タイトルから「マウス」を省くと人気が出るようです。
米国のヒューメインソサエティインターナショナル(HSI)で行われた研究によれば、研究者が論文のタイトルから「マウス」の単語を削除した場合、その論文がニュースメディアに報道される確率が31%増加し、ツイートとリツイートも2倍に増えることが確認された、とのこと。
マウスをタイトルから削除することで、論文の研究結果が人間にすぐに当てはまると錯覚されやすくなることが、人気がでる原因だとか。
マウスを愛するナゾロジー的には「なんてもったいないことをしているんだろう」と思わざるをえません。
研究内容の詳細は『PLOS BIOLOGY』にて公開されています。
目次
タイトルから「マウス」を抜く科学ニュースは人気になると判明!
科学ニュースはタイトルしか読まれない
タイトルから「マウス」を抜く科学ニュースは人気になると判明!
科学ニュースを提供している個人ブロガーやニュースサイトにとって、最も好まれるのは「刺激的な情報」です。
内容が刺激的であればあるほど、世間からの注目を浴び、ブログやサイトを訪れる人が増えてくれる傾向があるからです。
そんな刺激を求める刹那的なブロガーやニュースサイトにとって「マウスでの実験結果」という事実は邪魔でした。
彼らにとって実験結果は「今直ぐ」にでも「人間」に適応できる刺激的な内容であることが望ましいからです。
しかしそのような風潮は、誰の利益にもならないだけでなく、害になりえます。
そこで今回HSIの研究者たちはタイトルから「マウス」を省くことが現在の科学ニュース業界でどんな影響を及ぼしているかを調べることにしました。
といっても、マウスの研究は膨大な量に昇るため、全てを調べるのは困難です。
そこで研究者たちはマウスを使ってアルツハイマー病の実験的研究を行った2018年~2019年に発表された623の科学論文に分析を集中し、発表された論文がSNSやニュースメディアでどのような反響を呼んだかを調べました。
結果、科学論文のタイトルから「マウス」の単語が抜けている場合、ニュース記事でとりあげられる確率は31%増加し、ツイート・リツイートされる平均数も2倍に増加していることが示されました。
また科学論文のタイトルとニュース記事のタイトルの間の関連性を調べたところ、論文のタイトルで「マウス」が抜けている場合、論文を紹介するニュース記事のタイトルからも「マウス」の単語が抜けている可能性があがっていました。
その原因を研究者たちは極論すれば「忖度(そんたく)」にあると結論しています。
「論文のタイトルがマウスを抜いているんだから、記事のタイトルからもマウスを抜いても大丈夫だろう」
「マウスを抜いただけで実験結果は嘘じゃない。だから勘違いは読者のせいにできる」
という暗黙の了解です。
しかし、ハッキリ言ってそれは詐欺です。
一生懸命事実を伝えようとしても読者を勘違いさせてしまうことがあるのは確かですが、最初から読者の勘違いを狙い、その勘違いを利用してブログやサイトの人気を得ようとする手段は、ただの害悪でしかありません。
マウスを用いた研究にはマウスを使ってしか確かめられない数多くの魅力的な結果があります。
ですが読者の勘違いを狙う彼らにとって、実験の魅力を伝えるよりは刺激のほうが重要なのでしょう。
しかし研究者たちは、マウスを抜く「勘違い商法」が蔓延している原因には、読者の行動パターンもかかわっていると述べています。
いったいどのようにして読者たちは、勘違い商法の片棒を、担がされているのでしょうか?
科学ニュースはタイトルしか読まれない
どのようにして読者たちがマウスを抜く「勘違い商法」にかかわっているのか?
研究者たちはその答えを「読者はタイトルしか読まないから」と述べています。
調査によると、SNSのユーザーのうち、頻繁に科学ニュースのタイトルをクリックして内容を見る人は全体の5%しかおらず、95%の人々にとって科学ニュースとは「ほぼタイトルだけの存在」となっています。
タイトルしか読まれない風潮が強ければ、内容で勝負する科学サイトよりも、タイトルからマウスを抜くような、刺激を重視し誤解で収益を上げるサイトのほうが、最終的な勝利者となって生き残ることになります。
実際、研究者たちが調査対象となった623本の論文を元に生成された1535件のニュース記事が調べたところ、全体の7割がタイトルから「マウス」を抜いた記事であることが示されてました。
どうやら既にSNSでは「勘違い商法」サイト同士の熾烈なシェア争いが起きているようです。