「航空業界」も、新型コロナウイルスの感染拡大で大打撃を受けている。全日本空輸(ANA)は1兆3,000億円の融資枠を金融機関に求めたと報道され、業績予想の大幅な下方修正も発表した。過酷な状況の中で、破綻の可能性すらもささやかれ始めている。

国際線・国内線の運休・減便率は悲惨な数字に

新型コロナウイルスの感染拡大で、航空各社は大幅な路線の運休・減便を余儀なくされている。ANAホールディングスの報道発表によれば、4月29日~5月6日における国内線の運休・減便率は85%に上り、3月29日からの累計では、国内線の1万9,381便が運休・減便となるという。

国際線も同様に厳しい状況だ。3月29日~5月15日における運休・減便数は7,466便に上り、減便率は約90%。飛行機は、飛び立ってはじめて売上が立つ。国内線・国際線がともに悲惨な状況となれば、ANAの業績は否応なしに悪化してしまう。

1兆3,000億円の融資枠要請が明らかに

4月上旬、ANAホールディングスが日本政策投資銀行とメガバンクなどに1兆3,000億円の融資枠を求めているという報道があった。ANAホールディングスはこれを認め、つなぎ融資を受けることで何とかこの苦境を乗り切ろうとしている。

融資枠とは、事前に設定した範囲内での融資を約束する契約のことだ。ANAホールディングスに1兆3,000億円の融資枠が設定されれば、今後の資金繰りに対する懸念が和らぐはずだ。

ちなみにリクルートやトヨタ、日産などの大手企業も、すでに融資枠の設定を要請している。具体的な融資枠は以下のとおりだ。

  • トヨタ:1兆円 
  • 日産:5,000億円 
  • リクルート:4,500億円 

    これらの企業の融資枠を見ると、ANAの1兆3000億円という数字は極めて大きく、ANAの危機感を表していると言える。

2020年3月期の連結決算−―利益は75%減少

4月28日、ANAホールディングスは2020年3月期(2019年4月1日~2020年3月31日)の連結決算を発表した。以下のように、衝撃的な内容だった。

売上高:1兆9,742億円(前年比マイナス840億円)
営業利益:608億円(同マイナス1,042億円)
経常利益:593億円 (同マイナス973億円)
純利益:276億円(同マイナス831億円)

前期の純利益は1,118億円だったので、約75%減だ。即効性のある収支改善策として、需要に合わせた運航便の調整や、人員稼働の適正化を行っている。また役員報酬や人件費の減額を、緊急対応策として実施している。

世界各国における入国制限や移動自粛が長引けば、2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績への影響も大きくなる。一時休業の対象となっている社員数は、すでに全社員の約3分の1にあたる1万6,000人に上っており、経営陣も従業員も不安を感じずにはいられない日々が続く。
 

ANAが破綻する可能性はあるのか

悲惨な状況だが、ANAが破綻してしまう可能性はあるのだろうか。

新型コロナウイルスの終息時期は、まだ見えない。ワクチンや治療薬の開発の遅れやウイルスの変異などによって現在の状況が長引けば、つなぎ融資として調達する資金も底をつくだろう。航空業界では、すでに豪ヴァージンを含む複数の航空会社が経営破綻状態となっており、国内最大手であるANAやJALにとっても他人事ではないはずだ。

2010年に経営破綻したJALは、債務免除や公的資金投入による1兆円規模の支援で復活を果たしたが、ANAの1兆3,000億円の融資枠要請は、これを上回るものだ。

もちろん一概に比べることはできないし、経営破綻するかどうかは現在の負債状況や支援の有無、内的・外的要因も関係してくる。しかし、コロナ禍が年単位で長期化するとなると、破綻の可能性はゼロとは言えないだろう。

ちなみにANAホールディングスは、1兆3,000億円の融資枠とは異なるスキームで4,000億円規模の資金調達を模索していることが明らかになっている。厳しい戦いは、しばらく続きそうだ。
 

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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