まず、ウイングチップの定義について考察しましょう。上の写真はチャーチがプラダグループ傘下となり、それまでにはない解釈で発表されたスタッズがレイアウトされたウイングチップ、バーウッドです。メダリオンなどの穴飾りにスタッズを埋め込むという発想は、それまでチャーチを意識しなった新しいファンづくりに貢献しました。
ここで注目してほしいいのはつま先部分の切り返しがWになっている部分です。つまり。これをして羽根の形=Wingに見えることからウイングチップと呼ばれるようになりました。下の写真はスタッズのないオリジナルのバーウッドですが、同様にWing模様がありすね。
ウィングチップと呼べるのは、この意匠がある事なのですが、そのほかにも様々な特徴があります。興味深い違いもあるので、じっくり付き合ってください。着こなしの深さが増すはずです。
目次
ウイングチップの二大派閥 英国派と米国派
ウイングチップの歴史 そしてブローギングについて
ウイングチップの二大派閥 英国派と米国派
写真は今やアメリカ靴の代表格オールデンのウインチップです。つま先部分にWの切り返しがあります。そして前述のチャーチのバーウッドと見比べてみてください。特徴的な違いがあります。分かりづらい場合は下のは写真、こちらはブラウンのバーウッドです。Wの切り替えしの形が違う事に気付くと思います。
バーウッドは内羽根式で、オールデンは外羽根式、構造上の都合からそうした違いがうまれるのかと思いきやそうではないようですね。以下では同じ外羽根式のウイングチップで英国・アメリカを比較してみました。
英国式 ウイングチップ トリッカーズ
その歴史については後述しますが、ウイングチップの源流はカントリーシューズです。カントリーシューズと言えば真っ先に思い出されるのがトリッカーズではないでしょうか。ミドルカットのカントリーブーツは辛い秋冬の足元をしっかり守ってくれる頼もしい相棒です。
デニムやツイード、コーデュロイパンツとの相性は格別です。これを履きバブアーでも羽織れば、多少の雨や雪でも大丈夫です。
さて、横顔に注目です。Wの切り返しがソールに向かって落ち込んでます。そして立ち上ってくるとヒールを包み込んでいます。(※デザインによって多少違いがあります。)
アメリカ式 ウイングチップ リーガルオリジナル
前述のオールデンのほうが分かりやすいかも知れませんが、横顔の違いが分かると思います。アメリカに渡ったウイングチップになぜこのような違いが出来たのかは詳しく探れませんでしたが、アメリカ人の大柄な体格の違いに起因しているのかも知れませんね。
イギリス式のほうが、上にスッと登るように立っていて、アメリカ式はどっしりと質実剛健、踏ん張りが効く印象があります。同じウイングチップですが、お国柄?と言える違いです。外からでも分かるので『それは英国式だからブランドはジョンロブかエドワードグリーンかな?』となるわけです。
ウイングチップの歴史 そしてブローギングについて
この写真はイギリスビスポークシューズの名門ポールセン・スコーンの作品ですが、上記の定義からするとウイングチップではありません。しかし似ています。つま先の穴飾り(メダリオン)や切り返し部分にも装飾が施されています。
この穴飾りをブローグと呼びますが、ウイングチップにもこちらの靴にも共通しています。このように穴飾りが見られる靴は、ブローグシューズ(またはブローギングシューズ)と呼ばれていて、ふたつの靴は同じ源流から派生したものなのです。
ブローグシューズは16世紀ころ、アイルランドまたはスコットランドで誕生したと言われています。酪農や牧畜などが主な産業で、農作業用のく靴にルーツを見ることができます。つま先の保護のため、また半端な革をはぎ合わせて作りることで独創的なデザインにつながったようです。
穴飾りは、雨で濡れたり汗などの湿気を逃すあめに開けられ、それぞれの紋章のようにデザイン化されました。現在では飾りとなっていますが、当時は機能的な役目を担っていたのです。また紐の開け閉めが簡便なこと、でフィット感がいことから、構造も外羽根式が主流でした。
ブローグシューズは、ウイングチップのように穴飾りの多いものを『フルブローグ』、ポールセンスコーンのようにストレートチップでつま先部分を中心に穴飾りがあるものを『セミブローグ』と呼び区別するようになりました。頑丈な作りとデザインを継承しながら、町でも履けるように改良されていったようです。
英国式では構造においても内羽根式が組み込まれるようになり、クラシックなニオイを残しながらドレス感も備えたものが増えてきました。源流が働くための靴ですからビジネス対応ですが、主張の強いフルブローグよりは、セミブローグ程度のほうが汎用性が高いように案じます。