実は各地に存在

生の魚介類は保存性が低く、冷蔵技術が発達していなかった古い時代は、塩漬けにするくらいしか保存方法がありませんでした。そうして塩漬けにされた魚介類は、自らの内臓に含まれるタンパク質分解酵素によって魚介類自身が分解されていき、やがて旨味豊かなペースト状の食材となりました。

この様なものの液体部分を分離してつくる「魚醤」には、タイのナンプラーやベトナムのニョクマムなど世界中に有名な調味料が存在していますが、固体部分や混ざったペースト状の部分も、我が国ではややマイナーながら調味料として活用されてきた歴史を持っています。

大豆ではなく「魚で作った」味噌とは? 実は各地に存在する発酵魚介食材
(画像=魚醤(提供:PhotoAC)、『TSURINEWS』より 引用)

そのような「発酵魚介の味噌状ペースト」には、インドネシアのトラシ、マレーシアのブラチャン等があります。これらは発酵にあたりコウジカビを使用していないため味噌と呼ぶと語弊もあるのですが、「タンパク質を分解して作られた調味料」という点では魚の味噌みたいなものだといえるでしょう。

また我が国でも、秋田の男鹿地方や長崎の平戸地方には、ととのみそ同様魚とコウジカビを主体に仕込んだ味噌様の調味料が今も存在しています。重要な食材であるにも関わらず国内自給率のなかなか上がらない大豆に変わり、今後全国各地で「魚を使って作る味噌的なもの」が作られるようになっていくかもしれません。

文・脇本 哲朗/提供元・TSURINEWS

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