千葉県印西市のとある農園を訪れたfledgeメンバー。緑いっぱいの景色と虫や鳥の声に癒やされ、時間がゆっくりと流れているようです。
 

農園の方に案内されるままに進んでいくと、収穫された野菜がたくさん並んでいます。「よかったら食べてみてくださいね」と促され、モシャモシャと野菜をかじります。
 

採れたての野菜の甘み(わさび菜なのに甘い!)を堪能し、思わず笑みが…とそこへ、「今農作業を終えて来ました」と言わんばかりの爽やかな笑顔に農作業ルックの女性が!
 

 この方こそが今回の主役、TUMMY株式会社の代表、阿部成美さん。普段は畑や地域のブランディングのお仕事をされながら、週に1回は畑に来て農作業をする“週1ファーマー”として働いているのだそう。そんな阿部さんの、畑への愛に興味津津の我々は、勢い余って畑まで会いに来ちゃいました。
 

阿部成美(あべ なるみ)

2014年京都大学農学部卒業。畑や農産物の埋もれる魅力を発信できる人になりたいと決意し、修行のため株式会社博報堂に入社。ブランディング専門チームにて畑を会議室として捉える「竹林アイデアソン」など、独自の視点でプロジェクトを主導。2019年TUMMY株式会社を設立。同年4月『yasaicco』をリリース。一番好きな野菜は『あやめ雪かぶ』。

旬を生活に取り入れると自己肯定感が上がる

川西: 本日はよろしくお願いいたします!早速ですが、阿部さんが始められた『yasaicco』とはどんなサービスなのですか?

阿部: 『旬のかわいい野菜を週に一回お届けする出張八百屋』です。

川西: めちゃくちゃわかりやすいですね!

阿部: 「旬のリズムと生きていく」これが『yasaicco』のスローガンなのですが、日々暮らしていて、今何が旬かってわかりますか?

川西: うーん。。改めて考えてみると、わからないです。

阿部: 今の農業は、いつでも何でも収穫できるように改良されて、すごく便利なんですが、そうなると“旬”に目を向けることってなかなかないですよね。でも野菜って、旬のタイミングで食べるのが一番うまいんです。「その一番うまいタイミングで野菜を食べてもらいたい!」そんな想いからこのサービスを始めました。

川西: 旬を生活に取り入れることでどんな良いことがありますか?

阿部: 「これを食べたらかんばれそう!元気がでそう!」と思うような瞬間が日々の生活にちょっとでもあれば、充実感があるし、自己肯定感も上がると思うんです。
なので、『yasaicco』では、今の旬を一種類だけ「これです!」とセレクトして毎週、違う子をお届けしています。

川西: 今、「子」って言いましたが、阿部さんにとって野菜って子どものような存在なんですか?

阿部: 子どもなんて言ったらおこがましいです!(笑)。でもとにかくかわいい存在です。かたちのへんてこなものとか、初めて知る種類のものとか、畑にいる野菜たちは、個性に溢れていて本当にかわいいんです。出荷されていくときには「いってらっしゃい~!」って手を振ってしまうくらいです(笑)。

川西: 阿部さんの野菜への愛、想像以上です!
 

野菜に気づかされる個性の魅力

川西: 阿部さんは畑の魅力ってどんなところだと感じていますか?

阿部: 畑にはいろんな気づきがあるところです。例えば、「人間って自然に生かされているんだ」ということにも気づかされます。畑では、人間の力でどうしようもないことが起こるんです。一生懸命育てた野菜がイノシシに襲われて収穫ができなかったり、天候に左右されたり。いつも人間の思い通りにはならないということを、畑では受け入れるしかないんです。

川西: 人間の“都合”よりも自然の力の方が大きいことを実感しますね。

阿部: ありのままを受け入れるということも畑から学ぶことができます。畑の野菜たちは本当に個性的で、同じ畑で育っても一個一個が違います。その個性的な姿が本当にかわいくて、これは人間に置き換えてもそうだと思うんです。

川西: なるほど、人間の個性も魅力的ですね。

阿部: 畑に来ている人にもいろんな人がいて、バックグラウンドも人それぞれです。そんなみんなの個性が、育てる野菜にも出ているような、そんな気もしますね。
 

川西: 都会で仕事に没頭していては気づけない価値観に触れることができるんですね。

阿部: 農業の常識として、収穫された野菜はAとBに分けられます。Aはかたちがきれいに整っているもの。Bは規格外とされる、へんてこなかたちのものです。農園の中では長い間、Bの野菜には価値がないとされてきました。でも『yasaicco』は、Bとされる野菜も商品として出荷しています。

川西: たしかに、スーパーに並んでいる野菜は、どれも同じかたちです。

阿部: 私はAもBもなくて、ひとつひとつが全部違うと思っています。世の中に例えれば、大学卒正社員は“A”で、そうなるのが当たり前のような風潮になっているけど、畑には学歴とか肩書とか関係なく、いろんな人がいるという感じですね。

川西: 畑に来ると、「人間も自然体でいいんだ」と思える感覚はありますね。

報酬は採れたて野菜!「週1ファーマー」という働き方

川西: 阿部さんは現在、週1ファーマーとして働いていますが、週に1回畑に来て農作業をするのはどういった感じですか?

阿部: めちゃくちゃおすすめです!土を踏む感覚もとても新鮮ですし、畑にいる多様な人たちからも発見があります。もくもくと作業をすると頭のリフレッシュにもなるし、東京で疲れた人はみんな畑に来ればいいのに!と思ってます。何人か知り合いが畑に同行したことがあるのですが、「日々の食事のありがたみを実感した」という声や、「心身ともにリフレッシュになった」と言ってくれる人が多いですね。

川西: 良い切り替えにもなりそうですね。

阿部: 私も、普段の仕事にのめり込んでいる自分を、畑に来ると俯瞰することができます。「今焦っていたけど、なるようにしかならないよね」とか、自分を客観視できる時間でもあります。あと、雑草が生えている場所のほうが強く育っている野菜もあったりするんですけど、それを見て、「そうだよな!人間も、過酷な環境のほうが伸びるもんな!」とか思えたり。
 

川西: 畑に勇気づけられたりもするんですね!阿部さんはやっぱり、毎日旬の野菜を食べていますか?

阿部: 食べていますね。私は、週1ファーマーとして働いた報酬は、野菜でいただいているんです。元々は時給でという話もあったのですが、「お金をもらって東京のスーパーで野菜を買うのはいやだ!」と思い、金額分を野菜に代替してくださいとお願いしました。今日もたらふく持って帰ります!

川西: そんなにたくさんもらえるんですか?

阿部: 1週間分の野菜をいただくので、大きいバッグにパンパンに野菜をもらって成田エクスプレスで帰っています。幸い、成田帰りの人たちの荷物の多さに紛れるので助かってます(笑)。お腹がすいて途中でかじったりすることもありますね。

川西: 採れたて野菜を丸かじりって良いですね~!

阿部: 夏は、採れたてのトマトをかじりながらここで作業するのが今から楽しみです!

“お腹からの感動”をもっと広めたい

川西: 最後に、阿部さんの今後のビジョンについて聞かせてください。

阿部: 畑には、本当に多くの気づきがあるので、個性的な野菜を知って、「畑に来たい!」と思ってくれる人が出てきたら良いなと思います。それと同時に、「お腹から感動する」というのが会社のビジョンなので、暮らしの中に旬のものを取り入れるという文化がもっと広がってほしいなと思います。

川西: 「お腹から感動する」とは具体的にどういうことですか?

阿部: 淡々と生きるより一個一個に感動できるほうが幸せだなって思っていて、3回食べるご飯の1回でも「うまい!」っていう感動がある、そういう暮らしのことですね。

川西: 暮らしの充実に“食”は欠かせないものですね。

阿部: 『yasaicco』は、今コミュニティ向けに展開していますが、個人にもサービスを提供できるように、『ご飯会』をやっていきたいと思っています。毎週の配送はいらなくても「旬のもの食べたい」と思っている個人を集めて、旬に触れる機会を提供していきたいです。では、そろそろ農作業に戻ります!

川西: 今日はありがとうございました!いってらっしゃ~い!
 

文・川西里奈/提供元・Fledge

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