たった1%の「伝え方の違い」が大きな差を生む

(画像=THE21オンライン)

今や日本にいても外国人とのコミュニケーションが欠かせなくなっている。では、英語で「伝える」際に注意すべきこととは。ゴールドマン・サックス、マッキンゼーにて活躍し、近著『1%の違い 世界のエリートが大事にする「基本の先」には何があるのか?』にて英語でのコミュニケーションのコツを明かしている戸塚隆将氏に、英語での「伝える力」について教えてもらった。

「ペラペラを目指す」のがそもそもの間違い

私たちは英語が「ペラペラ」になることに憧れる。だが、それがそもそも間違いなのだと、戸塚氏は指摘する。

「たしかに、ネイティブの英語を耳にすると、『かっこいいなぁ』と聴き惚れてしまうこともあります。しかし、ネイティブのような英語力を、ネイティブでない私たちが習得するのは土台無理なことだと認識すべきでしょう。ノンネイティブは、ネイティブには一生なれないことを早い段階で自覚し、別のゴールを設定する必要があります。

ノンネイティブが目指すべき英語力のゴールには四つのキーワードがあります。それは『意見』『論理』『堂々』『シンプル』。つまり、明確な意見、それを支える論理、それらを大きな声で堂々と、シンプルな表現で話すことです」

戸塚氏がそう考えるようになったきっかけは、ゴールドマン在籍時に出会ったある日本人上司の存在が大きいという。

「この方は帰国子女ではなく、日本で教育を受け、日本で就職をしています。20代になってから本格的に英語の勉強を始め、30歳前後で留学をされました。

その方はノンネイティブとして英語を習得されたので、ネイティブスピーカーのような英語を使うわけではありません。ただ、明確な意見を、論理的にシンプルな表現を使って、大きな声で相手の目を見てゆっくりと話す。その堂々とした姿は、存在感で他を圧倒していました。私たちの目指すべき英語は、まさにこのような姿です」

ネイティブのスピードに引きずられてはいけない

では、具体的にどんなことを意識して話せばいいのか。まず心がけるべきは「話すスピード」だという。

「ネイティブスピーカーと英語で話すとき、私たちはつい、相手の話すスピードに合わせてしまいがちです。ただ、ネイティブと同じペースで話すのは容易ではありません。相手に合わせているうちに自分が何を言ってるのかわからなくなり、焦ってしまうことになります。

リスニング力を高めることは訓練すれば誰でもできますが、英語を話すことに関しては、私たちノンネイティブは限界があることを知るべきです。

ネイティブのようにペラペラとスピード感を持って話すことより、前にお話しした四つのキーワードに磨きをかけることを優先したほうがいいでしょう。明確な結論とそれを支える根拠がしっかりある主張なら、日本語アクセントの残る英語でも、会議で存在感を発揮することは可能です」

ジャック・ウェルチの「簡潔に伝える力」

英語で伝える技術,戸塚隆将
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そのうえで、話したいことをなるべく「簡潔に」まとめる。よく言われるように「結論から話す」ことが基本だ。

「ビジネスでは、結論から端的に述べたほうがいいのは日本語も英語も同じです。ところが、英語をよく勉強している日本人が英語で話すときについやってしまいがちなのが、だらだらと長くしゃべってしまうことです。

聞いているほうは『結局何を言いたいの?』『早く結論とその根拠を言ってくれないかなぁ……』と不満を募らせているものです。ひどい場合には、『この日本人は英語は得意だけど、一緒に仕事をするビジネスパーソンとしては失格だな』といったマイナス評価を下されている恐れもあります」

「簡潔に伝える」ことに関して、印象に残っている事例があるという。

「数年前、CNNのニュースで、GE元会長兼CEOのジャック・ウェルチ氏がインタビューに答えた際のことです。インタビュアーの『米国は中国の躍進をどう受け止めればいいか?』という質問に対し、ウェルチ氏は間髪入れずにこう言っていました。

『Opportunity.』(チャンスだよ)

続けて理由を問われると、もうひと言加えました。

『Huge market.』(大きな市場だからね)

究極にシンプルなメッセージでありながら、結論と根拠が実に明確です。本質を突いた返答で、長々とした説明より視聴者の印象に強く残ります」

「So-so」は不愉快な表現!?

四つのポイントを意識し、結論から話す。これが伝わる英語の基本だが、「言い回し」にも気をつけるべきだという。例えば「So-so」は、日本人が多用しがちだが、ネイティブスピーカーはめったに使わないそうだ。

「私もこの表現を便利だと頻繁に使っていた時期がありました。留学していた頃、食事に連れて行ってくれた現地の友人に味はどうだと聞かれ、『So-so』と答え、次に同じような場面で同じ返答をしたところ、『お前はいつもSo-so だな。いいのか悪いのかどっちなんだ?』と突っ込まれ、呆れられてしまったことがあります。

ネイティブにとっては『まあまあ』というより、『どうでもいい』『関心がない』というニュアンスに聞こえます。『So-so』は多用し過ぎると相手に不快な印象すら与えてしまいかねない、実に危うい表現なのです。

そもそもビジネスの場面では、自分の意見をはっきりさせることが求められます。常日頃から、どんなに些細なことでも yes /no、because(根拠)は明確にして話すべきです。

また、何かを頼む際に『Please』という表現を日本人は使いがちですが、『Please+動詞』という表現は、あくまで命令文に『Please』をつけているだけで、命令形であることに変わりはありません。ビジネスで相手に頼みごとをするときには、仮定法(wouldやcouldを使った表現)を活用するほうがいいでしょう」

1対1のときも、複数人に向けて話す

最後に、英語で話す際の「心構え」についてうかがった。

「1対1で話す場合も、周りにも聞かせるようなつもりで、ゆっくり、大きく話すようにしてください。そのほうが伝わりますし、相手も聴き取りやすくなります。

ゴールドマンのある先輩は、海外オフィスの相手と電話をする際、電話機をスピーカーフォンにすることがありました。受話器が口元から離れているため、フロアに響き渡るような大きな声で堂々と返答していました。その姿は非常に印象的でした。

このように、マンツーマンであっても、周りで人が聞いているイメージで話せるようになると、ビジネスの場では強いです。

私が主宰する英語スクールでも、複数人でのディスカッションの際、質問者だけに目を向け、小さな声で話してしまいがちな人が多くいますが、これは慣れの問題。ぜひ明日からは、マンツーマンであっても複数人に話すイメージを持って話すことを心がけてみてください」

文・戸塚隆将(とつか・たかまさ)
ベリタス代表取締役
1974年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。ゴールドマン・サックス勤務後、ハーバード経営大学院(HBS)でMBA取得。マッキンゼーを経て、2007年、ベリタス株式会社(旧シーネクスト・パートナーズ株式会社)を設立、代表取締役に就任。 同社にて企業のグローバル人材開発を支援するほか、HBSのケーススタディ教材を活用したプロフェッショナル英語習得プログラム「ベリタスイングリッシュ」を主宰。グローバル人材を輩出し続けている。著書に『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』(朝日新聞出版)等がある。≪写真撮影:まるやゆういち≫(『THE21オンライン』2019年04月01日 公開)

提供元・THE21オンライン

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