今日においては、データが企業活動に与える影響は拡大しており、多くの企業がデータ活用を取り入れるようになった。私たちの身近なデータのひとつが「日々の購買データ」だろう。そんな「購買履歴」というビッグデータをAIで分析し、新たな価値を創造しようとしているのが株式会社キャッシュビーデータだ。代表取締役の安藤秀之氏に、その事業内容などについて話を聞いた。

FIRE達成後の生活とは?
安藤 秀之
株式会社キャッシュビーデータ 代表取締役
英国ウォーリックビジネススクールにてMBAを取得。国内重工メーカーにてAIの研究開発を経験し、15年以上にわたり外資系及び国内コンサルティングファームにて流通・消費財メーカーに対する経営コンサルティングを提供。日本のITサービス代表及びデータ分析のリーダーを経験。2021年3月にキャッシュビーデータを創業。
コーポレートサイト:https://www.cashb-data.co.jp/

ビッグデータをAIで分析し、その価値を最大化していく

――まずは自己紹介を兼ねて、これまでのキャリアについて教えてください。

大学卒業後、石川島播磨重工業(現在のIHI)で人工知能(AI)の研究開発をしていました。キャッシュビーデータの事業はAIを使うことが多いのですが、石川島播磨重工業での経験が現在に活きています。その後、イギリスの大学でMBAを取得したあと、カート・サーモン・アソシエイツというB2C企業や流通・小売企業を支援するコンサルティングファームに入りました。さらに、ベンチャー企業を2社経験し、またコンサル業界に戻って、2021年3月にキャッシュビーデータを創業しました。

――株式会社キャッシュビーデータとはどのような企業なのでしょうか。

キャッシュビーデータは、ビッグデータを活用し、その価値を最大化して、企業と消費者の双方に有益な情報として提供していくことを目的としています。具体的には、グループ会社であるキャッシュビーが運営する日本初のキャッシュバック提供アプリ「CASHb」が持つ顧客データと購買データをAIで分析することにより、クライアント様の事業に貢献するための多様なサービスをお届けしています。

当社はキャッシュビーが持つ顧客データと購買データを分析するわけですが、資本関係があるわけではありません。独占契約を結び、パートナー企業としてやっています。実は、キャッシュビーの小川社長とはカート・サーモン・アソシエイツ時代の先輩後輩の間柄でして、20年来の仲です。キャッシュビーデータを創業する前から、定期的にキャッシュビーに関する相談を受けており、購買データや顧客データを活用するビジネスを私がやらせてもらうことになりました。

消費財だけではなく、多くのB2C企業を対象としたアンケートサービス

2.ビッグデータ(購買履歴)をAIで分析し、新たな価値を創造する
(画像=BillionPhotos.com/stock.adobe.com)

――貴社の事業内容について教えてください。

現在は2つの事業を展開しています。ひとつが「賢い買物スキルの生活者向けアンケート by CASHb Data」、もうひとつが「スキップされないターゲット広告 by CASHb Data」です。サービス名には、サービス内容を分かりやすくお伝えするための言葉を使いました。

「賢い買物スキルの生活者向けアンケート by CASHb Data」は、「CASHb」アプリのユーザーに対して、アンケート調査を実施することができるサービスです。申込から結果報告まで自動化され、企業様が手軽に自分たちの知りたい情報を得ることができるセルフサービス方式になっています。

「CASHb」でも販促の後に多少のアンケートは取るのですが、基本的には消費財メーカー様が対象です。そこで、当サービスでは消費財だけではなく、多くのB2C企業様を対象としています。「CASHb」に蓄積しているのがスーパーやドラッグストアで買い物をする方々の購買データですので、そのようなデータを必要する企業様、具体的には小売、旅行などのサービス業、それを取り巻く調査会社、コンサルファームなどを想定しています。

――アプリユーザーには、どのようなメリットが想定されるのでしょうか。

分かりやすいメリットで言えば、アンケートに答えることで、現金のキャッシュバックを受けることができます。どれくらいの金額がもらえるかは、案件によって異なりますが、企業様が弊社に支払う代金の20〜30%くらいが消費者にバックされるイメージを持っています。

なお、質問は最大30問で、質問数が増えるほど料金が上がる仕組みになっていますので、たくさん答えれば答えるほど、キャッシュバックの金額も大きくなっていきます。もちろん、キャッシュバックの金額を大きくすれば、それだけ消費者の反応率は上がります。金額を大きくしても早くたくさんの人にアプローチしたいか、金額を抑えて比較的調査の時間軸を長くするか、そこは企業様の戦略によって変わってくると思います。

また、アンケートという行動を通して、自分たちの声(意見)を企業に伝えることができるということもメリットに挙げられます。

個人情報の観点が心配な読者もいらっしゃるかもしれませんが、アンケートで個人情報は聞きません。こういったアンケートは、マーケティングや商品開発、販促のための戦略策定などに使いますので、あまり細かい情報までは必要としません。わざわざ個人情報管理のリスクを負わないケースが大半ですね。

デモグラフィック属性だけではなく、価値観での深掘りも目指す

3.ビッグデータ(購買履歴)をAIで分析し、新たな価値を創造する
(画像=Rawpixel.com/stock.adobe.com)

――もうひとつのサービスはどのようなものでしょうか。

もうひとつは「スキップされないターゲット広告 by CASHb Data」です。これは、デモグラフィック属性(購買者の人口統計学的属性の総称。性別や年齢、居住地域など)に加えて、個人の「価値観」という視点でのセグメンテーションも将来的には可能とし、より関心度の高い「CASHb」アプリユーザーに対して、広告を届けることができるサービスです。

これまでのマーケティングは、デモグラフィック属性に基づいたターゲティングやセグメンテーションが多く行われてきました。しかし、キャッシュビーデータは、シナジーマーケティング株式会社様の価値観モデル「Societas(ソシエタス)」を採用し、デモグラフィック属性に加えて、価値観からの分析も提供していきます。

これによって、デモグラフィック属性や購買データなどだけでは掴みきれなかった「消費者の行動の背景にあるインサイト」を深掘りすることができます。今後は、価値観によるアンケート対象者の絞り込みであったり、クッキー規制を受けないターゲティング広告を行えたりできるようにしたいと思っています。

アプリユーザーは、広告を見ることで現金のキャッシュバックを受けることができます。アンケートと同じく、企業様が弊社に支払う代金の20〜30%くらいが消費者にバックされるイメージです。ただ、アンケートサービスと同じく、どれだけのアクションを期待するのか、リンクを貼ってサービスLPへの送客まで期待されるのか、などによって、その金額は変わってくると思います。

なお、アンケートとターゲット広告は、サービスラインナップとしては別物ですが、どちらも企業様と消費者のコミュニケーションですので、実際はお互いが有機的に結びついているものだと考えています。また、相乗効果という意味では、アンケートに良い反応する人がいたら、その人に向かって広告を打つことができるリターゲティングサービスも提供したいと思っています。

購買データ分析をサブスクリプション制で提供していきたい

4.ビッグデータ(購買履歴)をAIで分析し、新たな価値を創造する
(画像=sikov/stock.adobe.com)

――2022年には、3つめの事業を開始されると伺いました。

はい、サービス名は未定ですが、「データ利用サービス(仮名)」の提供を予定しています。これは、個人が特定できない形で、「CASHb」アプリユーザーの購買データを自由に分析できる環境を提供するサブスクリプション制サービスです。企業様は、膨大な購買データの中から求める形のデータを抽出・ご利用頂くことが可能になります。

これによって、企業様は「どういった商品がどういった地域でよく売れているか」などを分析できるようになります。例えば小売企業様を想定すると、「自分たちの商圏ではどのような商品が売れているか」が分かれば、「自分たちの棚にも同じような商品を置こう」という判断ができます。また、実はメーカー様は、大手以外はあまり詳しい購買データを持っていません。そのようなメーカー様にとっても重要な情報源になると思います。

一般の調査でも購買データに関するものはあるのですが、どうしてもスポット的になってしまい、「時系列が分かりにくい」という欠点がありました。一方で、弊社のサービスであれば、新鮮なデータを常に得ることができます。購買データや消費トレンドは日々変わっていきますので、サブスクリプション制が適していると考えています。

文・MONEY TIMES編集部

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