インディテックスの将来性はSheinに対抗できる手段を見つけることに依存
今年4月からインディテックスは創業者の娘マルタ・オルテガ氏が会長に就任して新しいスタートを切るが、Sheinの脅威の前にどのような取り組みを展開して行くのかということが今後のインディテックスの将来を占う最重要項目となっている。
インディテックスを16年に亘って会長兼CEOとして成長させ、世界のファストファッションのトップに育て上げたパブロ・イスラ氏がネット販売に総力を挙げて取り組んだのはアマゾンの脅威に対抗する為であった。
この4月に同社を去るイスラ氏の後任として会長マルタ・オルテガ氏とCEOオスカル・ガルシア・マセイラス氏の二人三脚の体制はアマゾン以外にSheinに対抗する取り組みをして行く必要に迫られることになる。
Sheinが出す新作の数はインディテックスを遥かに凌駕
アマゾン以上にSheinがインディテックスにとって脅威なのはその販売力の凄さである。
Sheinは試作から生産に取り掛かるまで僅か7日の所用期間が必要なだけで、しかも生産ロットも最初は100着からスタートとしてリスクを最小限に留める。市場で反応がよければ一挙に生産ロットを増やすシステムになっている。一方のインディテックスは市場に出すまでに14日が必要で生産ロットも最低500着からスタート。
Sheinは800人のデザイナーを抱え日毎に1000着を市場に出して反応を見ているという。即ち、年間で36万5000着を市場に問うて反応を見ているというのだ。インディテックスは700名のデザイナーで年間で2万着余りの新作を市場に出している。即ち、Shein でひと月に出す新作はインディテックスのおよそ1年分を超える数量という凄さである。(2021年7月24日付「テンデンシアス」から引用)。
Sheinの情報源はGoogleのトレンドを利用して流行のスタイル、色、生地などをいち早く掴んでそれをモデルのデザインの参考にする。これ以外はアパレル企業がどこでも行っているライバルのデザイン、ファッションショーや雑誌などから模写して行うやり方だ。
ファストファッション企業というのは傾向を掴んで如何に早く新作を出して行くかとことに重要な点がある。そこにはデザインを創作する時間はない。如何に早く市場にあるものを模写して市場に出すかということである。その面ではインディテックスが最も早く反応して市場に新作を出していた。
ところが、インディテックス以上に早く市場に商品を訴えて行く企業が現れたということなのである。それがSheinだ。
この速さを構築していくために商品の企画デザインから生産から供給に結び付けるのに中国国内に集中させていることである。例えば、インディテックスの場合は企画デザインはスペインのガリシア地方にある本部で行うが、生産は中国とアジア諸国やモロッコといった国に分散している。ガリシア地方でも生産しているがその比率は少ない。生産地から出来た商品をインディテックスの本部に入荷させ、そこから世界に出荷して行く体制だ。だからSheinでは企画から生産に1週間で出来上がるのが、インディテックスでは2週間が必要ということになる。
生産されたものを如何に多くの消費者に早く知らせるかという点についてもインディテックスには2億人近いフォロワーズがいる。Sheinは若い年代層の1万人あまりのインフルエンサーがTik TokやイスタグラムなどにSheinの購入した新作などをビデオで紹介してコメントを入れたりしている。その貢献度に対してコミッションが貰えるシステムになっている。その影響もあって現在アプリによるダウンロード数はアマゾンを既に追い越しているという。
この面でもインディテックスはこれからアマゾンだけでなくSheinとの、この2つの強敵に対抗して行かねばならないのである。