学び直す対象の重要性

選択式週休3日を奨励する企業の中には「学び直しにあててほしい」といっているところもある。

SNSでの反応の中には「おすすめの資格は~」「セミナーで勉強を~」という論調だが、個人的にはこうしたスタンスには疑問を感じる。資格取得の多くは自己満足も少なくない。時間と労力とお金をかける以上は、「必ず回収する」という強い意欲と回収後の具体的なプランが必要ではないだろうか。この発想のことを「収益エンジン」という。つまり、学び直す行為そのものではなく、学び直す対象こそが最重要だ。投資コストの回収につながらないムダな学び直しに価値はないのである。

たとえば「会社員なら簿記の知識は必要になる」と簿記の勉強をする人がいる。簿記知識はもっていて損はしないだろうが、知識の取得にかけたコストを上回るリターンを得るには経理やファイナンスの部署にいなければ難しい。上司や雇用主に取得を報告し、「自分を昇給させる価値がある」と納得感のあるプレゼンをするには難しいのではないだろうか。

また、人気資格の筆頭である英語も同じだ。英語の勉強を頑張る人は、英語が好きで真面目な人が少なくない。「キャリアアップのため」ということでスタートしても、語学の勉強の追求にハマってしまう人がいる。英語力を持っていることは強力な武器になる。今持っている専門知識と掛け合わせて労働市場でレア人材となり、有利に転職する想定をするなど、取得した語学力を具体的に活用するプランを持つべきだ。そうでなければ、せっかく身につけた英語もムダになってしまう。

また、資格そのものでなくても、普段の仕事の生産性を高めることに時間を使うことも効果的だろう。筆者は元々経理職をやっていた時期もあるので分かるのだが、経理はスキルと効率性を高めることで市場価値を高める事ができる。業務の幅を広げ、スキルアップするためにこれまでできなかった「連結決算処理」や「法人税」について勉強して知識をつけたり、これまで手作業で計算していたことをエクセルで自動的に数式で算出できるようにするということだ。結果、出社時の仕事をより短時間で同じ成果物を出すことができるようになる。

こうした実績は転職するなど、他社に移る時にもPRポイントになる。そして、このような自己研鑽は平日の仕事中には難しいのだから、増えた休日にやればいい。労働市場において付加価値を高めてくれる点を考えれば、収益エンジンにもつながる。

選択式週休3日は喜ぶべき制度だ。収益エンジンの前提で自分の付加価値を高めることに使うべきだろう。そうすれば、給与が減ってもそれを上回るリターンになる。副業を認めてくれる企業に勤めているなら、持っている技術を活かしてお金を稼いでも良い。個人的には働き方の選択肢が増えたことはよい傾向だと思っている。

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文・黒坂 岳央/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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