旧日本軍から DeNA 、そして銀行まで……日本の組織が繰り返す『失敗の本質』

2019.3.18
BUSINESS
(画像=Atstock Productions / Shutterstock.com)
(画像=Atstock Productions / Shutterstock.com)
『失敗の本質 日本軍の組織論的研究 』(中公文庫)をご存知だろうか。そう、小池百合子 東京都知事の「座右の書」として話題になった本である。なぜ、日本が戦争に負けたのか……その理由だけでなく、現在も日本の多くの組織が抱える「問題の本質」を示唆する良書だ。

これまで数多くの日本企業が不正や隠蔽を繰り返してきた。なぜ、日本の組織は同じ過ちを繰り返すのか。最近の例では、えげつないSEO対策で粗悪メディアと非難された DeNA も、旧日本軍が冒した過ちと「本質的な問題」は変わらないように見受けられる。銀行も、日本の金融業界も程度の差こそあれ「問題の本質」は同じなのだ。 

信念なき経営が、現場の混乱を招く

『失敗の本質』の初版は1984年。ダイヤモンド社が刊行し、1991年に中公文庫で再刊した。決して新しい本ではないし、「日本軍の組織論的研究」というサブタイトルを敬遠する人もいるかも知れない。

組織論やマネジメントをテーマにした本といえば、ドラッカーを選ぶ人も多いことだろう。しかし、どんなに新しいノウハウや優れたマネジメントを導入しても日本の組織が抱える「問題の本質」は変わらない。かつて旧日本軍が冒した「失敗の本質」は、現在の日本の組織にもそのまま受け継がれているからだ。しかも、それは無意識のうちに我々日本人の美徳として、侵害を許さない「聖域」となっている。『失敗の本質』を読んで、私はまずそのことに気付かされた。

事実、銀行という組織はあまりにも旧日本軍と酷似していることに驚かされる。銀行の本部と支店は、旧日本軍の大本営と部隊の関係そのものだ。本部は経営方針や目標を企画立案し、それを支店に指示するという点でまさに同様である。

具体的に、私が勤める銀行が直面している問題を紹介しよう。経営幹部は相変わらず「銀行の主たる業務は融資である」という思想を捨てることが出来ないでいる。しかし、資金需要の減少や利ザヤの縮小により、融資だけでは収益をあげることができず、投資信託や保険などの販売手数料で収益を確保「せざるを得ない」事情がある。

金融商品販売に対しどのように取り組むかを巡り、経営幹部の姿勢はあいまいだ。あるときは「そんなものは女性行員の仕事である」と言ったかと思えば、「銀行全体が一丸となって取り組むべきである」と強調するなど二転三転している。専門の営業部隊を新設したものの有効に活用することができずに持てあます結果となったり、今もって現場の混乱は収まっていない。

柔軟・臨機応変と言えば聞こえが良いが、ようするに彼らの考えには信念と呼べるような「軸がなく」ブレまくっているだけなのだ。 

日本人の美徳、侵害を許さない「聖域」

恐らく、これは私の銀行だけが抱える問題ではないだろう。多くの金融機関、そして多くの日本企業は同様の問題を抱えているのではないか。それは旧日本軍がノモンハン事件、ミッドウェー、レイテでの戦闘において繰り返してきた失敗そのものなのだ。

軍隊が戦争に勝つためには、とことん合理的な組織でなければならないはずだ。戦争の敗因は究極的には国力ということになるのだろうが、作戦遂行における日米の考え方の違いが大きく影響したことも否めない。

企業も同様である。いかなる作戦においても、そこには明確な戦略ないし目的が存在しなければならない。にもかかわらず、我々の職場においても「空気を読む」「察し」による意思疎通がまかり通り、肝心の「何のために戦うのか?」といった目的・戦略が抜け落ちている。

繰り返すが、失敗の本質とは、我々日本人の美徳とされている、侵害を許さない「聖域」にあるのだ。 

戦略のないままに状況はエスカレートする

あなたが属する組織は、人間関係を過度に重視する情緒主義や強烈な個人の突出を許容するようなことはないだろうか。多くの人は内心では疑問を抱いているものの、突出した力を持つ人物がいるために、意見を述べることができない場面を経験しているはずだ。そういう人物が経営陣にいることで、周囲はイエスマンで固められ、戦略のないままに状況はエスカレートする。これも旧日本軍の特徴そのものではないのか。

人情という名の人間関係重視、組織内融和の優先、これらは本来軍隊のような組織では悪影響を及ぼし、組織の効率性を妨げるものだ。にもかかわらず、旧日本軍ではこれがまかり通った。その結果、旧日本軍は無謀な作戦を断行し、敗走を重ねることとなる。多くの人が疑問を抱きながらも、無謀な作戦が実行に移されてしまったのだ。

戦争映画の中には、ずさんな作戦の失敗を悲劇的に描いているものがある。失敗がお涙頂戴の悲劇として描かれているものもある。

我々は、過去の失敗を悲劇として美化することで、その責任を回避してきたのではないのか。戦争の責任を言っているのではない。これまで日本の組織が繰り返してきた「失敗の本質」を教訓として学び、これからの組織運営に活かすことが大切なのだ。

文・或る銀行員/ZUU online

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