「好きなことをして自由に生きていく」に潜むワナ

2019.7.11
BUSINESS
(画像=THE21オンライン)
(画像=THE21オンライン)

自分自身に市場価値がないのに会社を辞めてしまう危険性

「好きなことをして自由に生きていく」

……最近、こういったワードをよく目にする。好きなことをして生きていく。そして、起業、自由に働く、転職。各ニュースポータルサイトを見ていても、また実際に売れている書籍を見ても、このようなテーマ・キーワードをよく目にする。

近年は働き方改革、人生100年時代など、既存の会社員人生からの脱却が各方面で叫ばれているが、果たして本当に誰もが好きなことをして自由に生きていけるのだろうか。

学生時代には見えなかった「社会の現実」

実際、私もこれらの言葉に誘惑された一人である。大学卒業後、生命保険会社へ入社。良い大学・良い企業へ入れば、60歳まで会社員生活を送り、定年退職後に自分の好きなことをして生きていける、それなりのしあわせな人生を手に入れることができる。当時は、本当にそう考えていた。

しかし、待っていた現実はまったく異なる。連日のパワハラにサービス残業、下がり続ける給与。何よりも苦痛だったのは、家族・友人と過ごす時間がまったくないこと。私はこの時、「金より自由に使える時間が大切だ」そう考えるようになった。

そこで出会った起業、転職の本

当時、この先どうすれば自分の追い求めるしあわせな人生を送れるか真剣に考えていた私は、次のような言葉に溢れる書籍に影響を受けた。

「自由に好きなことをして生きていく人生こそしあわせ」

「自分が本当にやりたい、好きな仕事をしよう」

「周りの目なんて気にするな、とにかく飛び出せ」

こういったワードに影響され、「会社を辞めても転職、起業、フリーランスで生きていける」「会社を辞めれば、自分の自由な時間を手に入れ好きな仕事ができ、好きな人生を送れる」……会社員なんて今すぐやめるべき、最悪やめても人生どうにかなる、そう考えた。今、思えば非常に浅はかな考えであった。

スキルを磨くために留学。しかし……

会社を辞めてもスキルを磨けば希望の仕事ができる。今すぐは無理かもしれないが、スキルを磨く習得期間と考え、その間はとりあえず会社に入る、もしくはフリーランスで仕事をする。起業した場合も、まずは行動を起こせば何とかなる。書籍で書いてあるように行動あるのみ。そう考えていた。

会社を辞めた私は、英語に関わる仕事がしたいと考え、米国へ留学。約一年後に帰国し、好きな仕事をするべく、転職エージェントへ登録。初日からエージェントに多数の求人を紹介された。やはり自分の好きなことを貫けば、転職でも好きな仕事に就けるのだ。英語という武器を持った私をどの会社も必要としている。そう考えていた。

しかし、現実はそう簡単にはうまくいかなった。まずは、転職エージェント。彼らの目的は、顧客の希望の仕事を見つけるのではなく、紹介手数料を稼ぐこと。紹介求人の数は多いものの、以前と同じ業界・職種、そして休みも時間も少ない会社ばかり。ブラック企業で有名な会社がほとんどだった。

そもそも本当に市場価値の高い人間は、転職エージェントに登録する必要がない。仕事を通じて知り合った人など、その人脈から自然と声がかかるものである。自ら売り込まなくても、それを必要としている人から声がかかるのである。

そのスキルは本当に「市場価値」のあるものか?

現在、世間で言われている「好きなことをして生きていく」「自由に生きていく」ためには、自分自身にどこでも通用する市場価値があることが最低必須条件である。具体的には、自身のスキルや経験、例えば語学力などが本当にどこでも通用するスキルなのか見極めなくてはならない。それは大企業出身だからとか、所属している会社の規模とはまったく関係ない。むしろ今の時代は、大企業という仕組み化された会社で働いている人の方が、社内でしか通用するスキルしかもっていないことが多い。

そういった市場価値が現在の自分自身に備わっていないのであれば、まずすべきことは、自身の市場価値となるコンテンツが、今いる場所以外で必要としている人が本当にいるのかどうか、会社を辞める前に冷静に見定めることだ。そして、特段ブラック企業ではない限り、自由に生きるという言葉に惑わされ、むやみに会社を辞めてしまってはいけない。

無責任に「好きなことをしよう」と煽る有名人の罪

現実世界において、好きなことだけをして生きていけるほど人生は甘くはない。誰しもがそうできるわけではなく、現在は一部の人のみが利用可能な特権であることを深く認識しなければならない。実際、ある著名人に至っては、「とりあえず世間を煽るのが私の仕事」と言っており、そこにはどうすれば良いのかなど、具体的な方法は一つも描かれていない。さらに言うと、起業することやフリーランスでいることの大変さや厳しさがすっぽりと抜け落ちている。

私自身も起業やフリーランスになることの意味をもう一度考え直し、二度目の転職活動は、仕事を通じて知り合った人からの紹介や転職サイトのスカウトなどを比較し、自分自身のスキルを本当に必要としている企業に採用された。ここで評価されたことは、英語力、調査・分析力と、まさに社外でも通用する市場価値の高いスキルであった。

現在の仕事では、自ら裁量権を持ち仕事ができるため、ほぼ毎日定時に帰宅でき、有休も自由に取得できるため、自らのスキル向上のために時間を充てることができる。また、何よりも家族友人との時間もある。会社員でもしあわせな人生を送ることは可能であることを、身をもって感じている。

結局は自分自身の判断

会社が倒産するリスクもあるが、起業してその会社が倒産するというリスクもある。どの人生を選ぶかは自らの選択に委ねられるが、どちらの道に行くにせよ、リスクは付き物であることは間違いない。このことが忘れられ、会社員であること=悪というレッテルを貼り、無責任に人を煽るのはどうなのだろうか。

どの人生を選択するにせよ、最終的な責任者は自分である。答えがない問題だとは思うが、いずれにせよ自分は本当に市場価値のある人間なのかしっかりと見極めなければならない。

文・山本健太郎(国際税務リサーチングエディター)(『THE21オンライン』2019年05月07日 公開)

提供元・THE21オンライン

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