アクションゲームで読解力が上がるようです。

イタリアのトレント大学の研究によれば、子供たちの読書スキルを「読書の必要のないアクションゲーム」によって鍛えられることが判明した、とのこと。

研究者たちが開発したアクションゲームをプレイした子供たちは、比較としてプログラミングの学習用に作られた論理ゲーム(Scratch)をプレイした子供たちと比べて、最大で7倍も読解力が向上していました。

読書スキルは長い間「とにかく読んで読んで読みまくる」など、読書の繰り返しによってのみ上達すると考えられていましたが、どうやら違ったようです。

しかし、一体どうしてアクションゲームで子供たちの読解力が上達したのでしょうか?

研究の詳細は、1月17日付で科学雑誌『Nature Human Behaviour』に掲載されています。

アクションゲームで子供の読解力が上がると判明!

アクションゲームで子供の読解力が上がると判明!
アクションゲームで子供の読解力が上がると判明! / Credit:トレント大学(イタリア)(画像=『ナゾロジー』より 引用)

意外かもしれませんが、読解力は人類の生存にとって必須スキルではありません。

人類は進化のほぼ全域ともいえる時間を、文字とは無縁に過ごしてきたからです。

にもかかわらず、なぜ人類は読書が可能なのでしょうか?

理由の1つに、人類が生存のために進化させた能力を読書のために「転用」していることがあげられます。

転用元となる能力には、前後の状況を理解する短期記憶能力、獲物や果実を補足し続ける視覚的注意力、視認が難しい状況を切り抜ける判別能力、狩りの合図や危機回避などに使われる意味を含んだフレーズの理解能力など、本来は狩猟採集生活のために発達させたものがあります。

読書にあたっては、短期記憶能力は文の直前の意味を記憶し、現在の内容と組み合わせる助けになり、視覚的注意力は行が変わっても文字を追い続けることを可能にします。

また類似する形状を見分ける能力は似た文字の分別を可能にし、意味の内包されたフレーズを理解する能力は、象徴性や抽象性の高い内容の理解につながります。

これら能力は偶然にも、あるいは必然的に、アクションゲームを面白くする要素に満ちていました。

そこで今回、トレント大学(イタリア)の研究者たちは、読書に転用される基本能力を鍛えるためのアクションゲームを開発しました。

注目すべき点として、研究者たちが開発したアクションゲームのクオリティーの高さがあげられます。

※こちらが開発されたゲームです。音量にご注意ください。

これまで実験用に開発されたゲームの多くは控えめに言って無味乾燥でした(クソゲ―)。

ですが今回、研究者たちの開発したゲームは上の動画のように、子供たちの感性を刺激できるような美しいビジュアルと音楽を備えています。

またゲームでは、短期記憶の訓練に謎の象形文字の入力、視覚的注意力の訓練にはシューティングなど、読書スキルの転用元となる基本能力をワクワクする状況で伸ばすことが可能になっています。

ゲームが完成すると研究者たちは、150人の8歳から12歳のイタリア人の子供たちを2つのグループにわけ、一方には研究者が開発したアクションゲーム、そしてもう一方にはプログラミングの学習に使われる論理ゲームを、週に2時間、6週間にかけて合計12時間プレイしてもらいました。

結果、子供たちのアクションゲームをプレイした子供たちの注意制御能力は、プログラミングの学習ゲームをしていた子供たちに比べて7倍も上昇していたことが判明します。

また、アクションゲームをプレイしていた子供たちは読み取り速度だけでなく読み取りの精度においても、大きく向上していました。

対照的に、プログラミングの学習ゲームをしていた子供たちには読み取りの速度や精度の改善は見られませんでした。

さらに継続的な調査により、アクションゲームのトレーニング効果は1年以上も持続しており、国語にあたる「イタリア語」の成績も対象と比較して大幅に向上していました。

この結果は、読解力がアクションゲームの攻略に要する能力の訓練によっても上達することを示します。

というのも、人類の脳にはそもそも、読書専用の領域など存在しないからです。