LGBTとは何か~「誰もが傷つかず、働きやすい職場」を 実現するために

2019.6.11
RELATIONSHIP
(画像=THE21オンライン)
(画像=THE21オンライン)
最近よく聞く「LGBT」だが、正しく理解している人は少ないのではないだろうか。実はLGBTに該当する人は国内で8.9%にも及び、これは左利きの人とほぼ同じ。すでに先進的な企業はLGBTについての取り組みを始めている。そんな企業の一つであるフォーシーズ社長の丸山輝氏と、LGBT向けの就職情報サービスで注目を集める起業家である星賢人氏が、対談形式のセミナーを行なった。

星賢人(写真左)
株式会社JobRainbow代表取締役
1993年生。東京大学大学院情報学環卒。孫正義育英財団会員。ゲイを自認し、中高時代いじめを受け不登校に。大学でLGBTサークルの代表を務める中で、多くの友人が就職を諦めていくのを目の当たりにし、株式会社JobRainbowを設立。米国にて「Social Justice Leader 」の10人、Forbesが選ぶ注目すべき30歳以下の30人に選出。

丸山輝(写真右)
フォーシーズ株式会社代表取締役社長
1968年、福岡県生まれ。91年に古物商を創業。99年、古物商の店舗展開を進めるためフォーシーズ株式会社を設立し、代表取締役に就任。2001年より家賃債務保証事業を開始し、その後、主要都市に営業拠点を置き業務を拡大する。09年、一般社団法人賃貸保証機構の理事に就任。

想像以上に厳しいLGBTを取り巻く現状

――星代表が「JobRainbow」を立ち上げたのは22歳。どんなきっかけで起業されたのですか。

 「JobRainbow」は、LGBTと呼ばれる人たちと、そうした人たちに理解のある企業を結ぶための就職・転職支援サイトです。きっかけは大学時代、トランスジェンダーの先輩が、就職活動にとても苦労していたこと。面接でカミングアウトしたら、その場で帰されてしまったことすらあったそうです。結局、その人は就職活動を諦め、大学も中退してしまいました。

こうした問題をなくしたいと考え、2016年1月にこの会社を立ち上げたのです。

丸山 まさに世の中に貢献する、意義ある活動だと思います。

私も同じくらいの年齢で起業しましたが、最初に手がけたビジネスは自分以外の経営者にもできる事業であり、 社会貢献の満足度が今ほど高くはありませんでした。

「家賃債務保証事業」は不動産を賃貸する際、万一の延滞などに備えて家賃を保証する事業です。社会的弱者と呼ばれる人たちや起業家などは延滞リスクが高いとされ不動産が借りにくいのですが、保証会社が入ることでこの問題が解決できる。この仕事なら、まさに世の中のお役に立てると考えたのです。

――フォーシーズ様では、同性同士の結婚でも結婚祝い金の支給や慶弔時の休暇などを認める「パートナー登録制度」を導入するなど、LGBTへ理解のある施策を行なっています。

丸山 私としてはLGBTだけを特別視しているつもりはありません。見た目や学歴、そして性的指向とは人間にとって「着ぐるみ」のようなもので、人間の本質には全く関係ない。

その考えがベースにあるのです。

 私たちは企業へのLGBTの導入支援もしていますが、成功する会社は、丸山社長と同じ考えを持っていることが多いです。「人は一人ひとり違うのが当たり前で、その違いを尊重し合って職場を作り上げていく」という視点です。

丸山 私も以前はスタッフに、「早く結婚して子供を作り、所帯を持て」と言ったり、一面的な見方をしていた時期もありました。ただ、相手によっては「僕の言っていることがかみ合わない」と感じることも。愛情のつもりが相手を傷つけているのではとLGBTに関心を持ち、それらをオープンにできる職場であるべきだと考えたのです。実際、LGBTであることをカミングアウトしている社員は何人もいます。

LGBT対応は、経済的なメリットにも

――企業風土を変えるために必要なことは何でしょうか。

 トップダウン、ボトムアップ双方が必要ですが、やはり意思決定権を持っている人に本気になってもらうことが重要です。 私たちが「株式会社」として活動を始めた理由も、実はそこにあります。NPOなどの団体では、「人権問題」としてこの問題に取り組んでいることが多いのですが、それだけでは企業は動けません。そこで我々は、どんなメリットがあるかを伝えるようにしています。

例えば、LGBTにフレンドリーな会社は、生産性が20~30%高いという調査結果が出ています。また、今は人手不足が深刻化していますが、LGBTの方の89%が、LGBTに理解ある企業で働きたいと思っています。こうした情報を提供することで、企業に対して論理的、経済的な観点からアプローチしているのです。

丸山 加えて、マイノリティと呼ばれる方々と接すると、自分自身が刺激を受け、成長できるメリットがあると感じます。

例えば弊社は障害者スポーツの支援もしていますが、こうした方々と接していると、多くのことを学ばせてもらえます。

――一方で、多種多様な人材がいると、マネジメントが大変だという意見もありそうです。

丸山 それはまったく思いませんね。むしろ、いろいろな人がいたほうが会社は面白くなる。

 グーグルなどの調査によれば、多様な人材が揃うチームのほうが多くの意見が出て、イノベーションや生産性向上につながるといいます。ただし条件があり、チームのビジョンや理念が明確であることが大前提だということです。

丸山 まったく同感です。

我々が採用で一番重視するのも理念です。当社には、「人が煩わしいと思う事、やりたくないと思う事」を率先して行うことで社会貢献をするという理念があるのですが、それに共感してくれる人だけを採用しています。

「多様な商品開発」がカギを握る時代に

――各企業ではどのようなLGBTに関する取り組みが行なわれているのでしょうか。

 最近は社内だけでなく、それを社外に広げている企業が増えています。例えばファッションビルを運営する丸井さんは、トランスジェンダー向けの商品開発に取り組んでいます。男性から女性になった方でも身につけられる、サイズの大きな服や靴、あるいは女性の体形でも似合う男性用スーツなどです。

丸山 不動産業界では、同性同士のカップルだと、賃貸物件が借りにくいという問題があるようです。当社が保証する案件でも、こうしたケースは結構あります。もちろん当社では、まったく差別せず保証させていただいています。

 ぜひ、そうした活動をどんどん発信してほしいと思います。LGBTの人たちは情報が手に入らずに苦労しています。

住宅ローンや保険、結婚式場などLGBTの人を受け入れてくれるところは増えてはいますが、まだまだ探すのが大変なのです。

丸山 弊社ももっとオープンにしていかなくてはなりませんね。そのためにも、LGBTへの正しい理解は必須で、今日はとてもいい機会になりました。ありがとうございます。

 こちらこそ、ありがとうございました。

「マツコ」に見るLGBTの多様性

本セミナーでは、星氏によるLGBTのレクチャーも行なわれた。

「ぜひ、知っていただきたいのは、LGBTの人とそうでない人、というようにきれいに分けられるものではないということ。セクシャリティは『身体的な性別』『性的指向』『性自認』、そして『性表現』の4つの要素によって決まります。例えばタレントのマツコ・デラックスさんは自身を男性だと自認しているそうですが、性表現では女性の格好をしています。このようにセクシャリティの在り方は非常に多様なのです。

さらに、男性的なパンツスタイルを好む女性もいれば、普段は女性を好きになる男性が、カッコいい男性にちょっとドキッとしてしまうこともあるでしょう。このように、一人の人間の中でもグラデーションがあるものなのです」(星氏)

LGBTへの無理解による問題についても警鐘を鳴らす。

「将来への不安やカミングアウトできないことによる孤独感から、LGBTの人はうつ病にかかりやすい、自殺率が高いという調査結果もあります。これは、問題を一人で抱え込んでしまうから。皆さんも、身近にそういう人がいたら、そっと寄り添ってあげてほしいと思います」(星氏)

(『THE21オンライン』2019年03月22日 公開)

文・THE21オンライン

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