「オーダースーツを初めて作るのだけれど、生地はどうやって選んだらいいのだろうか?」とか「イタリア生地と英国生地ってどう違うの?」などと迷う人も多いのではないでしょうか?
この記事では、なぜオーダー生地としてイタリア生地と英国生地ばかりが好まれるのか、その秘密を解き明かし、さらにこの二つの違いをわかりやすく解説します。初めてオーダーを作る人はもちろん、何度か作ったにも参考になると思いますので、ぜひ最後まで読んでくださいね!
目次
そもそもオーダースーツの生地の選び方とはどのようなもの?
イタリア生地と英国生地の違いは?
そもそもオーダースーツの生地の選び方とはどのようなもの?
オーダースーツを初めて作ろうという場合、未経験ゆえに生地をどうやって選べばよいのか迷ってしまうものです。そんな人のために、スーツ生地の選び方の参考になる項目を3つほど紹介させて頂きます。
Point1 生地のテイストから選ぶ
生地の持つ雰囲気は色々とあります。クラシックなものから現代的なもの、アート的なものなど、好みが分かれるところです。自分が来て見たい雰囲気のものや、仕立てたいスタイルに合う素材感ということもあるので、ショップスタッフに相談して、意見をもらいながら選びましょう。
Point2 生地の属性から選ぶ
生地の属性から選ぶとは、例えばできるだけ丈夫なものとかシワに強いもの、通気性が高いものや保温性に優れたものなどの、生地の持ち味を重視して選ぶことです。
使いたいシーンを想定すると、例えばプレゼンの時に着用したいから、できるだけ通気性が高く涼感があって、着心地も軽く、ストレッチが効いて動きやすいものがいいなとかの実用面で選ぶ方法です。
Point3 生地の価格から選ぶ
予算も大事な購入の条件です。限られた予算内で、可能な限り目的に相応しいものや、クオリティが高いものを選びたいものです。同じ価格帯で見比べ、分からないながらも触って比較し、納得するまでじっくり迷ってよいのです。余談ですが、もし生地の選定を急かすようなショップであれば、顧客目線ではないので他の店にしましょう。
イタリア生地と英国生地の違いは?
■イタリア生地・英国生地の違い早見表
イタリア生地と英国生地のわかりやすい違いを表にしました。(※典型的なものの比較であり、実際はニュートラルなものもたくさんあるので、あくまでも参考として)
生地 | イタリア生地 | 英国生地 |
---|---|---|
イメージ |
|
|
概要 | 絹のような光沢を持ち柔らかな生地 | 重厚で堅牢なハリとコシのある生地 |
触り心地 | 軽く柔らかく滑らか | 重くてがっしり |
表面感 | 光沢が美しくドレープ感がある | マット(艶消し)感がある |
こんな人に おすすめ! | 今っぽくて粋な印象を作りたい男性 | 紳士な印象を作りたい大人の男性 |
日本も含めて様々な国で日々、手織物は生み出されています。しかしながら、あらゆる日本国内のオーダースーツ店、ひいては世界中のビスポークテーラー(注文服の仕立て屋)において、英国生地とイタリア生地の2種類がメインであることは明白です。どちらも服飾文化、紳士服に関して本場と言われる国ですね。
なぜ世界に膨大な数の国があって膨大な生地が生産されるのにるのに、紳士服の生地に関してはその2国の織物に集約されてしまうのでしょうか?その謎を解き明かしながら、イタリア生地と英国生地の違いを浮き彫りにしてみましょう。
なぜイタリア生地と英国生地ばかり好まれる?…良質生地が生まれる条件とは!
あまり知られていませんが、質の良い生地を生産するための条件の中でも、とりわけ重要なものは「水」です。もちろん原料の羊毛の質も大事であり、紡績機や織機も重要ではありますが、それらの条件を生かすも殺すも「水」次第という厳然たる事実があるのです。
織物を生産する過程の中で、原料段階での洗浄や染色、織り上がった生地の仕上げなど数々の工程で大量に水を使います。この水は「軟水」でなければなりません。軟水とは水分中にカルシウムやマグネシウムなどの「ミネラル成分」が少ない水であり、逆にそれらが多い水を「硬水」と呼びます。
ミネラル成分は「色素」と結合する性質があるので、硬水を用いて生地を作ろうとしても繊維と色素の結合を邪魔するので冴えた色目を現出することは不可能です。おまけに工程の中での洗剤や石鹸の使用において泡立ちが悪いので洗浄効果も低く、しかも沈殿物、つまりカスが大量に発生します。
これが良質の軟水であれば泡立ちが良くて洗浄効果が高く、カスも発生しないので河川の汚染にもなりません。そうやって出来上がるものこそ色は鮮やかに冴えわたり、不純物も混じらない高品質の生地となります。
そして良質の軟水がたっぷりと使える地域は、世界でも限られています。そのうえ、水以外の自然環境や交通の便、関連業者などの地域性、そこで生きる人たちの洋服の伝統やファッションに対する感度の高さも良い生地を作るための大きい要素でしょう。
さまざまな因子を包括して、生地生産に最も適しているのが英国はウェスト・ヨークシャー州のハダーズフィールドとイタリアはピエモンテ州のビエラという二つの「毛織物の聖地」なのです。
イタリア生地と英国生地、具体的な違いとは一体?
ヨークシャーの恵みを享受する英国のハダーズフィールドと、アルプスの恵みを享受するイタリアのビエラはともに世界的レベルで良質生地を生産する毛織物産地と言えるのですが、それぞれの織物には明らかな違いがあります。その違いをもう少し詳しく見ていきましょう。
柔らかで光沢が美しいイタリア生地vs堅牢で重厚な英国生地
「重厚で堅牢」からくる「ハリとコシ」があるのが英国生地の代表的なイメージです。マーケットがグローバル化している昨今は、英国メーカーからイタリア生地っぽいものも発信されますが、やはり基本路線は重厚&堅牢ですね。生地感もマット(艶消し)なものが多いです。
イタリア生地は英国生地とは対照的に、とても軽く柔らかでしなやか、滑らかという表現がよく使われます。それともうひとつは光沢の美しさです。生地の上品な艶、光沢は高級感と品格を醸し出す要素です。
柔らかで光沢が美しい、絹織物のようなウール生地がイタリアっぽさを表現するイメージです。また色目が鮮やかなものが多いのもイタリア生地の特徴です。
その柔らかは、縦糸にも横糸にも繊維の細い良質で繊細な糸を使い、そして緯糸の双糸に対して緯糸は単糸を使うことによって生まれる風合いです。光沢に関しても、極細繊維からなる糸の集合体だからこその美しい光沢がでます。ちなみに英国らしさがある生地は縦糸も横糸も双糸が使われています。