人観光客をはじめとして海外に向けても積極的に情報発信することで、国内はもとより訪日外国人にも魅力のある施設となり、来館者300万人の実現を目指すというものです。

こうした取り組みの中心となるのが新たに発足した「科学系博物館イノベーションセンター」です。ロケツーリズムとの連携や、専門人材の活用などを通じた収入源の多角化や安定化を目指したり、海外への発信や外国人観光客も過ごしやすい快適な館内環境の整備など、インバウンドマーケティングにも取り組んだりする同組織ですが、注目は標本や展示資料のデジタル化と活用をうたっているところでしょう。

標本470万点のデジタル化を目指す、その先には学習支援や商用利用も

国立科学博物館のコレクション数は約470万点に上りますが、その多くは茨城県つくば市の収蔵施設で保管されており、上野本館で展示されているのは1万点程度に過ぎないといいます。

こうした眠っている標本の活用に向けて、まずは収蔵されたままの多くの標本資料についてデジタル化、アーカイブ化を進めます。さらに、公開と二次使用のための規則を整備して、研究やビジネスなどさまざまな活用を促すためのワンストップサービス(手続き一本化)の実現を目指すとしています。国立科学博物館が構築を目指すデジタルアーカイブには、各地域の博物館からのデータなども蓄積できるようにするそうです。

こうしたデジタルアーカイブが完成すれば、例えば、教育の現場なら、実物の標本に基づいた科学的に正確な恐竜の化石のデータを基にして、3Dプリンターで化石の模型を作り出し、実際に教室で手に取って形状を確認するといった使い方ができるでしょう。

商用利用でいえば、動植物のデータを活用して、衣料品や雑貨をデザインしたり、アプリやゲームソフトなどに登場させたりといった方法がありそうです。コレクションが増える中での収蔵スペースの確保と、展示も含めた標本の活用という課題は、洋の東西を問わないかもしれません。収蔵する標本をデジタルアーカイブ化する動きはすでに国外でも出ています。代表的な例は、英国にある大英自然史博物館でしょう。

大英自然史博物館は8,000万点のデジタルアーカイブ化を推進

1881年に開館した大英自然史博物館が所蔵する標本数は約8,000万点。『種の起源』を書いたチャールズ・ダーウィンがガラパゴス諸島で採取した鳥の標本など、貴重な資料が所蔵されています。同館では現在、こうした膨大な標本のデジタルアーカイブ化を進めています。

デジタルアーカイブ化に際しては、X線顕微鏡を使って標本の撮影を行うことで、内部構造を含めた3Dデータが再構築されます。こうして生み出された3Dデータを観測することで、例えば、魚の標本の中に魚がいたといった発見があるといいます。

こうしたデータを集約し、検索したりダウンロードしたりできるウェブサイトには現在、古生物関連のデータが約43万点、鉱物学関連のデータが約36万点、植物学関連のデータが約76万点、昆虫学関連のデータが約150万点、動物学関連のデータが約130万点集まっており、合計で440万点を超えるデータがオンライン上で利用できるそうです。

場所も時間も超えて集められた莫大な知識の宝庫を活用する――世界各地の博物館で進むコレクションのデジタルアーカイブ化に注目です。

文・J PRIME編集部/提供元・J PRIME

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