小売大手のイオンが4月10日に発表した2020年2月期の通期決算は、売上高と営業利益が過去最高という輝かしいものだった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が影響し、今期の業績は厳しいものになることは間違いないだろう。

2020年2月期は「売上高」が過去最高の8兆円超え

まずは、新型コロナウイルスの影響があまり出ていなかった2020年2月期(2019年3月1日~2020年2月29日)の数字を見てみよう。

売上高:8兆6,042億700万円(前期比1.0%増)
営業利益:2,155億3,000万円(同1.5%増)
最終損益:268億3,800万円(前期比13.5%増)

この結果は、株主に対して堂々と発表できる好調な業績と言える。

イオンは好調な業績について「事業構成の多様性が奏功」と説明し、「ヘルス&ウエルネス」「総合金融 」「ディベロッパー」「国際」の4セグメントで増益を果たしたことを発表している。特に、ヘルス&ウエルネス事業では、新型コロナウイルスの対策商品や紙製品の売上が1月後半に伸びたという。

今期の業績予測、新型コロナの影響で営業利益が76%減も

しかし、好調だった2020年2月期に比べると、今期(2020年3月1日~2021年2月28日)の見通しは暗い。決算発表とともに発表された2021年2月期の業績予想は、売上が前期比2.4~7.0%減の8兆~8兆4,000億円、営業利益は同53.6~76.8%減の500億~1,000億円まで落ち込むというものだった。

経常利益と最終損益の予想については「未定」とした上で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響について「2021年2月期の年度末まで継続すると想定しています」と説明。日本におけるピークアウトの時期は2020年3~8月と見込むが、消費マインドの冷え込みは続くと見ている。

新型コロナウイルスの終息が見えない中、業績を予想することは難しい。終息時期が想定より遅れると、業績はさらに悪化するだろう。「小売の王者」であるイオンであっても、今期は苦境が続くことになる。

新型コロナはすでにイオンの経営に大打撃 アミューズメント部門は売上が約7割減

新型コロナウイルスの感染拡大は、すでにイオンの経営に深刻なダメージを与えている。

中国では1月下旬から専門店ゾーンの休業や、スーパーの営業時間の短縮などを始めた。4月1日に中国全土におけるイオンモールの営業を通常に戻したが、東南アジアでは店舗の休業が広がりつつある。まだ通常営業を再開する見通しが立っていない店舗も多い。

緊急事態宣言の対象となっている7都府県の専門店57施設については、4月8日から当面の臨時休業を発表した。アミューズメント施設などでは、全店が休業している。生活必需品を扱う総合スーパー部門や食品スーパー部門については営業を継続するが、業績への影響は計り知れない。

イオンが発表した3月度の売上高は、総合スーパー部門の「イオンリテール」が前年同期比7.1%減、「イオン北海道」が同3.3%減、「イオン九州」が同6.1%減と落ち込んでいる。アミューズメント部門を展開するイオンファンタジーに至っては68.6%減と、非常に厳しい状況だ。
 

危機の中でも「生活インフラ」として貢献

今期のイオンの業績は厳しいが、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、同社はスーパー部門の営業を続けることで住民の生活を支えている。「生活インフラ」としての貢献度は大きく、改めてイオンの社会性を知らしめたとも言えるだろう。
 

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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