この世に一台しかない、フルスクラッチのカスタムバイクを作る –––– ライダーなら誰もが思い描く夢ですが、それにはとてつもない費用がかかります。パーツひとつをワンオフにするのでも、汎用パーツと比べるとその価格差は歴然。カスタムビルダーに制作依頼をすれば、彼らだからこそ生み出せるアーティスティックなオリジナリティが付加価値となるわけですから、カスタム費だけで3桁万円に届くことも珍しくありません。

費用以上に難しいのが、好みのマシンに仕上げてくれるカスタムビルダーへの依頼です。大阪の人が宮城県のカスタムビルダーに依頼するのも容易ではありませんが、そのカスタムビルダーが外国の方だと、相当な財力がない限り不可能。ローランド・サンズ・デザインのように、そのビルダーが手がけるボルトオンパーツでカスタマイズするにとどまってしまいます。

それが、手頃な価格で海外のカスタムビルダーのオリジナリティを手に入れられるとしたら –––– そんな理想を実現したのが、「CARA」と名付けられたこの BMW R nineT です。

3Dプリンターが海外のフルカスタムR nineTを手に入れる力となる!
(画像=“CARA” BMW R nineT by VIBA、『Moto Megane』より引用)

この個性的な CARA を手がけたのは、フランスのカスタムパーツメーカー VIBA。このスタイリングを、日本にいながら手早く再現できるスキームを編み出したのです。そのカラクリを紐解いていきましょう。

目次
BMW R nineT
CARA | BMW R nineT

BMW R nineT

3Dプリンターが海外のフルカスタムR nineTを手に入れる力となる!
(画像=『Moto Megane』より引用)

ボクサーエンジンと呼ばれる 排気量1,200ccの水平対向2気筒 空冷エンジンを搭載した BMW R nineT(アールナインティ)。最先端システムをいち早く取り入れる BMW ラインナップのなかでは異色とも言えるクラシックネイキッドスタイルが特徴のモデルで、カフェレーサーやスクランブラー、クラシックレーサースタイルと派生モデルを次々と加えていっています。将来的には最高峰に位置する BMW R 1250 GS に搭載されている水冷ボクサーエンジンへと移行し、継続して生産され続けることが予想される人気車種です。

それまで BMW には無縁だったカスタムバイクカルチャーを取り入れることを目的に生み出された R nineT は、本社主導のカスタムプロジェクトがいくつも開催されるなど、精力的にカスタムで楽しむことを押し出してきました。今回の CARA もそうした流れから生まれたモデルですが、他のカスタム R nineT とはひと味違う要素を持ち合わせているのです。

CARA | BMW R nineT

3Dプリンターが海外のフルカスタムR nineTを手に入れる力となる!
(画像=『Moto Megane』より引用)

ダークなボディと直線的なシルエットを無駄なく取り入れた CARA は、フランスのカスタムビルダーによって作られたフルスクラッチのカスタムバイクです。VIBA はその完成車を一度完全に分解し、パーツごとに3D CADでのデジタルデータ化を行いました。そのデータから3Dプリンターでパーツを製造し、再び組み上げることに成功したのです。

3Dプリンターが海外のフルカスタムR nineTを手に入れる力となる!
(画像=3C CADデータで分けられたCARAのディテールパーツ、『Moto Megane』より引用)

パーツを量産するのにはコストがかかりますし、それら一式を空路や海路で運ぶとなるとさらにコスト増となります。しかしデジタルデータならインターネット上で世界のどこにでも送れますし、そのデータが手に入れば、パーツを再現できる3Dプリンターを用意すればまったく同じものを はるか遠くの国でも作れてしまうのです。輸送にかかるコストはもちろん、時間までも節約できるこの仕組みを VIBA は実証してくれました。

3Dプリンターが海外のフルカスタムR nineTを手に入れる力となる!
(画像=『Moto Megane』より引用)

個々人はもちろん、背景となる国や文化によってカスタムビルダーが手がけるマシンは ひとつとして同じものにはなりません。当然それぞれのカスタムマシンに対する好みも千差万別で、気に入ったバイクが何の縁もない遠くの国のものであることも有り得ます。世界のどんな情報も手に入る現代では、今まで見る機会すらなかったカスタムバイクの存在を知る機会がますます増えています。

3Dプリンターが海外のフルカスタムR nineTを手に入れる力となる!
(画像=『Moto Megane』より引用)

これまで物理的に手に入れられなかった憧れのマシンを、デジタルの力で手に入れられる ––– 。夢のような話を可能にしたのが、今回の VIBA のプロジェクトなのです。

3Dプリンターが海外のフルカスタムR nineTを手に入れる力となる!
(画像=CARA 専用に設計されたスピードメーター埋め込み型ハンドルバー、『Moto Megane』より引用)

このハンドルバーが分かりやすい存在です。R nineT のノーマルメーターをそのまま埋め込める独創的なバーですが、これだけボルトオンしても その存在感とデザイン性から、コックピットだけ”浮いて”しまいます。フルスクラッチのカスタムバイクは、フルメニューを投じてこその完成度。それは重々分かっていても、そのための予算をポンと出すのも容易ではありません。

3Dプリンターが海外のフルカスタムR nineTを手に入れる力となる!
(画像=フロントマスクの印象を一変するLEDヘッドライト&バイザー、『Moto Megane』より引用)
3Dプリンターが海外のフルカスタムR nineTを手に入れる力となる!
(画像=車体に直線的なイメージを付与するエアインテーク、『Moto Megane』より引用)
3Dプリンターが海外のフルカスタムR nineTを手に入れる力となる!
(画像=テールランプ機能を備えたウインカーが一体化したシートカウル、『Moto Megane』より引用)
3Dプリンターが海外のフルカスタムR nineTを手に入れる力となる!
(画像=『Moto Megane』より引用)

予算という誰もがぶつかるジレンマを解決してくれる VIBA のこのプロジェクト。データの取り寄せとパーツを再現できる3Dプリンターさえ揃っていれば、1ヶ月どころか数週間でこのスタイルを日本で生み出すことができるのです。